2019年08月08日

日韓貿易摩擦の影響-グローバル・バリューチェーンに掛かる再編圧力

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也

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■要旨

G20大阪サミットが閉幕した直後の7月1日、政府は韓国に関する輸出管理のカテゴリーを見直す方針を発表した。今回の見直しは、改正手続きの違いから7月と8月の2回に分かれている。

先に実施されたのは、省令改正による特定品目の韓国向け輸出の管理厳格化だ。政府は7月4日より、韓国向けに輸出される「ディスプレイ用樹脂材料(フッ化ポリイミド)」「エッチングガス(フッ化水素)」「感光材(レジスト)」の3品目に関して、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求める方針に切り替えている。

次に実施が予定されるのは、政令改正による輸出管理上のカテゴリーの見直しだ。これに併せて、従来「ホワイト国」と「非ホワイト国」の2つの名称で区分されてきた輸出管理上のカテゴリーも「グループA~D」の4つに細分化される。この措置で韓国は「グループB」へと移行され、8月28日から、木材や食料品を除く、ほぼすべての貨物や技術に対して案件ごとの個別審査が必要となる。審査に要する期間は最大で90日間。グローバル・バリューチェーン(以下、GVC)の後方にある最終仕向地まで審査が必要であり、長期間に及ぶ審査のあとに問題が見つかれば、最終的に輸出許可が下りないこともあり得る。煩雑な手続きでコストが嵩み、GVCに目詰まりが生じる事態となれば、輸出企業はGVCの再編に乗り出すことが予想される。

本稿では、名目(gross)の貿易額に加えて、付加価値で見た日韓の貿易関係を概観し、今回の措置がGVCに及ぼす影響について考察する 。

■目次

1――韓国に関する輸出管理の見直し
2――東アジアを中心に構成されたGVCの構図
3――日本と韓国の貿易構造
  1|貿易立国の類似点と相違点
  2|GVCへの参加状況
  3|日韓2国間の貿易取引
4――韓国への輸出管理見直しの影響
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総合政策研究部   准主任研究員

鈴木 智也 (すずき ともや)

研究・専門分野
経済産業政策、金融

経歴
  • 【職歴】
     2011年 日本生命保険相互会社入社
     2017年 日本経済研究センター派遣
     2018年 ニッセイ基礎研究所へ
     2021年より現職
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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