2018年11月12日

企業物価指数(2018年10月)~川上から川下への上昇圧力が弱まる~

白波瀨 康雄

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1.国内企業物価は上昇基調が続く

11月12日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2018年10月の国内企業物価は前年比2.9%(9月:同3.0%)と上昇率は前月から0.1ポイント低下し、事前の市場予想(QUICK集計:同2.8%)を小幅に上回った。伸び率は22ヵ月連続のプラスだが、4ヵ月ぶりに3%台を割り込んだ。

前月比では0.3%(9月:同0.3%)と伸び率は前月から変わらず、2ヵ月連続のプラスとなった。7~9月に適用される夏季電力料金の引き上げの影響を除いたベースでは前月比0.6%(7月:同0.2%)となった。国内企業物価は上昇基調が続いている。
国内企業物価指数の前月比寄与度分解 非鉄金属(9月:前月比▲0.5%→10月:同1.0%)は、銅価格の国際市況が軟調に推移しており下落基調だったが、4ヵ月ぶりに上昇した。また、石油・石炭関連(9月:前月比2.3%→10月:同4.9%)は2ヵ月連続で上昇した。ガソリン(前月比3.9%)、灯油(同6.1%)、軽油(同6.0%)など石油製品(同5.0%)が伸び率を高めたことが影響した。石油製品は伸び率を高めたが、原油価格は10月以降下落しており、先行きは上昇基調が一服する可能性が高い。原油価格の上昇が遅れて反映される化学製品(前月比0.1%)は7ヵ月連続の上昇、電力・都市ガス・水道(同0.9%)は3ヵ月連続で上昇(夏季電力料金調整後ベース)している。

国内企業物価の前月比寄与度をみると、飲食料品・農林水産物がマイナス寄与となったが、石油・石炭製品のプラス寄与が全体を押し上げたほか、幅広い品目がプラス寄与となった。

2.輸入物価は4ヵ月ぶりに上昇

輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 10月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比1.0%(9月:同0.0%)と4ヵ月ぶりに上昇した。また、10月のドル円相場は、前月比0.8%の円安水準になったことから、円ベースでは前月比1.6%(9月:同0.6%)と輸入物価を押し上げた。前年比(円ベース)は9.5%(9月:同10.8%)と2ヵ月連続で伸び率が鈍化している。

契約通貨ベースでみると、石油・石炭・液化天然ガス(9月:前月比0.8%→10月:同3. 8%)は、7ヵ月連続でプラスを維持している。石油・同製品(前月比5.3%)が3ヵ月ぶりに上昇に転じ、天然ガス(同1.7%)も上昇が続いている。一方、金属・同製品(9月:前月比▲1.1%→10月:同▲0.6%)は、鉄鋼(前月比▲0.9%)や非鉄金属(同▲1.5%)の下落を受けて、4ヵ月連続で下落している。また、化学製品(9月:前月比0.2%→10月:同▲0.5%)やはん用・生産用・業務用機器(9月:前月比0.1%→10月:同▲0.3%)が下落に転じたほか、電気・電子機器(9月:前月比▲0.2%→10月:同▲0.1%)は下落が続いており、幅広い品目が輸入物価を押し下げた。

原油価格は米国のイラン経済制裁による供給懸念などから高値圏で推移していたが、一部の国に対して原油輸入を容認するとして需給の緩みが意識され下落している。また、非鉄金属は米中貿易摩擦の懸念や世界経済の減速懸念などから軟調に推移しており、輸入物価の伸びは鈍化していくとみられる。また、ドル円は総じて110~115円のレンジ圏での推移が続いており、輸入物価に与える影響は限定的となろう。

3.先行きは川上から川下への上昇圧力が弱まる

需要段階別指数 10月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比18.2%(9月:同19.0%)、中間材が前年比4.7%(9月:同5.3%)、最終財が前年比0.4%(9月:同0.5%)と全ての段階で上昇率が鈍化した。川上にあたる素原材料の上昇が一服し、川下の最終財への価格転嫁の動きは弱まっている。

特に、最終財の輸入品は前年比▲0.4(9月:同0.0%)と下落に転じた(最終財の国内品は前年比0.6%(9月:同0.6%)と横ばい)。

消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比0.6%(9月:同0.8%)と7ヵ月ぶりに伸び率が鈍化した。世界経済の回復に伴う需要拡大から上昇傾向にあった国際商品市況は、世界経済への先行き懸念から頭打ちとなっている。前年比でみた素原材料は伸び率が鈍化しており、先行きも川上から川下への上昇圧力が弱まってくると見込まれる。
 
 

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(2018年11月12日「経済・金融フラッシュ」)

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