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- 本格化する日本版DMO~インバウンドの拡大を全国津々浦々に~
例えば、日本版DMOの1つ、兵庫県豊岡市、京都府京丹後市を対象区域とする一般社団法人豊岡観光イノベーション(2016年6月発足)では、豊岡市内40カ所に無料Wi-Fiを設置して観光客の属性や行動ルートを把握・分析している。こうしたデータを活用してターゲットを絞った戦略を打つことができ、その効果の検証にも役立てることができる。また、欧米豪からの来訪者の割合が高いことをすでに把握しており、英語・フランス語による外国人向け宿泊予約サイトの運営を開始した。インターネットを通じて自由に観光地を決めて宿泊予約をする傾向が強い個人客の獲得に主眼を置いている。豊岡市の外国人延べ宿泊者数は2011年の1,118人泊から2017年の50,800人泊へと急増しており、着実に成果を上げているようだ。
豊岡観光イノベーションは、豊岡市が主導して、豊岡市合併前の旧1市5町に残っている6つの観光協会の上部組織として設立し、隣接している京都府京丹後市もマーケティング区域とした。地方銀行や路線バス事業者などの民間企業が基金を拠出しており、メンバーは市の派遣職員や商社・旅行会社などの派遣社員からなる。民間のノウハウを活用して、外国人向け宿泊サイトの運営の他にも、着地型ツアー・体験プログラムの販売や視察の受け入れなどの収益事業を行っている。また、地元事業者に対して外国人観光客の動向などマーケティング情報の提供や交流会の開催を行っている。地域事業者と戦略を共有し、地域一丸となって観光地域づくりに推進できるよう取り組んでいる。
豊岡イノベーションの2016年度の収入は、83%が国や市からの補助金だが、2020年度には補助金の割合は21%まで減り、収益事業や行政からの受託事業による収入が74%を占める見通しだ3。将来的には補助金に頼らないビジネスモデルを目指している。地域全体が潤うことが役割であり、日本版DMO自体が必ずしも収益を追求する必要はないが、優秀な専門人材を確保し、継続・発展していくためにも、自主財源の確保に努める必要があるだろう。
地方部のインバウンド消費額は年間1兆円を突破した。これは個人消費の0.8%に相当し、一定程度の経済効果が生まれている(図表3)。多様な関係者を巻き込んで戦略的に進める観光地域づくりが各地で奏功し、インバウンドが全国津々浦々に広がることを期待したい。
1 人泊=宿泊人数×宿泊日数
2 観光庁「国内外の観光地域づくり体制に関する調査業務(2016年3月)」
3 観光庁「日本版DMO形成・確立計画」
4 マーケティングを行うエリアによって、広域連携DMO(複数の都道府県で形成)、地域連携DMO(複数の市町村で形成)、地域DMO(1つの市町村で形成)の3つに分かれる
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白波瀨 康雄
研究・専門分野
(2018年08月24日「研究員の眼」)
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