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PrudentialがSIFI指定解除され、米国におけるノンバンクSIFIがゼロに-FSOCの公表内容と関係者の反応等-
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4―Prudential及び関係団体は歓迎の意を表明
1|Prudentialの反応
Prudentialは、今回のFSOCのSIFI指定解除を歓迎する旨の声明を公表8している。
「Prudentialが指定の基準を決して満たしてこなかったという私たちの長年の信念を裏付けるこの決定に満足している。」とし、さらに「FSOCのプロセス及び金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するためのその他の措置を改善し強化するために、規制当局と引き続き協力する。」と述べた。
加えて、「我々のクライアント、顧客及びその他の利害関係者に利益をもたらす、より良い、情報に基づいた公共政策の成果を確実にしていくために、グループ全体の監督当局としての拡大された規制上の役割において、ニュージャージー州銀行・保険局と引き続き協働していく。」と述べた。
2018年10月17日
Prudential Financialは、金融安定監督評議会がSIFIラベルを削除した後に声明を出す
ニューアーク ニュージャージー州-(BUSINESS WIRE)-Prudential Financial Inc.(NYSE:PRU)は、金融安定監督評議会(FSOC)が、Prudentialのノンバンクのシステム上重要な金融機関としての指定を撤回することを投票した、と本日発表したことを受けて、以下の会社の声明を発する、
「Prudentialが指定の基準を決して満たしてこなかったという私たちの長年の信念を裏付けるこの決定に満足している。この結果は、Prudentialの持続可能なビジネスモデル、資本力、包括的なリスク管理を反映しており、これらが、顧客に対する約束を果たし、一貫した業績を達成し、規制義務を果たしていくことを可能にする。」
「Prudentialのアプローチ(FSOCの厳格な審査プロセスを通じて)は、Prudentialがシステミックなリスクを負わないという評議会の適切な結論をもたらした。我々は、FSOCのプロセス及び金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するためのその他の措置を改善し強化するために、規制当局と引き続き協力する。当社はまた、我々のクライアント、顧客及びその他の利害関係者に利益をもたらす、より良い、情報に基づいた公共政策の成果を確実にしていくために、グループ全体の監督当局としての拡大された規制上の役割において、ニュージャージー州銀行・保険局と引き続き協働していく。」
ACLIも、今回のFSOCのSIFI指定解除に関して、以下の声明を公表9している。
これによれば、ACLIは、「Prudential Financialの不適切な指定は、保険ビジネスモデルの理解が不十分であり、州保険監督者の生命保険業界に対する効果的な監視を無視した欠陥のあるプロセスの結果であった。」とし、「生命保険会社は、システミックリスクではなく、経済における金融安定の源泉である。彼らの永続的な約束と長期的な投資哲学は、ストレスの時代に経済のためのショックアブソーバを提供する。」と述べた。
さらに、「ACLIは、FSOCの前進する努力が、米国の金融安定性に対するマクロプルーデンシャルリスクの評価と、それらに対処するために主要金融規制当局と協働することに焦点を当てることを推奨している。FSOCは、プロセスを改革し、最初のアプローチから離れることで、国家経済と米国消費者を保護する重要な役割を果たすことができる。」とFSOCの役割についての意見も述べた。
2018年10月17日
ACLIはFSOCの生命保険会社の指定解除を賞賛する
米国生命保険協会(ACLI)のSusan Neely会長兼最高経営責任者(CEO)は、金融安定監督評議会(FSOC)がPrudential Financialの「ノンバンクのシステム上重要な金融機関」としての指定の取消しを発表した後、本日以下の声明を発した。
ワシントンDC(2018年10月17日)-「金融安定監督評議会(FSOC)の行動を強く支持している。Prudential Financialの不適切な指定は、保険ビジネスモデルの理解が不十分であり、州保険監督者の生命保険業界に対する効果的な監視を無視した欠陥のあるプロセスの結果であった。」
「生命保険会社は、システミックリスクではなく、経済における金融安定の源泉である。彼らの永続的な約束と長期的な投資哲学は、ストレスの時代に経済のためのショックアブソーバを提供する。」
「ACLIは、FSOCの前進する努力が、米国の金融安定性に対するマクロプルーデンシャルリスクの評価と、それらに対処するために主要金融規制当局と協働することに焦点を当てることを推奨している。FSOCは、プロセスを改革し、最初のアプローチから離れることで、国家経済と米国消費者を保護する重要な役割を果たすことができる。」
NAICは、今回のFSOCのSIFI指定解除に関して、以下の声明を公表10している。
「NAICは、Prudentialに適用されたSIFI指定プロセスに欠陥があると一貫して主張してきた。」とし、NAIC会長兼テネシー州の商業・保険コミッショナーのJulie Mix McPeak氏は、「Prudentialの指定を取り消すという評議会の決定に拍手を送る。この行動は、州の保険規制制度の強化とグループ監督ツールの強化を反映している。」と述べた。「また、これらのツールを実施し、それらをPrudentialの規制に適用することは、Prudentialのグループ全体の監督当局であるニュージャージー州銀行・保険局の業務であると認識している。」とした。
NAIC次期会長兼メイン州の保険監督官のEric A. Cioppa氏は、「指定解除を正当化する理由は、保険のビジネスモデルとその規制に沿った改訂された分析アプローチを反映している。」と述べた。
NAICはPrudentialのSIFIとしての指定解除を賞賛する
ワシントン(2018年10月17日) - 金融安定監督評議会(FSOC)は、本日、Prudential Insurance Company of America のシステム上重要な金融機関(SIFI)としての指定を取りやめた。全米保険監督官協会(NAIC)は、Prudentialに適用されたSIFI指定プロセスに欠陥があると一貫して主張してきた。
「Prudentialの指定を取り消すという評議会の決定に拍手を送る。この行動は、州の保険規制制度の強化とグループ監督ツールの強化を反映している。」と、NAIC会長兼テネシー州の商業・保険コミッショナーのJulie Mix McPeak氏は述べた。「また、これらのツールを実施し、それらをPrudentialの規制に適用することは、Prudentialのグループ全体の監督当局であるニュージャージー州銀行・保険局の業務であると認識している。」
2010年にドッド・フランクのウォールストリート改革及び消費者保護法が成立して設立されたFSOCは、米国の金融システムに対するシステミックリスクを特定し対応するために設立された。様々な業界の監督者を集めて視点を共有し、セクター間の脅威を特定し対処することを目的としている。しかし、FSOCに対する州の保険コミッショナーの代表は、議決権のあるメンバーではない。
NAICの次期会長兼メイン州の保険監督官のEric A. Cioppa氏は、「指定解除を正当化する理由は、保険のビジネスモデルとその規制に沿った改訂された分析アプローチを反映している。」と述べた。「私の前任者は、保険がどのように規制されているかについて、評議会に教育を行い、保険部門が潜在的なリスクに対処すると主張する優れた職務を果たした。私は、州の保険監督当局を代表し続け、評議会の同僚と一緒に働くことを楽しみにしている。」
9月に、州の保険監督当局は、Cioppa氏をFSOCの州の保険コミッショナーの代表として2年間任命した。Cioppa氏は、評議会において州の保険監督当局の利害を代表する。
5―まとめ
1|米国におけるノンバンクSIFI指定
「2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き」で述べたように、これまでにノンバンクでは、AIG、Prudential、MetLifeの保険会社3社と、GE Capitalの合計4社がSIFIに指定されてきたが、今回PrudentialがSIFI指定から解除されたことにより、これで4社ともSIFI指定が解除されたことになり、結果として米国においては、ノンバンクSIFIは存在しなくなった。
これらのノンバンクのSIFI指定に関しては、PrudentialやMetLifeが、指定プロセスが不透明で整合的でなく、政治的であったと主張してきていた。こうした意見も踏まえて、トランプ政権下では、SIFIの指定基準やその指定プロセスの見直しが検討されてきている。これによれば、特定の会社が提示するリスクを優先させるのではなくて、特定の事業活動がもたらすリスクや業界全体がどのようにリスクをもたらすのかという観点からのアプローチに焦点を当てるようになる。特定の会社をSIFIに指定するためには、当該会社の有するリスクについて、より高い信頼性や確実性を持って、FSOCが説明していくことが求められてくることになる。
その意味では、今回のPrudentialのSIFI指定解除が示しているように、今後のノンバンクのSIFI指定については、少なくとも保険会社を念頭に置いた場合には想定しがたいものとなってくるが、さらにはそれ以外のノンバンクの金融会社についても、そのハードルがかなり高くなっているといえるだろう。
2|国際的なG-SIIs指定への影響
今回のPrudentialのSIFI指定解除を受けて、米国においてSIFI指定されている保険会社は存在しなくなったが、一方で、AIG、MetLife及びPrudentialの3つの保険会社は全て、金融安定理事会(FSB)が指定するG-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルにシステム上重要な保険会社)のリストにとどまっている。
より正確には、FSBは2017年11月21日に、毎年11月に更新していたG-SIIsのリストを公表しないことを決定したが、2016年にG-SIIsに選定された9社については、それまでと同様の政策措置が適用されることになっている。
G-SIIsの指定基準については、現在IAIS(保険監督者国際機構)において、活動ベースのアプローチに基づくシステミックリスクの評価が検討されており、今年の11月には、その時点でのIAISによる活動ベースの開発に関する進展に基づき、状況がレビューされる予定になっている。
これに関連して、昨年のAIGのSIFI指定解除の決定時に、NAIC現会長(当時は次期会長)のJulie Mix McPeak氏は、「FSOCの下での徹底した国内評価の結果、米国のグループがシステミックとはみなされない場合、なぜ国際的な目的でシステミックに残るのかを調整することは難しい。」と述べていた。
もちろん、米国におけるSIFIとFSBによるG-SIIsの指定の考え方等は同一のものをベースにしているわけではないことから、こうした考え方が必ずしも妥当だというわけではない。ただし、こうした意見も踏まえて、IAISによるG-SIIsの指定の検討がどのような形で行われていくことになるのか、さらにはこれを踏まえてFSBがG-SIIsの指定等に関してどのような判断を行っていくことになるのか、は極めて注目されていくことになる。
現在、日本の保険会社において、FSBによりG-SIIsに指定されている会社はなく、また米国と同様の形で、金融庁によってSIFIに指定されている会社もない。ただし、日本の大手保険グループも積極的に海外展開を進めて規模の拡大を図ってきていることや、SIFIやG-SIIsの指定やその規制等が、その他の保険会社の規制等に与える影響も考えられる。
従って、関係者の関心も高いことから、米国におけるSIFIやG-SIIsを巡る動向については、引き続き注視していくこととしたい。
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(2018年10月22日「保険・年金フォーカス」)
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