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- インド経済の見通し~金利上昇と輸出環境の悪化により、勢いを欠いた成長を予想 (2018年度+7.6%、2019年度+7.3%)
2018年12月05日
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経済概況:景気の回復局面が一服
経済見通し:2019年度は+7%台前半の勢いを欠いた成長へ
経済の先行きは、高額紙幣廃止や物品・サービス税(GST)導入に伴う経済の混乱からの反動増が一服したことから大幅な景気加速は見込みにくい。消費主導の成長こそ続くものの、これまでの金利上昇や輸出環境の悪化の影響が表れて投資と輸出が鈍化し、来年度は+7%台前半の勢いを欠いた成長が続くと予想する。
民間消費は減速傾向が続かず、引き続き景気の牽引役となるだろう。生産側の指標を見ると、耐久消費財生産と非耐久消費財生産がそれぞれ堅調に拡大しており、基調として消費需要が落ち込んでいる訳ではなさそうだ(図表5)。今後は農作物の最低調達価格(MSP)の引上げを背景に農業所得が持ち直すほか、原油価格の下落を背景に先行きのインフレ警戒感が和らぐことから、消費は堅調に推移するだろう。
現在好調の総固定資本形成は、これまでの金利上昇や貿易環境の悪化などを背景に鈍化しよう。足元では設備稼働率が上昇しているものの、企業の新規投資計画はモディ政権後期に入って鈍化傾向にあり、企業は投資に前向きになっていないようだ(図表6)。また総選挙前には、政策の先行き不透明感から民間投資が延期されて伸び悩むだろう。総選挙では、インド人民党の辛勝を予想するが、モディ政権2期目の経済政策では前回ほど経済改革への期待が高まるとは考えにくく、総選挙後の民間投資の加速は限定的なものとなると予想する。公共投資については、当面は来年4月の総選挙を控えて堅調に推移するが、総選挙後には政府が再び財政再建に注力することからインフラや住宅開発など政府プロジェクトの大幅な加速は見込みにくく、緩やかな伸びに止まる見通しである。
純輸出については、まず輸出が米中貿易戦争を背景とする世界貿易環境の悪化を受けて年明けから鈍化すると予想する。一方、輸入は旺盛な消費需要を背景に堅調な伸びを維持することから、純輸出は引き続き成長率に対してマイナスに働くものと見込まれる。
以上の結果、実質GDP成長率は高額紙幣廃止とGST導入に伴う混乱からの回復により18年度が+7.6%(17年度:+6.7%)と上昇するが、19年度が投資と輸出の鈍化により+7.3%の勢い欠く展開、20年度が投資の回復で+7.5%と上昇して堅調な成長ペースに戻ると予想する。
民間消費は減速傾向が続かず、引き続き景気の牽引役となるだろう。生産側の指標を見ると、耐久消費財生産と非耐久消費財生産がそれぞれ堅調に拡大しており、基調として消費需要が落ち込んでいる訳ではなさそうだ(図表5)。今後は農作物の最低調達価格(MSP)の引上げを背景に農業所得が持ち直すほか、原油価格の下落を背景に先行きのインフレ警戒感が和らぐことから、消費は堅調に推移するだろう。
現在好調の総固定資本形成は、これまでの金利上昇や貿易環境の悪化などを背景に鈍化しよう。足元では設備稼働率が上昇しているものの、企業の新規投資計画はモディ政権後期に入って鈍化傾向にあり、企業は投資に前向きになっていないようだ(図表6)。また総選挙前には、政策の先行き不透明感から民間投資が延期されて伸び悩むだろう。総選挙では、インド人民党の辛勝を予想するが、モディ政権2期目の経済政策では前回ほど経済改革への期待が高まるとは考えにくく、総選挙後の民間投資の加速は限定的なものとなると予想する。公共投資については、当面は来年4月の総選挙を控えて堅調に推移するが、総選挙後には政府が再び財政再建に注力することからインフラや住宅開発など政府プロジェクトの大幅な加速は見込みにくく、緩やかな伸びに止まる見通しである。
純輸出については、まず輸出が米中貿易戦争を背景とする世界貿易環境の悪化を受けて年明けから鈍化すると予想する。一方、輸入は旺盛な消費需要を背景に堅調な伸びを維持することから、純輸出は引き続き成長率に対してマイナスに働くものと見込まれる。
以上の結果、実質GDP成長率は高額紙幣廃止とGST導入に伴う混乱からの回復により18年度が+7.6%(17年度:+6.7%)と上昇するが、19年度が投資と輸出の鈍化により+7.3%の勢い欠く展開、20年度が投資の回復で+7.5%と上昇して堅調な成長ペースに戻ると予想する。
(為替の動向)再びルピー安へ向かうが、来年度には下落圧力が弱まる


(物価・金融政策の動向)物価は年明けから緩やかに上昇、金融政策は据え置きを予想

先行きのインフレ率は、当面落ち着いて推移するだろうが、年明け頃から再び上向く展開を予想する。11月以降のカリフ作の収穫期には政府の農作物の最低調達価格(MSP)引上げにより食品価格が上向くほか、その後の農村部の消費需要の拡大でコアインフレの加速が見込まれるためだ。もっとも足元では国際原油価格が大きく下落すると共に、新興国不安から売られていた通貨ルピーも買い戻しされるなど、原油高と通貨安を背景とする先行きの物価上昇圧力は和らぎそうだ。CPI上昇率は19年度が+4.7%、20年度が+4.9%となり、大幅なインフレは回避されると予想する。

12月5日の会合では、7-9月期の実質GDPの減速やインフレ圧力の後退、通貨の買戻しと原油価格の下落を背景に金融政策は据え置かれると予想する。その後も、先行きの景気が勢いを欠くことやインフレ率の上昇が緩やかなものになることから、RBIは政策金利の据え置きを続けると予想する。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年12月05日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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