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ロシア経済の見通し-低成長が続くロシア経済。潜在成長率の上昇に向けた国家事業も、その効果は限定的か。

神戸 雄堂
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2019年度のロシア連邦政府の予算案は、歳入・歳出ともに2018年11月に承認された2018年度修正予算案を上回った(図表8)。連邦政府は2017・2018年度と緊縮財政を志向し、歳入が増加しても歳出の拡大には消極的であったが、2019年度の歳出は2018年度修正予算案の歳出を1割近く上回った。これは先述した国家事業に対する歳出によるものである。また、同事業の歳出は連邦政府だけではなく、地方政府の予算も財源としている。連邦政府及び地方政府の歳出拡大は、2019年の政府消費の伸びを加速させるだろう。
7 ロシアの会計年度は1月から12月までである。
2018年の総固定資本形成の伸び率は、2017年から鈍化した。総固定資本形成の内訳は明らかにされていないが、2017年に実施された政府主導の大規模なインフラ整備8の効果が剥落したことが一因と見られる。2019年は、先述の国家事業による公的固定資本形成の拡大が総固定資本形成を押上げるだろう。
一方で、2019年の民間部門の設備投資は、長期貸出金利が上昇するも、その影響は限定的で底堅く推移するだろう。鉱工業生産は、2018年初から前年比プラスが続いており、製造業PMIも2018年9月以降は景気判断目安の50を上回っている(図表9)。また、2018年は貸出金利の低下に伴い、個人・企業向けともに貸出残高ペースが加速したことから、企業の設備投資や家計の住宅投資は堅調に推移したと推測される。今後、貸出金利は上昇していくと予想されるが、足元の金利水準は歴史的な低水準であるため、企業の設備投資及び家計の住宅投資は底堅いだろう(図表10)。
8 2017年はケルチ海峡大橋や中国向けガスパイプライン「シベリアの力」の建設が行われた。
3――為替・物価・金融政策の動向
2018年のロシアの為替レートは、原油価格が2018年後半まで上昇基調であったものの、露米金利差の縮小と米国による追加制裁によって、年間を通してルーブル安が進行した9。しかし、2018年12月に米国による制裁の一部が解除された他、露米金利差が拡大、原油価格が上昇に転じたことで、足元では、ルーブル高に転じている(図表13)。
今後は、原油価格の更なる上昇によってルーブル高が進行するが、上値が重い展開が続くだろう。2019年3月には、欧米による追加制裁が発動されており、更なる追加制裁次第では再びルーブル安が進行することも考えられるだろう。
9 2018年4月及び8月に追加制裁が発表されると、ルーブルは大きく下落した。特に、4月の制裁には世界のアルミ生産量の1割弱を生産しているルサールが制裁対象となったことで、アルミ価格が急騰するなど国際的な影響が大きかったため、米国は制裁を発動せず、複数回にわたって猶予期間を延長してきた。2018年12月には、プーチン大統領に近いデリパスカ氏の影響力が低下したことを受けて、米国は制裁を解除した。

インフレ率は、2016年以降、欧米の経済制裁に対する輸入代替政策の結果、食品価格の上昇が落ち着いたことで、大きく鈍化した。2017年半ばにインフレ目標の4.0%を下回ると、2018年初には史上最低の2.2%まで低下した。その後、ルーブル安に伴う輸入物価の上昇によって、インフレ率は緩やかに上昇し、2018年12月には再びインフレ目標の4.0%を上回り、足元では付加価値税率の引上げによって5%台に達している。2019年はルーブルが堅調に推移すると予想されるため、5%台で推移し、付加価値税率引上げの影響が剥落する2020年には再び4.0%台に落ち着くと予想する。
政策金利は、2018年9月と12月の2回の引上げによって、7.25%から7.75%へ上昇したが、直近の2回の金融政策決定会合では据え置かれた。今後は、インフレ率の動向次第ではあるが、景気の落ち込みを見据え、2019年は政策金利を据え置くだろう。インフレ率が落ち着く2020年に再び利下げに転じると予想する。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年04月08日「基礎研レター」)
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