- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- ブラジルの1-3月期GDPは前期比0.2%減~内需の減速が明確に~
四半期GDPの概況
政府消費は、同0.4%増と前期(同0.3%減)からプラスに転じた。
総固定資本形成は、同1.7%減と前期(同2.4%減)に続いて2四半期連続のマイナス成長となった。
外需は、輸入の伸びが同0.5%増と、内需の低迷を反映し、前期(同6.1%減)に続いて鈍かった。一方で輸出の伸びが同1.9%減と前期(同3.7%増)からマイナスに転じた結果、純輸出の成長率寄与度は▲0.4%ポイントと前期(+1.4%ポイント)から大きく成長率を押し下げた。通関ベースでは、2018年の輸出総額を大きく押上げていた中国向けの大豆や鉄鉱石の輸出が、1-3月にはアフリカ豚コレラ発生に伴う大豆の需要減やヴァ-レ社の鉄鉱石減産の影響によって落ち込んだ。
供給項目別に見ると、GDPの約6割を占める第三次産業は辛うじて前期比プラス成長となったが、第一次産業と第二次産業はマイナス成長となった。特に、第二次産業は鉄鉱石世界最大手のヴァ-レ社が、1月の鉱山ダム事故によって一部操業停止に追い込まれ、鉄鉱石生産が落ち込んだことが影響した。
先行きのポイント
また、足元でも為替(対米ドル)は5月に一時4.0レアルを割り込むなどレアル安に歯止めがかかっておらず、4月のインフレ率は4.9%まで上昇した。外需についても、輸出が2月から4月まで前年比マイナスが続くなど、改善の兆しは見られない。これらの状況を受けて政府やブラジル中央銀行は、2019年度の成長率見通しを下方修正している。先行きの見通しが明るくない中で、財政出動や金融緩和が期待されるが、政府の財政状況が悪く、レアル安によるインフレ率も進行しているため、年金制度改革が実現しない限り、いずれの政策も実行は難しいだろう。
年金制度改革については、政府は2月中旬に下院へ提出した年金改革法案によって、今後10年間で約1兆レアル(約30兆円)超の財政改善効果を見込んでいるが1、法案通りの改革を実現するのは議会運営上難しいだろう。年金改革には憲法の改正が必要で、下院・上院それぞれ2回ずつの審議において60%以上の賛成が必要となる。上院(81議席)、下院(513議席)それぞれで49、308の賛成が必要とされる中で、与党PSL(社会自由党)の議席はそれぞれ4議席、54議席に過ぎない。少数政党が乱立するブラジルでは、歴代政権が議会工作2によって議会運営を行ってきたが、既存政治を否定するボルソナロ大統領は十分な議会工作を行ってこなかったため、法案成立に必要な賛成票確保の目処は未だ立っていない。今後、政府は法案の修正によって「条件付協力政党」を取り込むことが予想され、2019年中の法案成立が見込まれる。焦点となるのは、法案が成立するか否かではなく、修正した上でどれだけ財政改善効果を残せるかである。
年金法案が成立した場合、レアルが持ち直すと予想されるため、利下げの可能性が高まるだろう。また、インフレ率も落ち着くと予想されるため、民間消費にはプラスに働くであろう。一方で、消費者にとっては年金受給額の減少は可処分所得の減少となるため、民間消費に悪影響を与える可能性も否定できない。仮に、年金法案が成立したとしてもただちに景気を押上げるとは考えづらく、2019年は低成長が続くだろう。
1 4月には、2月に提出した法案より踏み込んだ内容に修正し、見込まれる財政改善効果は拡大している。
2 閣僚ポストを与える代わりに、協力を求めること。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
このレポートの関連カテゴリ
神戸 雄堂
研究・専門分野
(2019年05月31日「経済・金融フラッシュ」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月29日
人的資本経営の実践に資するオフィス戦略の在り方-メインオフィスは人的資本経営実践のためのプラットフォームに -
2024年03月29日
晩年に関する不安~老後とその先の不安には「近居」が“程よい距離感” -
2024年03月29日
急速に導入が進むインドの再生可能エネルギー~2030年の国際公約達成を狙える位置に -
2024年03月29日
身体活動基準2023~座位行動時間、筋トレに関する指針が追加 -
2024年03月29日
鉱工業生産24年2月-不正問題の影響で自動車生産が一段と落ち込む
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【ブラジルの1-3月期GDPは前期比0.2%減~内需の減速が明確に~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
ブラジルの1-3月期GDPは前期比0.2%減~内需の減速が明確に~のレポート Topへ