2019年03月07日

ESG投資について振り返るー単なる流行に終わらせないために考えてみる

基礎研REPORT(冊子版)3月号

金融研究部 研究理事 年金研究部長 兼 年金総合リサーチセンター長   德島 勝幸

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1―はじめに

日本のESG投資の流れは、近年、急速に拡大しつつある。その流れに抗するべきではなく、個々の企業・団体では、どう流れに乗るかを考える必要がある。ESG投資に対して強い確信を有する企業や団体は、より積極的に推進するだろうし、周囲の様子を見ながらの一般的な多くの企業や団体は、少しずつ進み続けることだろう。
 
ESG投資が、すべての企業や団体にとって是認されるものか、一律の回答は難しい。E・S・Gの3要素のどれに力点を置くかで、異なる答えが生じるかもしれない。現在の強い流れの中でも、時に、立ち止まって考えることが必要ではないか。教条主義的な主張や行動に乗ってしまうと後から冷静に振り返った際に、しばしば悔悟の念を産む。ESG投資が今後も重要視されると確信すればこそ、立ち止まってみる必要があるだろう。

2―ESG投資は収益性を否定しない

海外においてはESG投資が超過収益の源泉になるという分析結果も見られるが、日本の株式投資において強固な効果は確認されていない。一方、先進的な年金の発想は、ESG要素を意識することで、受益者のために、投資先の長期的な観点での継続性を確保することにある。年金運用が長期資金であるという本来の特性に立つのならば、ESG投資は適合した概念であろう。しかし、短期的な運用成果のみを考える運用においては、ESG投資は収益獲得と矛盾する行動になる場合がある。
 
年金運用者は、受益者に対するフィデューシャリーデューティーを負う。投資の際に意識されるべきは、受益者に対する給付の確実性と収益還元である。したがって、収益性を犠牲にしてまで、ESG要素を追求するべきものではない。短期的な観点と中長期的な観点とで、相反する行動を誘引する可能性がある。年金は、世間の流れに乗るのではなく、自らのESG投資に関する方針を確立し、それに合わせた行動を採ることが望ましい。
 
近年では、ESG投資が株式から他の資産領域にも拡大する傾向がある。インフラ投資などエクイティ性を有する資産においては、同様にESG要素を考えることが馴染む。一方で、債券の領域にまでESG投資が拡大されつつある。投資の収益性が損なわれなければ、債券投資においてESG要素を考慮することは誰も反対しない。しかし、ESG投資を意識しているからと言って、割高な水準で債券を購入することは、フィデューシャリーデューティーと合致しない。
 
最近の日本における債券発行を見ると、様々な名目で「環境債」や「グリーンボンド」といったものが募集されている。しかし、固定利付きである債券において、グリーンボンドだからと言って、割高な水準で購入されるべきではない。そもそも、「お金に色はない」から、グリーンボンドで調達した資金が、名目にのみ充当されるということはない。厳密なグリーンボンドにするためには、特約等で使途を厳しく限定するべきだろう。現状で多発されているグリーンボンドは、発行体の売らんかなの姿勢と、ESG投資を訴求する投資家の打算的な合意の上にあるものとしか見えない(それを「ウィンウィン」の関係と呼ぶこともできるが)。

3―ESGをキャンペーンに貶めるな

ESG投資の根底にあるのが、「言ったもの勝ち」の行動である。化石燃料を使わないことで、原子力発電は環境に優しいと言われなかったか。クラスター爆弾の製造企業に対する投資がESG判断に適わないならば、戦車や艦艇など兵器を少しでも製造している企業への投資はESG判断に適うか。燃料電池車などを販売しているからと言って、ガソリン自動車の売上が過半を占めるメーカーへの投資は、ESG判断に適うか。その一方で、企業統治に問題があるとされる企業の年金や、ガバナンス体制に問題のあると考えられる年金が、投資先にガバナンスを求めることは矛盾していないだろうか。
 
ESG投資が単なる流行となり、魔女狩りのような排除行動になってはならない。特に、ネガティブリストに基づくダイベストメントを強調するのは危険であり、同時に、企業の一部のみを捉えて肯定的にインベストメントを強調することにも危険性がある。一部のみならず企業全体やグループ会社も含めた集団として考えることも必要だろう。
 
結局のところ、ESG投資は投資家にとって、根本的な投資の姿勢を強く示すものである。周囲に流されず、また、一時の流行と考えることなく、フィデューシャリーデューティーを遂行する観点から、改めてESG投資への取組み方を見直してはいかがだろうか。
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金融研究部   研究理事 年金研究部長 兼 年金総合リサーチセンター長

德島 勝幸 (とくしま かつゆき)

研究・専門分野
年金・債券・クレジット・ALM

(2019年03月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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