2019年07月22日

欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-

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(3) Aegon  
Aegon は、データの品質に関して、「ソルベンシーII報告プロセスのために、必要なデータディレクトリと、それぞれのデータの完全性、正確性、妥当性に関する基準の説明を含む、グループ全体のデータ品質ポリシーを実施している。」と述べている。
 

データ品質
Aegonは、ソルベンシーII報告プロセスのために、必要なデータディレクトリと、それぞれのデータの完全性、正確性、妥当性に関する基準の説明を含む、グループ全体のデータ品質ポリシーを実施している。内部モデルで使用されるデータは、以下のように、内部及び外部の情報源に由来している。

・個々の保険契約の特性及び補償範囲を詳述した契約データ
・資産のポートフォリオを指定するデータ。例えば、資産の種類、金額及び満期日
・国民死亡率表や取引されている有価証券の価格などの外部情報源からのデータ

内部モデル設計は、モデル設計と実行の段階で、利用可能な全てのデータを最適に活用することを目的としている。データ使用の適切性の評価は、モデル検証プロセスの一部を構成する。

|内部モデルの方法論・アプローチ
内部モデルで使用された方法論・アプローチについても、各社とも説明を行っているが、ここでは、Allianz、Prudential及びAvivaの説明を報告する。
(1)Allianz
Allianzは、6社のうち、「E.4.標準式と使用された内部モデルの差異」に6ページと最もページ数を費やしている。そのうちの内部モデルのアプローチに関する記述は、以下の通りとなっている。

(1-1) 内部モデルの範囲と使用法及び基礎となる方法論
Allianzの場合、まずは、「E.4.1内部モデルの範囲と使用法」を説明した後、「E.4.2内部モデルの基礎となる方法論」において、「内部リスクモデルは、モンテカルロ・シミュレーションを用いたバリューアットリスク(VaR)アプローチに基づいている。」こと、さらに「99.5%の信頼水準」でリスク資本が計算される、ことを説明している。

最後に、内部モデルと標準式によるリスクカテゴリの構造の差異を図表で示している。

この図表からわかるように、リスクカテゴリ自体も必ずしも標準式に準じているわけではない。

Allianzの内部モデルでは、市場、信用、生命保険引受、損害保険保険料及び準備金、ビジネス、オペレーショナルの6つのリスクカテゴリに分類している。

なお、2017年との比較では、2018年のSFCRにおいては、技術的準備金の評価における動的ボラティリティ調整の適用に関する説明(下線部分)が追加されている。

E.4標準式と使用された内部モデルの差異
このセクションでは、内部モデルの範囲と使用法、その基礎となる方法論と集計手順を説明し、内部モデルと標準式の差異の概要を説明する。

E.4.1内部モデルの範囲と使用法
内部モデルとその説明の対象となるビジネスユニットについては、付録のQRT S.32.01.22を参照のこと。内部モデルによってカバーされるリスクカテゴリは、「C.リスクプロファイル」の章で提示され、説明されている。内部モデルの範囲はまた「B.3.4.2 定量化可能なリスクに対する内部リスク資本モデル」のセクションで説明されている。

内部モデルは、我々のリスク管理フレームワークの中心にある。それは、Allianz グループの定量化可能なリスクを測定し、資本管理、特に、グループの配当政策、のような領域において我々の事業を操舵し、全ての事業活動に対するリスク資本上のリターンを測定するために使用される。

E.4.2内部モデルの基礎となる方法論
当社の内部モデルは、モンテカルロ・シミュレーションを用いたバリューアットリスク(VaR)アプローチに基づいている。リスク計算は、市場価値のバランスシートから始まり、各資産と負債のポジションを関連するリスク要因及び関連するリスクカテゴリに帰属させる。例えば、債券の価格は、(とりわけ)それぞれのリスクフリーの金利曲線と信用スプレッド曲線に起因している。その結果、それは、金利、信用スプレッド又は通貨リスクならびに信用リスクカテゴリのようなそれぞれの市場リスクカテゴリでカバーされる。

リスク資本は、各リスク要素の基礎となる共同配賦前提に基づいて、予想される期間にわたる資産及び負債の経済的正味公正価値の変動として定義される。より具体的には、当社は、特定の期間(「保有期間」、1年)及び発生確率(「信頼水準」、99.5%)内でのモデルの範囲における当社の事業ポートフォリオ価値の最大損失を決定する。リスク資本は、全ての資産と負債が、全てのリスク要素のシミュレートされた実現に基づいた各シナリオにおいて再評価される場合のシミュレートされた損益分布から計算される。

可能であれば、分布が、市場データ又は当社独自の内部的な過去データに対して、例えば保険数理上の前提を設定する上で較正される。加えて、保険業界、監督当局、アクチュアリー会からの提言を検討する。

内部モデルには、リスクタイプに細分化できる一連のリスクカテゴリが含まれる。これらの2つのレベルのそれぞれについて、内部モデルは、単独ベースで、即ち他のリスクタイプ又はカテゴリへの分散化の前に、リスク数値を提供するが、分散化も考慮に入れて集計レベルで提供する(「E.4.3集計及び資本追加」と呼ばれる)。それぞれのリスクカテゴリの詳細な説明は、「C.リスクプロファイル」の章にある。

技術的準備金の評価については、リスクフリー金利曲線の上にボラティリティ調整が適用される(「D.2.2.5評価に使用される方法及び前提」の項を参照)。ボラティリティ調整(VA)はクレジットスプレッドから派生しているため、クレジットスプレッドのシミュレートされた変化は、概念的には、リスク計算の各基礎シナリオにおけるボラティリティ調整の変化も意味している。その結果、これらの変化は、リスク資本にそれらを反映させるために、それぞれの基礎となるシナリオにおける技術的準備金の評価について予想され、考慮される可能性がある。したがって、内部モデルにはこの影響をカバーするための動的コンポーネントが含まれている。動的コンポーネントをモデル化するためのAllianzのアプローチは、EIOPA VA方法論の複製とは方法論的に異なる。リスク資本の計算において、当社は自社のポートフォリオの信用スプレッドの変動に基づくボラティリティ調整の動的な変動の影響を反映している。この資産サイドの影響は、資産及び負債のデュレーションを使用して負債サイドに移転される。EIOPA VA方法論に関する偏差を説明するために、Allianzは動的ボラティリティ調整のためのスケーリング係数を適用する。アプローチの適切性と保守性を検証するために定期的な検証が行われる。

Allianzは定例及びアドホックベースで引受けリスク及び(パラメトリックストレスとして知られる)市場リスクに対していくつかのストレステストを行っている。パラメトリックストレスは、単一又は複数のリスク要素とカテゴリに関する標準化されたショックである。これらのパラメトリックショックは我々の自己資本と我々のリスク資本の両方に影響がある。感応度の例は、以下の通りである。

株式感応度:これらのストレステストはそれぞれの市場指標に対するショックに関してのAllianzのエクスポージャーの感応度を測定する。(上場も非上場の指標も)全ての株式の価格も、不動産指標を考慮することなく、それぞれ+30%又は-30%変化する。

金利感応度:これらのストレステストは、金利が上下にパラレルなベーシスポイントのショックを与えた時のAllianzのポジションへの影響を測定する。考慮されるショックの規模はIR+/-100bpsとIR+/-50bpsである。このセクションで記述される金利ショックはまた一定の終局フォワードレートにアンカーリングする効果を考慮している。

結合感応度:これらの感応度は、複数の市場要素に対するショックを適用する影響を結合している。例えば、金利が-50bpsと株式-30%のショックを与える場合の金利と株式市場要素に関する結合ショック。

引受けリスクに関するショックは、10年に1回の非市場リスク事象を特定化し、それらのAllianzグループへの対応する影響を算出することでシミュレートされる。

以下の2つの図は、内部モデルに含まれるリスクカテゴリと、比較のために、標準式の構造を示している。

内部モデルに含まれるリスクカテゴリと標準式の構造

(1-2)集計及び資本追加
リスクの集計については、ガウス型コピュラに基づく業界標準のアプローチを使用している。相関行列は、コピュラによってモデル化されたリスク間の相互依存性を定義する。可能であれば、10年超にわたる四半期観測を考慮して、過去の市場データを用いて、市場リスクの各ペアについて相関パラメータを導出する。

「内部モデル資本バッファー」と呼ばれる他の効果が様々な理由により考慮される。

内部モデルの範囲に含まれない会社については、保険会社の場合、標準モデルに基づいている。米国子会社等は、第三国同等性原則に基づいて、それぞれの現地資本要件に基づいている。非保険会社は、銀行や資産運用会社などのそれぞれのセクターの資本要件で含まれる。

E.4.3集計及び資本追加

リスクを集計するために、ガウス型コピュラに基づく業界標準アプローチを使用する。相関行列は、コピュラによってモデル化されたリスク間の相互依存性を定義する。可能であれば、10年超にわたる四半期観測を考慮して、過去の市場データを用いて、市場リスクの各ペアについて相関パラメータを導出する。過去の市場データ又はその他のポートフォリオ固有の観察が不十分または利用できない場合、相関は明確なグループ全体のプロセスに従って設定される。これは、リスクとビジネスの専門家の専門知識を組み合わせた専用の社内委員会である「相関設定委員会」によって行われる。相関は一般に、相関が参照する要因の全分布間の依存関係を反映するように設定される。全分布間の依存関係を記述する相関関係は、テールにおける特に強い依存関係(即ち、極端な事象)が想定される場合には、係数によって増加する。十分な品質のデータが利用可能である場合は常に、経験的証拠を使用して専門家の判断を支援する。

「C.リスクプロファイル」の章の分散化セクションで記述されているように、分散化は、異なるリスクはお互いに完全には従属しておらず、必ずしも全てのリスクが同時に実現するわけではないという事実によってもたらされる。これは、内部モデルの相関によって反映される。標準モデルがリスクカテゴリの内部や間を考慮しているのに対して、内部モデルはモデル化された全てのリスクドライバのペアの間の相関を考慮している。それゆえ、内部モデルの分散化効果は標準モデルよりも大きい。追加的な詳細は、以下のセクションで提供される。グループの分散化効果に関するさらなる情報については、「C.リスクプロファイル」を参照のこと。

分散リスク資本を決定するために、前のセクションで説明した方法論を適用して、リスクの同時発生に基づいて200年間のイベントの経済価値の変化が計算される。「内部モデル資本バッファー」と呼ばれる他の効果が、ポートフォリオの質の複製によるリスク資本の潜在的な過小評価、クロス効果を含むバッファーの重要な複数回使用、またはリングフェンスファンドによる分散の喪失などのような、様々な理由で考慮される。ローカルの事業体レベルで、又は特定のモデル構成要素の特定の欠陥に対して、追加のアドオンが適用されることがある。

さらなる資本要件が、内部モデルの範囲に含まれない会社について考慮される。保険会社の場合、これらの要件は標準モデルに基づいている。第三国同等性原則の下で考慮されている会社(主にAllianz Life US)については、それぞれの現地資本要件に基づいている。非保険会社は、銀行や資産運用会社などのそれぞれのセクターの資本要件で含まれる。内部モデルを適用しないこれらの追加的な資本要件は、ファクターベースアプローチに基づいて、グループのソルベンシーII資本要件に集計される。ファクターベースアプローチはグループに対する分散化効果が適切に考慮されることを確実にする。

Allianzグループは、グループとローカルのSCR算出の両方において、唯1つの内部モデルを適用している。ローカルのモデル構成要素が使用できる。しかしながら、ローカルのモデル構成要素とそれらの較正の責任はローカル会社にあり、構成要素はグループのレビューと確認の対象となる。

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中村 亮一

研究・専門分野

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【欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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