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2019年03月11日
インドの生命保険業界及び主要会社の状況-2017年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-
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1―はじめに
インドの生命保険市場全体の状況については、これまでもいくつかのレポート1で報告してきた。
インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)は、毎年12月から翌年の1月にかけて、Annual Reportを作成して、前年度の決算に基づく業界全体の数値等を報告している。今回、2019年1月に「Annual Report 2017-18」2を発行して、2017年度(2017年4月~2018年3月)の保険業界全体の数値を公表している。
このレポートでは、この報告書及び主要生命保険会社の2017年度決算数値を踏まえて、インドの生命保険業界全体の状況及び主要会社3の成長性・効率性・収益性・健全性等の状況について報告する。
1 基礎研レター「インドの生命保険市場(1)~(6)」(2015.11 30~2016.1.18)、基礎研レポート「インドの生命保険会社の状況-2016年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-」(2018.3.5) 等
2 https://www.irdai.gov.in/ADMINCMS/cms/frmGeneral_NoYearList.aspx?DF=AR&mid=11.1
3 国営の最大生命保険会社であるLICと収入保険料で上位の民間生命保険会社5社を対象としている。
インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)は、毎年12月から翌年の1月にかけて、Annual Reportを作成して、前年度の決算に基づく業界全体の数値等を報告している。今回、2019年1月に「Annual Report 2017-18」2を発行して、2017年度(2017年4月~2018年3月)の保険業界全体の数値を公表している。
このレポートでは、この報告書及び主要生命保険会社の2017年度決算数値を踏まえて、インドの生命保険業界全体の状況及び主要会社3の成長性・効率性・収益性・健全性等の状況について報告する。
1 基礎研レター「インドの生命保険市場(1)~(6)」(2015.11 30~2016.1.18)、基礎研レポート「インドの生命保険会社の状況-2016年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-」(2018.3.5) 等
2 https://www.irdai.gov.in/ADMINCMS/cms/frmGeneral_NoYearList.aspx?DF=AR&mid=11.1
3 国営の最大生命保険会社であるLICと収入保険料で上位の民間生命保険会社5社を対象としている。
2―生命保険業界全体の状況
1|収入保険料
(1)全体収入保険料の推移
2017年度の生命保険会社の収入保険料は、対前年9.6%増加して、4兆5,880億ルピー(1ルピー=1.63円(2018年3月末為替レート)とすると、約7.5兆円)となった。
収入保険料の過去からの推移を、国営で最大の生命保険会社であるLIC(Life Insurance Corporation of India)とLIC以外の民間との内訳別に見てみると、次ページ左の図表の通りとなっている。2000年8月に市場が民間保険会社に開放されて以降、2010年まで保険料は急速に増加してきていたが、2010年9月のユニット・リンク保険商品(ULIPs)に対する規制の見直し等を受けて、その後2年程は保険料の伸びが鈍化していた。ただし、2013年度以降は、再び保険料を増加させ、成長軌道に乗せている。具体的には、収入保険料の年平均増加率は、2000年から2010年の10年間においては23.7%であったのに対して、その後2年間で▲0.8%となり、2013年からの2年間では6.9%、2015年と2016年は2桁成長で、2017年はほぼ2桁の9.6%成長となっている。
またLICとLIC以外の収入保険料シェアの推移を見た場合、以下の右の図表の通りとなっており、LICのシェアは、2010年までは徐々に低下してきていたが、民間保険会社においてウェイトが高いユニット・リンク保険が監督規制の影響等で販売が低迷したことから、その後数年は若干上昇していた。ただし、2014年度以降、経済環境の改善を受けた好調な株式市場や各社の新商品の投入等により、ユニット・リンク保険の販売が回復したこともあり、再び民間保険会社のシェアが上昇し、LICのシェアは低下してきている4収入保険料の増加率は、LICが5.9%であるのに対して、LIC以外は19.2%で、LICのシェアは70%を下回った。
(1)全体収入保険料の推移
2017年度の生命保険会社の収入保険料は、対前年9.6%増加して、4兆5,880億ルピー(1ルピー=1.63円(2018年3月末為替レート)とすると、約7.5兆円)となった。
収入保険料の過去からの推移を、国営で最大の生命保険会社であるLIC(Life Insurance Corporation of India)とLIC以外の民間との内訳別に見てみると、次ページ左の図表の通りとなっている。2000年8月に市場が民間保険会社に開放されて以降、2010年まで保険料は急速に増加してきていたが、2010年9月のユニット・リンク保険商品(ULIPs)に対する規制の見直し等を受けて、その後2年程は保険料の伸びが鈍化していた。ただし、2013年度以降は、再び保険料を増加させ、成長軌道に乗せている。具体的には、収入保険料の年平均増加率は、2000年から2010年の10年間においては23.7%であったのに対して、その後2年間で▲0.8%となり、2013年からの2年間では6.9%、2015年と2016年は2桁成長で、2017年はほぼ2桁の9.6%成長となっている。
またLICとLIC以外の収入保険料シェアの推移を見た場合、以下の右の図表の通りとなっており、LICのシェアは、2010年までは徐々に低下してきていたが、民間保険会社においてウェイトが高いユニット・リンク保険が監督規制の影響等で販売が低迷したことから、その後数年は若干上昇していた。ただし、2014年度以降、経済環境の改善を受けた好調な株式市場や各社の新商品の投入等により、ユニット・リンク保険の販売が回復したこともあり、再び民間保険会社のシェアが上昇し、LICのシェアは低下してきている4収入保険料の増加率は、LICが5.9%であるのに対して、LIC以外は19.2%で、LICのシェアは70%を下回った。
4 LICは、商品ガイドラインの改訂後、2015年8月になって初めて、改訂後のユニット・リンク保険を発売している。
(2) 収入保険料の各社別・払方別・商品別内訳
2017年度の収入保険料の各社別・払方別・商品別の内訳は、次ページの図表の通りである。
会社別では、LICが69.4%のシェアを有し、残りの30.6%のシェアを23の民間保険会社が分け合っている。
LICでは、一時払保険料の構成比が高くなっており、会社全体の収入保険料の1/3程度を占めている。LICは、ユニット・リンク保険等のリンク保険5を殆ど販売しておらず、収入保険料の構成比は0.3%でしかない。
一方で、民間保険会社は、リンク保険の構成比が高く、民間全体では45.5%の構成比となっている。
なお、保険料シェアで5%前後を有するICICI Prudential、SBI Life及びHDFC Standardの3社の間でも、保険料の構成要素はかなり異なっており、ICICI Prudentialは全体保険料の3/4がリンク保険からであるのに対して、SBI Lifeではリンク保険が6割弱、HDFC Standardではリンク保険が4割強となっている。さらに、一時払保険料の割合は、ICICI Prudentialが7%程度であるのに対して、SBI Lifeでは11%、HDFC Standardでは28%となっている。
2017年度の収入保険料の各社別・払方別・商品別の内訳は、次ページの図表の通りである。
会社別では、LICが69.4%のシェアを有し、残りの30.6%のシェアを23の民間保険会社が分け合っている。
LICでは、一時払保険料の構成比が高くなっており、会社全体の収入保険料の1/3程度を占めている。LICは、ユニット・リンク保険等のリンク保険5を殆ど販売しておらず、収入保険料の構成比は0.3%でしかない。
一方で、民間保険会社は、リンク保険の構成比が高く、民間全体では45.5%の構成比となっている。
なお、保険料シェアで5%前後を有するICICI Prudential、SBI Life及びHDFC Standardの3社の間でも、保険料の構成要素はかなり異なっており、ICICI Prudentialは全体保険料の3/4がリンク保険からであるのに対して、SBI Lifeではリンク保険が6割弱、HDFC Standardではリンク保険が4割強となっている。さらに、一時払保険料の割合は、ICICI Prudentialが7%程度であるのに対して、SBI Lifeでは11%、HDFC Standardでは28%となっている。
5 リンク保険商品は、ユニット・リンク商品または変額リンク商品として、提供されている。
3―主要会社の経営効率の状況
以下においては、LICと民間の外資系生命保険会社のうちの収入保険料で上位5社について、2017年度決算ベースの各社のPublic Disclosures資料の数値に基づいて、経営効率の状況を報告する。
1|継続率
保険契約の13月目と25月目の継続率(年換算保険料ベース)の過去5年間の推移は、以下の図表の通りである。継続率は、商品・販売チャネル等によっても、大きく異なるが、これらの合計数値として、各社の数値が示されている。なお、各社の算出ベースは必ずしも統一されているとは限らないので、会社間で水準を比較する場合には注意が必要となる。
各社とも13月目継続率は75%以上となっており、Bajaj Allianzを除けば25月目継続率は68%~78%の水準となっている。なお、Bajaj Allianzも昨年に比べて、水準を大きく改善させてきている。
各社とも、継続率の改善は大きな課題であり、監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)も注視している。基本的には、各社とも着実に水準の向上を図ってきている状況がみてとれる。
1|継続率
保険契約の13月目と25月目の継続率(年換算保険料ベース)の過去5年間の推移は、以下の図表の通りである。継続率は、商品・販売チャネル等によっても、大きく異なるが、これらの合計数値として、各社の数値が示されている。なお、各社の算出ベースは必ずしも統一されているとは限らないので、会社間で水準を比較する場合には注意が必要となる。
各社とも13月目継続率は75%以上となっており、Bajaj Allianzを除けば25月目継続率は68%~78%の水準となっている。なお、Bajaj Allianzも昨年に比べて、水準を大きく改善させてきている。
各社とも、継続率の改善は大きな課題であり、監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)も注視している。基本的には、各社とも着実に水準の向上を図ってきている状況がみてとれる。
(2019年03月11日「基礎研レポート」)
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