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- 【インドネシアGDP】10-12月期は前年同期比5.18%増~金利上昇と海外需要鈍化の逆風も、消費持ち直しで5%強の底堅い成長を維持
2019年02月06日
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インドネシアの2018年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.18%増(前期:同5.17%増)と横ばい、市場予想2の同5.10%増を若干上回った。
なお、2018年通年の成長率は前年比5.2%増(2017年:同5.1%増)と僅かに上昇したが、当初の政府の成長率目標(+5.4%)を下回る結果となった。
なお、2018年通年の成長率は前年比5.2%増(2017年:同5.1%増)と僅かに上昇したが、当初の政府の成長率目標(+5.4%)を下回る結果となった。
10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、消費が回復する一方で投資が鈍化した(図表1)。
民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比5.20%増(前期:同5.07%増)と上昇した。費目別に見ると、輸送・通信(同6.14%増)とホテル・レストラン(同5.85%増)が高めの成長を続ける一方、食料・飲料(同5.21%増)とアパレル(同4.26%増)が鈍化した。
政府消費は前年同期比4.56%増となり、前期の同6.27%増から低下した。
総固定資本形成は前年同期比6.01%増と、前期の同6.96%増から低下した。自動車(同8.40%増)が加速する一方、機械・設備(同12.28%増)と建設投資(同5.02%)が鈍化した。
純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲0.58%ポイントとなり、前期の▲0.98%ポイントからマイナス幅が縮小した。まず輸出は前年同期比4.33%増(前期:同8.08%増)と低下した。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同5.64%増)と底堅く推移したものの、財輸出(同4.18%増)が石油・ガス輸出の低迷により2四半期連続で鈍化した。また輸入は同7.10%増(前期:同14.02%増)となり、6四半期ぶりに一桁増まで鈍化した。
供給項目別に見ると、第一次産業が回復する一方、第二次産業、第三次産業が鈍化した(図表2)。
第一次産業は前年同期比3.87%増(前期:同3.66%増)となり、前期に鈍化した穀物とプランテーション作物の産出量が持ち直して上昇した。
一方で、第二次産業は前年同期比4.25%増(前期:同4.42%増)と低下した。内訳を見ると、製造業が同4.25%増(前期:同4.35%増)、鉱業が同2.25%増(前期:同2.67%増)、建設業が同5.58%増(前期:同5.79%増)と、それぞれ低下した。
また成長を牽引する第三次産業は前年同期比5.80%増(前期:同6.03%増)と低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売が同4.39%増(前期:同5.28%増)、情報・通信が同7.17%増(前期:同8.14%増)、運輸・倉庫が同5.34%増(同5.65%増)、行政・国防が同7.13%増(前期:同7.93%増)となり、それぞれ低下した。一方、ビジネスサービスは同8.94%増(前期:同8.67%増)、ホテル・レストランは同5.95%増(前期:同5.91%増)、不動産は同4.24%増(前期:同3.82%増)、金融・保険は同6.27%増(前期:同3.14%増)と、それぞれ上昇した。
1 2月6日、インドネシア統計局(BPS)が2019年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
第一次産業は前年同期比3.87%増(前期:同3.66%増)となり、前期に鈍化した穀物とプランテーション作物の産出量が持ち直して上昇した。
一方で、第二次産業は前年同期比4.25%増(前期:同4.42%増)と低下した。内訳を見ると、製造業が同4.25%増(前期:同4.35%増)、鉱業が同2.25%増(前期:同2.67%増)、建設業が同5.58%増(前期:同5.79%増)と、それぞれ低下した。
また成長を牽引する第三次産業は前年同期比5.80%増(前期:同6.03%増)と低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売が同4.39%増(前期:同5.28%増)、情報・通信が同7.17%増(前期:同8.14%増)、運輸・倉庫が同5.34%増(同5.65%増)、行政・国防が同7.13%増(前期:同7.93%増)となり、それぞれ低下した。一方、ビジネスサービスは同8.94%増(前期:同8.67%増)、ホテル・レストランは同5.95%増(前期:同5.91%増)、不動産は同4.24%増(前期:同3.82%増)、金融・保険は同6.27%増(前期:同3.14%増)と、それぞれ上昇した。
1 2月6日、インドネシア統計局(BPS)が2019年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
10-12月期GDPの評価と先行きのポイント
海外経済の減速傾向が強まるなか、インドネシア経済は10-12月期の実質GDP成長率が+5%強となり、底堅い成長を維持した。
10-12月期は、輸出が最大の輸出相手国である中国向けを中心に落ち込んだほか、投資も今年4月に予定される大統領選挙を前に海外からの投資が低迷したこと、昨年5月から続くインドネシア銀行(中央銀行)の金融引締めにより企業の投資マインドが悪化したことから鈍化した(図表4)。
一方、GDPの約半分を占める民間消費は回復した。大統領選挙を控えたジョコ政権が燃料に対する補助金を積み増したことにより、昨年のインフレ率は+3%強(中央銀行の目標+2.5%~4.5%)で安定して推移した(図表3)。また、これまでジョコ政権下が進めてきた国内のインフラ開発や経済政策パッケージ(全16弾)の実施などを通じてビジネス環境が改善するなか、失業率の低下傾向は続いている。こうした低インフレ環境の継続や雇用環境の改善などが、緩やかな消費の回復に繋がっているものとみられる。
経済の先行きは、引き続き内需を牽引役に5%強の底堅い成長が続くと予想する。年前半は4月の総選挙と大統領選挙関連の支出拡大が消費を押し上げるほか、昨年一服していたインフラ整備が加速して景気は押上げられるだろう。総選挙後の年後半には、消費需要の鈍化は避けられないものの、政策の先行き不透明感が払拭されて海外投資が回復へ向かうこと、19年度政府予算で拡充した社会保障プログラムの執行により景気は底堅さを保つと考えられる。
10-12月期は、輸出が最大の輸出相手国である中国向けを中心に落ち込んだほか、投資も今年4月に予定される大統領選挙を前に海外からの投資が低迷したこと、昨年5月から続くインドネシア銀行(中央銀行)の金融引締めにより企業の投資マインドが悪化したことから鈍化した(図表4)。
一方、GDPの約半分を占める民間消費は回復した。大統領選挙を控えたジョコ政権が燃料に対する補助金を積み増したことにより、昨年のインフレ率は+3%強(中央銀行の目標+2.5%~4.5%)で安定して推移した(図表3)。また、これまでジョコ政権下が進めてきた国内のインフラ開発や経済政策パッケージ(全16弾)の実施などを通じてビジネス環境が改善するなか、失業率の低下傾向は続いている。こうした低インフレ環境の継続や雇用環境の改善などが、緩やかな消費の回復に繋がっているものとみられる。
経済の先行きは、引き続き内需を牽引役に5%強の底堅い成長が続くと予想する。年前半は4月の総選挙と大統領選挙関連の支出拡大が消費を押し上げるほか、昨年一服していたインフラ整備が加速して景気は押上げられるだろう。総選挙後の年後半には、消費需要の鈍化は避けられないものの、政策の先行き不透明感が払拭されて海外投資が回復へ向かうこと、19年度政府予算で拡充した社会保障プログラムの執行により景気は底堅さを保つと考えられる。
米国の追加利上げの打ち止め観測が高まるなか、足元のルピア相場は安定している。インドネシア中央銀行のペリー総裁は1月の月例理事会後の会見で現在の政策金利の水準は「ピークに近い」と発言しており、先行きの追加利上げは小幅に止まりそうだ。しかしながら、ルピア安定のためには引き続き実質金利の水準を十分に保つ必要がある。従って、物価が先行きも安定して推移したとしても金融緩和には踏み切りにくい。
現在のところ銀行の貸出金利はほとんど上昇しておらず、これまでの金融引き締め策の効果は波及していないようであるが、このまま高めの政策金利が続くと貸出金利の上昇は避けられないだろう。つまり、昨年の積極的な利上げが過熱感の見られない景気に冷や水を浴びせる展開には引き続き注意が必要だ。
4月の大統領選挙を巡っては、現職のジョコ大統領がプラボウォ候補に対して現在優勢を保っている。このままジョコ大統領が再選を果し、これまでの健全なマクロ経済政策が継続されることになれば、海外からの投資資金が流入して通貨ルピアが安定化し、金融政策の自由度も高まるのではないだろうか。
現在のところ銀行の貸出金利はほとんど上昇しておらず、これまでの金融引き締め策の効果は波及していないようであるが、このまま高めの政策金利が続くと貸出金利の上昇は避けられないだろう。つまり、昨年の積極的な利上げが過熱感の見られない景気に冷や水を浴びせる展開には引き続き注意が必要だ。
4月の大統領選挙を巡っては、現職のジョコ大統領がプラボウォ候補に対して現在優勢を保っている。このままジョコ大統領が再選を果し、これまでの健全なマクロ経済政策が継続されることになれば、海外からの投資資金が流入して通貨ルピアが安定化し、金融政策の自由度も高まるのではないだろうか。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年02月06日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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