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2018年度生命保険会社決算の概要-外貨建資産、外貨建保険が引き続き増加

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1――保険業績(全社)
「伝統的生保」(以下、大手中堅9社数値で表示)の新契約高は、15.9%増加(前年度▲38.5%減少)となった。全般的には、金融機関窓販による外貨建保険や、個人定期保険の新契約が増加したことによる。
保有契約高は▲3.8%と引き続き減少した(前年度▲4.2%減少)。詳細については省くが、保険料ベースの保有契約高は逆に増加しており、第三分野商品の保有増加による効果と考えられる。
「外資系生保」は、新契約高が10.8%増加(前年度▲12.5%減少)し、保有契約高は3.9%と(前年度 2.5%増加)引き続き増加した。
「損保系生保」は、新契約が31.0%増加(前年度 ▲9.6%減少)で、保有契約は4.1%増加(前年度 2.9%増加)となった。「異業種系生保等」は新契約が22.7%増加(前年度 ▲2.4%減少)、保有契約は5.9%増加(前年度 4.7%増加)となった。
基礎利益は、全体では5.2%と引き続き増加(前年度6.6%増加)した。しかし41社中基礎利益が増加したのは19社にとどまる。
次に、新契約年換算保険料の状況を見たものが図表-2である。
40社(かんぽ生命を除く。)合計で、個人保険は対前年15.3%増加した(前年度▲3.0%減少)。
また個人年金は、18.4%増加(前年度▲51.3%減少)となった。さきの2017年度は低金利下で貯蓄型の保険の販売を停止する会社があったり、保険料の値上げにより貯蓄効果の魅力がなくなったりしたことで大幅な減少であったが、2018年度は主に外貨建年金の金融機関窓販により増加に転じたものと考えられる。また、死亡保障・解約返戻金を小さくして、その分年金額を確保する長寿年金(トンチン年金との表示もある)が好調な会社も見られる。
第三分野は引き続き進展しており、かんぽ以外12.7%の増加(前年度3.0%増加)、かんぽ生命も4.1%増加(前年度6.3%増加)となった。
1 うち、はなさく生命は、2019年7月より販売を開始したところなので、2018年度決算時点の業績はない。
2 当レポート全体を通じて、記載数値等は、各社公表資料(過年度修正も含め)をもとに、筆者が作成したものである。
国内金利は、引き続きゼロに近いところで推移し、2018年度末には、-0.095%と、マイナスとなった。
為替については、対米ドルでは、一時期円安方向で推移し、その後上下動があって結局3月末には110.99円となった。対ユーロでは政治リスクとの関連で時期によって上下したが、年度末には124.56円と、やや円高の方向に進んだ。
また、外貨建保険で比較的よく使われる豪ドルについてはやや円高の方向に進んでいる。
こうした状況を反映して、図表-4に示した通り、国内大手中堅9社で見ると、国内債券の含み益が1.4兆円増加し、外国証券含み益も債券を中心に1.4兆円増加したものの、国内株式の含み益が▲1.5兆円減少し、有価証券合計では1.3兆円増加した。
一方、費差益については、▲17.4%と減少した(前年度は55.2%増加)。費差益とは、簡単に言えば、収入保険料のうち事業費を賄うための付加保険料と、実際の事業費支出の差である。金額の大きさで見ると、近年は危険差に比べて小さくなってしまったものの、それだけに年度により大きく増減する傾向が見られる。大手9社の事業費支出そのものはほぼ2017年度から横ばいで、増減は会社によっても異なる。費差益は他の利源に比べて規模が小さいので、付加保険料収入のわずかな変動で大きく動くこともあろうが、今のところ、公開されたデータから詳細な分析は困難である。
(2019年07月18日「基礎研レポート」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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