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- 平成の労働市場を振り返る-働き方はどのように変わったのか-
2019年06月07日
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1―就業者増の主役は女性、高齢者
2―雇用の非正規化による労働市場への影響
ただし、就業形態別にみると、正社員を中心とする一般労働者の総労働時間は2000時間前後でほとんど変わっていない。一人当たりの労働時間が減少を続けているのは、労働者全体に占めるパートタイム労働者などの短時間労働者の割合が高まっていることに加え、パートタイム労働者の労働時間が減少しているためである。
3|非正規化による賃金への影響
相対的に賃金水準の低い非正規雇用の割合が高まることは、労働者一人当たりの平均賃金を押し下げる要因となる。「労働力調査(詳細集計)」の雇用形態別、年収階級別の雇用者数を基に雇用形態別の平均年収(2018年)を試算すると、正社員の472万円に対して、嘱託296万円、契約社員267万円、派遣社員200万円、パート・アルバイト120万円となった[図表7]。
3|非正規化による賃金への影響
相対的に賃金水準の低い非正規雇用の割合が高まることは、労働者一人当たりの平均賃金を押し下げる要因となる。「労働力調査(詳細集計)」の雇用形態別、年収階級別の雇用者数を基に雇用形態別の平均年収(2018年)を試算すると、正社員の472万円に対して、嘱託296万円、契約社員267万円、派遣社員200万円、パート・アルバイト120万円となった[図表7]。
3―潜在的な労働力の活用が重要
平成30年間の就業者数増加の主役は女性、高齢者、非正規雇用であったが、このような傾向は今後も続く可能性が高い。
生産年齢人口が1995年をピークに減少を続ける中でも、就業者数が増加したのは、就業を希望しているが様々な理由で求職活動を行わないために非労働力化していた者(以下、潜在労働力人口)の多くが労働市場に参入するようになったためである。
先行きについても、潜在的な労働力の掘り起こしによって人手不足のさらなる深刻化を回避することは可能だ。2018年の潜在労働力人口(331万人)は完全失業者(166万人)の2倍の水準となっている。男女別には、男性の93万人に対して、女性が237万人と女性が男性の2倍以上、年齢階級別には、女性は25~44歳が、男性は高齢層の潜在労働力人口が多い。
潜在労働力の希望している仕事を雇用形態別にみると、男女ともに非正規が正規を大きく上回っている。今後新たに労働市場に参入する者の多くが非正規となることが想定される。日本では、非正規労働者と正規労働者の待遇格差の大きさが指摘されることが多いが、同一労働同一賃金を徹底することの重要性はより高いものとなるだろう。
また、非正規労働者は相対的に労働時間が短い傾向があることに加え、政府が推進する働き方改革の影響もあり、労働時間の減少ペースは今後加速することが見込まれる。こうした中で日本経済全体の付加価値を高めるためには、一人当たりの生産性を向上させることがこれまで以上に重要となることは言うまでもない。
*雇用者=就業者ー(自営業主+家族従業者)
生産年齢人口が1995年をピークに減少を続ける中でも、就業者数が増加したのは、就業を希望しているが様々な理由で求職活動を行わないために非労働力化していた者(以下、潜在労働力人口)の多くが労働市場に参入するようになったためである。
先行きについても、潜在的な労働力の掘り起こしによって人手不足のさらなる深刻化を回避することは可能だ。2018年の潜在労働力人口(331万人)は完全失業者(166万人)の2倍の水準となっている。男女別には、男性の93万人に対して、女性が237万人と女性が男性の2倍以上、年齢階級別には、女性は25~44歳が、男性は高齢層の潜在労働力人口が多い。
潜在労働力の希望している仕事を雇用形態別にみると、男女ともに非正規が正規を大きく上回っている。今後新たに労働市場に参入する者の多くが非正規となることが想定される。日本では、非正規労働者と正規労働者の待遇格差の大きさが指摘されることが多いが、同一労働同一賃金を徹底することの重要性はより高いものとなるだろう。
また、非正規労働者は相対的に労働時間が短い傾向があることに加え、政府が推進する働き方改革の影響もあり、労働時間の減少ペースは今後加速することが見込まれる。こうした中で日本経済全体の付加価値を高めるためには、一人当たりの生産性を向上させることがこれまで以上に重要となることは言うまでもない。
*雇用者=就業者ー(自営業主+家族従業者)
(2019年06月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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