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インターネット通販市場の成長と物流施設利用の方向性
金融研究部 主任研究員 吉田 資
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1――はじめに
そこで、本稿では、インターネット通販市場の成長が物流施設利用に与える影響について考察する。まず、インターネット通販市場の成長可能性、等について概観する。そして、通販市場の状況を踏まえて、物流施設利用の方向性について考えたい。
1 チケット販売、金融サービス、旅行サービス、等。
2 電子書籍、有料音楽・動画配信、オンラインゲーム、等。
3 すべての商取引額(商取引市場規模)に対する電子商取引額の割合。
2――インターネット通販市場の成長可能性
総務省「平成30年 家計消費状況調査」によれば、2018年のネットショッピングの利用率は39%となり、「家計消費状況調査」が開始した2002年(5%)の約8倍まで拡大した。年代別にみたネットショッピングの利用率は、「39歳以下」の年代(62%)が最も高く、年齢が上がるにつれて低下する傾向にある(図表5)。
一方、ネットショッピング支出額は、「50~59歳」の年代(年間41万円)が最も多く、次いで「60~69歳」(年間39万円)、の世代が多い。最も支出額が少ないのは、「39歳以下」の年代(年間(年間34万円)である。(図表6)。ネットショッピングを利用している層に限定してみると、ミドル・シニア層(40代以上)の方が、若年層と比べてネットショッピングの支出額が多い傾向にある。
前述の通り、若い年代ほど、ITリテラシーが高く、ネットショッピングを利用する人は多い。例えば、現時点で「50~59歳」の世帯のネットショッピングの利用率よりも、10年後の「50~59歳」(現在の「40~49歳」)のネットショッピングの利用率は高いことから、ネットショッピングの利用率は今後、ますます上昇すると見込まれる。
また、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、総世帯数は2023年まで増加し続け(図表8)、世帯構成は、中高年層の割合が高まる見通しである(図表9)。今後、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層は現時点より拡大すると見込まれる。
以上の状況を踏まえると、ネットショッピングの利用率の上昇と、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層の拡大に支えられ、インターネット通販市場の成長は継続すると思われる。
これまで、アマゾンとアスクルは直販型、ヤフーと楽天はモール型の代表格とされてきた。しかし、最近では、アマゾンの売上高に占めるモール型(「Amazonマーケットプレイス5」)の割合が増加している。モール型の割合を増加することで、商品の品揃えを増やし、利用者の利便性向上を目指していると考えられる。一方、モール型の代表格であるヤフーや楽天では、直販を強化している。即時配送が求められる中で、配送を柔軟にコントロールしやすい直販の利点を重視しはじめたと推察される。このように、大手インターネット通販事業者は、「モール型」と「直販型」を融合したビジネスモデルに向かっている。
大手3社とも通販市場拡大に伴う需要増大に伴い、宅配便ネットワーク体制の整備を進めてきた。ヤマト運輸は、集荷した荷物を夜間にまとめて幹線輸送していたが、東名阪にゲートウェイターミナルを設置し、日中からゲートウェイ間を多頻度運行することで納品時間を短縮した。佐川急便は、ローソンと合弁会社「SGローソン」を2015年に設立し、ローソン店舗を起点とした配送および御用聞きサービスを開始している。日本郵便は、総額1800億円を投じ、全国20カ所に大規模物流拠点「メガ物流局」を新設する。
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト調査」によれば、物流サービスが極めて重要な通販企業の売上高物流コスト比率は12%程度と、全業種平均(約5%)に比べて高い水準にある(図表15)。ラストワンマイルを担う宅配便の配送料値上げは、通販企業の業績を悪化させることになる。
また、消費者がインターネット通販を利用する理由として、実店舗で購入するよりも安いという理由は上位に挙がる。配送料の値上げは消費者の負担増につながり、市場拡大の阻害要因として働くと考えられる。
4 林克彦・根本敏則『ネット通販と宅配便における物流革新』国際交通安全学会誌VoL41No.1、平成28年6月
5 各企業がネットショップを出店するのではなく、商品を出品するビジネスモデルのモール型EC。商品のデータ管理はアマゾンを行っている。
6 一台の車両に複数の荷主の貨物を積合せて輸送すること。
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