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- 急増する外国人の居住状況
2018年12月03日
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図表12は、先行研究5等をもとに、業種(職種)別に外国人労働者の住居の特色を整理したものである。業種(職種)により就業時間帯や雇用期間等は異なることから、住宅選好の際に重視するポイントも大きく変わってくる。例えば、「飲食サービス業」の就業者(例:飲食店のコック)は、業務が深夜まで及ぶこともあることから、通勤利便性(職場までの近さ)を重視する。雇用期間に期限のあるシステムエンジニアは、家具付きのマンスリーマンションを探すことが多い。また、文化の違いも住宅選好に影響を及ぼしている。製造業に多く従事している日系ブラジル人はバーベキューパーティーを開くために、複数の駐車場がある庭付きの戸建て住宅を求めることもあるようだ。
外国人労働者の内、「卸売業・小売業」で働く人の割合が高い都道府県は、第1位が「山口県(25%)」、第2位が「東京都(20%)」であった(図表14)。また、「宿泊業、飲食サービス業」で働く人の割合が高い都道府県は、第1位が「東京都(22%)」、第2位が「沖縄県(16%)」であった(図表15)。全般的には、東京をはじめとする商業活動が活発な都市部では両業種で働く人の割合が高い傾向にある。
上記の通り、外国人労働者が従事する業種は地域・エリア毎に違いがあり、その地域差は住宅選好に大きな影響を及ぼす。今後、外国人の増加が見込まれる中、不動産事業者は、外国人の就業状況も留意し、ビジネスを展開することが一層求められるだろう。
上記の通り、外国人労働者が従事する業種は地域・エリア毎に違いがあり、その地域差は住宅選好に大きな影響を及ぼす。今後、外国人の増加が見込まれる中、不動産事業者は、外国人の就業状況も留意し、ビジネスを展開することが一層求められるだろう。
5 萩野政男『「外国人向け賃貸住宅」ノウハウと実践』週刊住宅新聞社、2015年6月
3――外国人を取り巻く住宅仲介の状況
外国人の増加が著しい中、今後、住宅仲介の現場では外国人客は増加するだろう。以下、外国人を取り巻く住宅仲介事情について概観する。
国土交通省が不動産事業者を対象に実施した「不動産売買・賃貸業務における外国人対応に関する調査」(2015年10月~11月)によれば、外国人客が取引に占める割合は、不動産売買業務、賃貸業務ともに「0~5%未満」との回答が8割以上を占めた。外国人が急増している状況の割には、現状では外国人客への不動産仲介事例はあまり多くないようだ。ただし、10年前と比較して、「外国人との取引が増加した」との回答は、売買業務では8割強、賃貸業務では約6割を占めており、外国人との不動産ビジネスは徐々に拡大していることが窺える(図表16)。
国土交通省が不動産事業者を対象に実施した「不動産売買・賃貸業務における外国人対応に関する調査」(2015年10月~11月)によれば、外国人客が取引に占める割合は、不動産売買業務、賃貸業務ともに「0~5%未満」との回答が8割以上を占めた。外国人が急増している状況の割には、現状では外国人客への不動産仲介事例はあまり多くないようだ。ただし、10年前と比較して、「外国人との取引が増加した」との回答は、売買業務では8割強、賃貸業務では約6割を占めており、外国人との不動産ビジネスは徐々に拡大していることが窺える(図表16)。
6 一般社団法人不動産協会「外国人ビジネスパーソンの都市・オフィス・居住環境に関するニーズ調査報告書」(2015年10月)
4――おわりに
今後、人手不足の深刻化が見込まれる中、外国人留学生・労働者の受け入れ拡大は必要不可欠な状況といえる。特に、人口が大幅に減少する地方都市では、喫緊の課題でもあり、今後、住宅賃貸・売買市場では、外国人の存在感はますます高まることが見込まれる。
前述の通り、外国人の居住状況は地域により事情が異なる。また、従事している仕事や文化により、住宅に対するニーズも様々である。一方で、「住居」に関する外国人受け入れの体制は、不十分な部分も多い。ただし、2017年8月には、国土交通省から「不動産事業者のための国際対応実務マニュアル」が公表される等、外国人との不動産取引を行う体制を整備する動きも始まっている。
今後、不動産ビジネスを拡大するためには、外国人を取り巻く背景や住居に対するニーズを理解し、事業戦略に織り込むことが本格的に求められるだろう。
前述の通り、外国人の居住状況は地域により事情が異なる。また、従事している仕事や文化により、住宅に対するニーズも様々である。一方で、「住居」に関する外国人受け入れの体制は、不十分な部分も多い。ただし、2017年8月には、国土交通省から「不動産事業者のための国際対応実務マニュアル」が公表される等、外国人との不動産取引を行う体制を整備する動きも始まっている。
今後、不動産ビジネスを拡大するためには、外国人を取り巻く背景や住居に対するニーズを理解し、事業戦略に織り込むことが本格的に求められるだろう。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2018年12月03日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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