2019年03月22日

【アジア・新興国】東南アジア経済の見通し~底堅い成長続くも、輸出の停滞色強まり減速へ

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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■要旨
  1. 東南アジア経済は、18年10-12月期の成長率が上昇し、底堅い成長が続いている。輸出は減速傾向が強まり、投資も政府主導のインフラプロジェクトの進展による公共投資の拡大ペースが鈍化した一方、民間消費は良好な雇用・所得環境と物価の安定を背景に加速した。好調な消費が景気の減速傾向を打ち消す構図となっている。
     
  2. 消費者物価上昇率は、昨年末の油格下落の影響で足元で低下しているが、今春からエルニーニョ現象を背景とする穀物価格の上昇や消費需要の拡大を受けて底打ちすると予想する。だだし、米連邦準備理事会(FRB)の「ハト派」化を背景とする東南アジア通貨の安定が先行きの物価上昇を抑制するだろう。
     
  3. 金融政策は、引締め気味の政策スタンスを中立化、一部では慎重な判断のもとで金融緩和を実施すると予想する。国別に見ると、フィリピンがインフレ圧力の後退を受けて今春から段階的に計1%程度の利下げ、インドネシアが金融市場の動向を睨みながら年1回の利下げ、国内経済が緩慢なマレーシアが年前半に1回利下げを実施すると予想する。
     
  4. 経済の先行きは、消費を支えに底堅く成長するが、中国や欧州などの海外経済の減速により輸出が鈍化、米中貿易戦争の影響で企業の投資マインドが悪化して景気減速は避けられないと予想する。国別に19年の成長率を比較すると、輸出鈍化の影響が大きいマレーシアとタイ、ベトナムが減速するものの、選挙関連の支出拡大で消費が盛り上がるインドネシアとインフレ高進の収まるフィリピンが18年並みの成長になると予想する。
東南アジア5 カ国の成長率とインフレ率の見通し
■目次

1.東南アジア経済の概況と見通し
  ・経済概況:消費の加速で底堅い成長
  ・物価:油価下落による低下後、安定して推移
  ・金融政策:政策スタンスを中立化、昨年の利上げを一部解消へ
  ・経済見通し:輸出の停滞色強まり減速へ
2.各国経済の見通し
  2-1.マレーシア
  2-2.タイ
  2-3.インドネシア
  2-4.フィリピン
  2-5.ベトナム
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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