2019年07月31日

2019年4-6月期の実質GDP~前期比▲0.1%(年率▲0.2%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●4-6月期は年率▲0.2%を予測~3四半期ぶりのマイナス成長~

2019年4-6月期の実質GDPは、前期比▲0.1%(前期比年率▲0.2%)と3四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される1。民間消費(前期比0.3%)、設備投資(同1.0%)を中心に国内需要は堅調な動きとなったが、輸出の低迷が続く一方、輸入が大幅に増加したことから外需寄与度が前期比▲0.5%(年率▲1.8%)のマイナスとなり、成長率を大きく押し下げた。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.4%(うち民需0.3%、公需0.1%)、外需が▲0.5%と予測する。
 
名目GDPは前期比0.1%(前期比年率0.4%)と3四半期連続の増加となり、実質の伸びを上回るだろう。GDPデフレーターは前期比0.2%(1-3月期:同0.3%)、前年比0.4%(1-3月期:同0.1%)と予測する。
 
2019年1-3月期は内需が低迷する一方、輸入の減少によって外需寄与度が大幅プラスとなり、前期比年率2%台の高成長となったが、4-6月期は内需のプラスを外需のマイナスが打ち消すことによりほぼゼロ成長になったとみられる。1-3月期と4-6月期では成長率、成長の中身ともに大きく変化したが、均してみれば国内需要が設備投資を中心に一定の底堅さを維持する一方、海外経済の減速を背景に輸出は低迷が続いている。

2019年7-9月期は前回の消費増税時に比べると規模は小さいものの、税率引き上げ前の駆け込み需要が発生することから明確なプラス成長となることが予想される。
 
1 7/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
 

主な需要項目の動向

●主な需要項目の動向

・民間消費~2四半期ぶりの増加~
 
民間消費は前期比0.3%と2四半期ぶりの増加を予測する。

雇用所得環境が改善を続ける中、GW10連休の影響で旅行などのサービス消費が好調だったこと、耐久財の一部で消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生したことが消費を押し上げた。ただし、食料品の相次ぐ値上げなどによる消費者マインドの悪化が重石となり、GW明け後の消費は勢いを失っている。
消費関連指標の推移 4-6月期の消費関連指標を確認すると、「鉱工業指数」の消費財出荷指数は前期比▲0.1%(1-3月期:同1.6%)と小幅ながら低下したが、「商業動態統計」の実質小売業販売額指数(小売業販売額指数を消費者物価指数(財)で実質化)は前期比0.4%(1-3月期:同▲1.5%)と2四半期ぶりに上昇した。業界統計をみると、外食産業売上高が前期比0.5%(1-3月期:同0.8%)と堅調を維持し、百貨店売上高が前期比0.4%(1-3月期:同▲0.8%)と2四半期ぶりの増加となった。

2019年4-6月期の民間消費は2四半期ぶりに増加したが、2017年4-6月期から2年以上にわたって前期比でプラスとマイナスを繰り返しており、均してみれば緩やかな持ち直しにとどまっている。

なお、現時点では7-9月期の民間消費は前期比1%程度の高い伸びになると予想している。消費増税前の駆け込み需要は前回(2014年度)に比べれば小さくなる公算が大きいが、税率引き上げ直前には日用品を中心に駆け込み需要が発生し、消費の基調が見極めにくくなるだろう。
・住宅投資~駆け込み需要はほぼ出尽くし~
 
住宅投資は前期比0.7%と4四半期連続の増加を予測する。

新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2019年1-3月期以降の94.2万戸から4-6月期には91.8万戸へと減少したが、GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上されるため、1-3月期までの堅調な着工戸数の動きが反映された。
新設住宅着工戸数の推移 利用関係別には、持家は堅調に推移しているが、相続税対策需要の一巡から貸家は弱い動きが続いており、分譲住宅は2019年度入り後に落ち込んだ。

住宅は2019年3月末までに契約すれば、引き渡しが10月以降でも現行の8%の消費税率が適用される。このため、2018年度末にかけて一定程度の駆け込み需要が発生したが、2019年4月以降の着工戸数は弱い動きとなっている。増税前の駆け込み需要はほぼ出尽くした可能性が高く、その規模は限定的にとどまった模様だ。
・民間設備投資~高水準の企業収益を背景に好調を維持~
 
民間設備投資は前期比1.0%と3四半期連続の増加を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2019年1-3月期の前期比▲5.7%の後、4-6月期は同1.8%の増加となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2019年1-3月期に前期比▲3.2%と2四半期連続で減少した後、2019年4、5月の平均は1-3月期を4.2%上回っている。

日銀短観2019年6月調査では、2019年度の設備投資計画が前年度比6.3%増となったが、同時期(6月調査)の2017、2018年度の伸びは下回った。輸出の減少や企業収益の悪化を受けて、製造業では2018年12月調査以降、設備投資計画の先送りが続いているが、上方修正が続いていた非製造業も2019年6月調査では2018年度の修正率(実績見込→実績)が▲5.1%の大幅マイナスとなった。

高水準の企業収益を背景に設備投資は好調を維持しているが、その勢いには陰りがみられる。人手不足対応の省力化投資など景気循環に左右されにくい需要は引き続き旺盛であるため、設備投資が大崩れする可能性は低いとみられるが、企業収益が悪化している製造業を中心に設備投資の牽引力が徐々に低下することは避けられないだろう。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
・公的固定資本形成~2018年度補正予算の執行で2四半期連続の増加~
 
公的固定資本形成は、2018年度第1次補正予算(2018/11/7成立)、第2次補正予算(2019/2/7成立)の効果が顕在化したことから、前期比1.4%と2四半期連続の増加を予測する。
公共工事請負金額、出来高の推移 公共工事の先行指標である公共工事請負金額は、2018年10-12月期に前年比3.6%と増加に転じた後、2019年1-3月期が同5.9%、4-6月期が同4.2%と3四半期連続で増加した。また、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2018年5月から前年比で減少を続けてきたが、2019年4月に前年比0.1%と1年ぶりに増加に転じた後、5月は同2.1%と伸びを高めた。

政府は、2018年度第1次補正予算に続き、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき、2018年度の第2次補正予算で公共事業関係費を大幅に積み増したほか、2019年度の当初予算でも公共事業関係費を2018年度当初予算比で9,310億円増(うち、臨時・特別の措置が8,503億円)、前年比15.6%の大幅増加とした。公的固定資本形成は先行きも増加が続く可能性が高いだろう。
・外需~輸出の低迷、輸入の大幅増から成長率を大きく押し下げ~
 
外需寄与度は前期比▲0.5%(前期比年率▲1.8%)と2四半期ぶりにマイナスになると予測する。海外経済の減速や世界的なIT需要の落ち込みを背景に、財貨・サービスの輸出が前期比0.6%の低い伸びにとどまる一方、前期の大幅な落ち込みの反動や国内需要の底堅さを反映し、財貨・サービスの輸入が前期比3.2%と輸出の伸びを大きく上回ったため、外需が成長率を大きく押し下げた。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲0.1%(1-3月期:同2.7%)、EU向けが前期比▲5.5%(1-3月期:同▲2.1%)、アジア向けが前期比0.8%(1-3月期:同▲4.2%)、全体では前期比▲1.0%(1-3月期:同▲2.5%)となった。

米国向けは3四半期ぶりのマイナスとなったが、2018年度後半の大幅増加の後としては堅調を維持している。一方、EU向けは製造業を中心とした景気減速を受けて減少ペースが加速し、アジア向けは6四半期ぶりのプラスとなったものの、1-3月期の大幅な落ち込みの後としては戻りが弱い。中国経済は減速が続いており、アジア向けの輸出が底打ちしたとの判断は尚早だろう。

 
日本・月次GDP予測結果
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年07月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

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