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- アリババが医療保障を変える?-次なる「相互宝」の投入
2019年05月20日
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■要旨
■目次
1-爆増する「相互宝」(シャン・フ・バオ)、加入者は半年で6,000万人に
2-高齢者向けがん保障の投入、1日半で50万人が加入
3-保障コストは、給付の多寡に応じて後払いで、年齢・性別にかかわらず等しく負担
4-「相互宝」にはあって、民間保険商品にはないもの
- 2018年10月、中国の阿里巴巴(アリババ)グループの会員向けに開発された重大疾病保障が話題となった。オンラインで加入受付を開始後、わずか1ヶ月で加入者が2,000万人を超えたというモンスター級の医療保障―「相互宝」(シャン・フ・バオ)である。加入者数はその後更に増加し、2019年5月8日時点で5,784万人に達した。1ヶ月でほぼ1,000万人が加入していることになる。
- 「相互宝」の特徴は、加入時に保険料に相当する保障コストがかからず、将来時点で発生する給付の多寡に応じて後払いをする点にある。その保障コストは会員で均等に負担し、一般的な民間保険商品と比べても破格の安さとなっている。なお、相互宝は通常の民間保険商品(相互保険を含む)には分類されない。
- このような中で、5月8日、「相互宝」シリーズの次なる医療保障として、高齢者(60~69歳)のがん治療に特化した、「高齢者向けがん保障」が発表された。期間は1年間で、給付金は軽度のがんの場合は5万元、重度のがんの場合は10万元が給付される。先般の重大疾病保障は加入対象年齢が59歳までとなっており、60歳以上の高齢者を対象とする医療保障のリクエストが寄せられていたという。加入対象者は高齢者となるため限定されるが、受付開始後1日半で50万人に達した。
- アリババはこのように国民の関心が高く、困っている問題を掬いあげて、タイミング良く相互宝を投入している。加入急増には、低いコストでがんや重大疾病保障へのアクセスを可能にした点が大きいが、そもそもアリババ経済圏のユーザー数が7億人も控えており、アリペイを通じて、一瞬で大量のユーザーに直接アクセスできるというチャネル面での利点も奏功している。このような保障コストへの感覚、投入までのスピード感、モバイル決済を介したチャネル活用は、既存の多くの保険会社ではなかなか持ち得ないものといえよう。
■目次
1-爆増する「相互宝」(シャン・フ・バオ)、加入者は半年で6,000万人に
2-高齢者向けがん保障の投入、1日半で50万人が加入
3-保障コストは、給付の多寡に応じて後払いで、年齢・性別にかかわらず等しく負担
4-「相互宝」にはあって、民間保険商品にはないもの
(2019年05月20日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
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