2019年04月25日

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2018年決算数値等に基づく現状分析-

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4|Prudential
(1)地域別の業績-2018年の結果-
Prudential は、自国の英国を中心とした欧州での約20カ国に加えて、米国やアジアの14カ国及びアフリカの5カ国等、約40カ国で、生命保険の事業展開を行っている。

米国子会社のJackson National Groupは、2018年末の認容資産で、生命保険・健康保険グループで第10位(2017年末も第10位)となっている。

2017年は、収入保険料や営業利益において米国のウェイトが最も高かったが、2018年においては、アジアの営業利益が最も高く、収入保険料でもアジアの位置付けは、欧州及び米国に匹敵するものになってきている。さらに、将来の利益に基づくEEVや新契約価値ベースではアジアの位置付けがさらに高く、EEVでは49%、新契約利益では67%の構成比となっている。
生命保険事業(Long-Term Business Operation)の地域別内訳(2018年)
(2)地域別の業績-2017年との比較-
2017年との比較では、全体では増収増益であった。また、EEVや新契約利益も着実に増加した。

アジアにおいては、10カ国において、現地通貨ベースでの営業利益が二桁進展を達成する等、エージェンシーや銀行窓販を通じて、成長する中間所得層向けに保障・貯蓄性商品の販売が好調で、新契約利益、営業利益及び資本形成において、9年連続で二桁成長を遂げている。

欧州では、新しい生命表の採用等による長寿の前提条件の変更等による準備金のリリースの影響(+441百万ポンド)もあり、営業利益は32%と大幅に増加した。

米国では、手数料は増加したものの、買収費用の市場関連償却の増加とスプレッド収益の低下に加えて、DAC(繰延新契約費)調整(▲365百万ポンド)が2017年とは逆にマイナスに働いたこともあり、営業利益は14%減少した。
生命保険事業(Long-Term Business Operation)の地域別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)
IFRS営業利益で見た場合の各国別の営業利益の状況は、以下の図表の通りである。
IFRS営業利益の地域別内訳
ここ数年、香港、中国、台湾等の中国系市場で高い成長をみせており、シンガポールも高い構成比となっている。これら以外では、インドネシアは減収となったが、高い構成比であり、マレーシア、ベトナム等でも高成長を遂げている。
FRS営業利益の地域別内訳(アジアの主要国)(その1)
IFRS営業利益の地域別内訳(アジアの主要国)(その2)
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Prudentialは、保険事業に関して、例えば、これまでに以下の地域別展開の見直し等を行ってきている。

・2017年5月 韓国生命保険会社PCA Life Insuranceの売却
・2017年7月 ナイジェリアのZenith Lifeの過半数株式の取得
・2017年8月 米国のブローカー・ディーラーネットワークの売却
・2017年8月 M&GとPrudential UK & Europe (Prudential UK&E)を統合して、M&G
Prudentialを設立
・2018年3月 英国の年金ポートフォリオ120億ポンドのRothesay Lifeへの再保険(このポートフォリオの大部分は2019年6月30日までにPart Ⅶ移転される予定)
・カンボジア、ラオスでの事業開始
・2019年3月 カメルーン、コートジボワール、トーゴにおける主要な生命保険会社であるGroup Beneficialの過半数株式を取得(これにより、西アフリカでの事業を拡大し、この取引の完了により、約4億人のアフリカの市場で事業展開することになる)

なお、Prudentialは、過去10年間において、それまでの英国中心から国際展開中心へと急速にシフトさせてきており、EEV株主ファンドベースで、国際部門のシェアは2007年の49%から2018年の74%へと大幅に増加している。

Prudentialは、こうした戦略をさらに推進していくとしている。

また、Prudentialは、2018年4月に、Prudential plcから英国・欧州部門であるM&G Prudentialを分離して、2つの異なる投資特性を有する別々の上場会社にすることを公表している。これにより、Prudential plcは米国とアジアで事業展開する会社となる。また、2018年上期の報告において、M&G Prudentialが分離された後のPrudential plc10は、香港の保険監督当局が新しいグループ全体の監督者になることを明らかにした。M&G Prudentialのグループ全体の監督者は、引き続き英国の保険監督当局であるPRA(健全性規制機構)が務めることになる。この分離については、2019年末までに完了することが想定されている。
 
10 分離後のPrudential plcは、英国に本社を置き、ロンドン証券取引所でpremium listingされ、香港でprimary listingされ、ニューヨークとシンガポールに上場している会社となる。また、英国又は欧州の顧客を持たないため、ソルベンシーII制度の対象外となる。
5Aviva
(1)地域別の業績-2018年の結果-
Avivaは、世界の十数カ国で事業展開している。英国での生命及び貯蓄市場におけるシェアは17%、カナダの損害保険は10%のシェアで第2位となっている。

Avivaの保険料、営業利益及び資産の9割程度は欧州からのものである。それ以外は、主としてアジアが占めている。欧州では、英国(生保)が保険料では25%だが、営業利益では約6割を占めている。それ以外は英国(損保・医療)とフランスの構成比が高く、これらにポーランド、アイルランド、スペイン、イタリアの国々が有意な水準で続いている。なお、「その他」の営業利益が大きくマイナスなのは、Aviva Investorsが市場の不利な動きを受けた影響や再保険やグループのデジタルビジネスに関係する経費等を含んでいることによる。

Avivaは、英国、フランス、ポーランド、アイルランド、イタリア、カナダ、シンガポール、Aviva  Investorsを8つの主要市場(Major markets)として位置付けている。なお、英国以外では、カナダが全て損害保険であるが、それ以外の国では生命保険が中心となっている。2018年は8つの主要市場のうち6つで営業利益を増加させた。

また、Avivaは、中国、香港、インド、トルコ、ベトナム、インドネシアの6つを戦略的投資市場として、成長特性を持つ人口の多い国として、主要な現地パートナーと協力して、長期的な成長を目指していく方針を示しているが、アジアのこれらの地域の財務面でのシェアは未だ合計でも数%程度である。
保険事業の地域別内訳(2018年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2017年との比較-
2017年との比較では、各地域で保険料を順調に進展させており、営業利益(生保)も4%増加した。

Prudentialと同様に、長寿準備金のリリースの影響(+728百万ポンド)もあり、英国の営業利益(生保)が6%進展するとともに、フランスで3%、ポーランドで9%、イタリアで15%、アイルランドで30%超の営業利益の進展をした。さらに、シンガポールで、フィナンシャルアドバイザーチャネルを通じた成長で、営業利益は16%進展し、新契約価値も25%増加したこと等から、アジアの営業利益(生保)は28%増加した。
保険事業の地域別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2017年から2018年に向けての増加額と進展率)
(参考)地域別ROEの状況
Avivaは、地域別のROEを開示しているが、(損害保険のカナダを除く)各地域で10%を超える高いROEを計上し、全体でも13.3%で2017年の12.6%から増加させた。
保険事業のROE(資本収益率)の地域別状況
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Avivaは、保険事業に関して、ここ数年で事業展開を行う市場の集中化を図ってきており、市場の数を半減させてきている。会社によれば、2017年までの取組みでこのプロセスは完了しており、これ以上事業展開地域を積極的に削減する方針はない、としている。最近では、以下の地域別展開の見直し等を行っている。

・2017年 ベトナムでVietinBankとの合弁事業の100%所有権を取得
・2018年 Friends Provident International Limited(FPIL)のIFGへの売却(2017年7月公表)
・2018年1月 台湾における合弁事業First Aviva Lifeの売却
・2018年2月 スペインの残されていた生命保険事業及び年金ジョイントベンチャー
Cajamurcia Vida及びCaja Granada Vidaの株式のBankiaへの売却
・2018年3月 イタリアのジョイントベンチャーAvivpop Assicurazioni S.p.A.のBanco BPMへの売却
・2018年6月 アイルランドでAchmeaからFriends Firstを買収

なお、Avivaは、2018年から、主要市場では「mid-single digit(一桁台半ば)」を超える成長を、戦略的投資市場では「long-term growth(長期成長)」を支援し「High growth(高い成長)」を目指すとしていた。

(2019年04月25日「基礎研レポート」)

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