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- 2017年度生命保険決算の概要
2018年09月07日
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1―保険業績(全社)
2|利差益は逆ざや解消以降最高水準
利差益について、さらに詳しく分析した[図表6]。
2008年度を底として、2012年度まで逆ざやであったものが、2013年度から利差益に回復し、2017年度は6,150億円と回復後最高水準となった。
「平均予定利率」は、過去の高予定利率契約が減少していくことにより、毎年緩やかな低下を続けている。現在、多くの新規契約の予定利率は1%未満であることから、今後もしばらく低下は続くだろう。
一方、「基礎利回り」は、超低金利にもかかわらず、外貨建債券へのシフトなどにより0.07ポイント上昇した。
ただし、現在の経済環境からすると、次年度以降の利差益ひいては基礎利益については、決して楽観できない状況にあるとの見方も強い。
利差益について、さらに詳しく分析した[図表6]。
2008年度を底として、2012年度まで逆ざやであったものが、2013年度から利差益に回復し、2017年度は6,150億円と回復後最高水準となった。
「平均予定利率」は、過去の高予定利率契約が減少していくことにより、毎年緩やかな低下を続けている。現在、多くの新規契約の予定利率は1%未満であることから、今後もしばらく低下は続くだろう。
一方、「基礎利回り」は、超低金利にもかかわらず、外貨建債券へのシフトなどにより0.07ポイント上昇した。
ただし、現在の経済環境からすると、次年度以降の利差益ひいては基礎利益については、決して楽観できない状況にあるとの見方も強い。
3―低金利による各方面への影響
1|標準利率、死亡率の改定の影響
2017年4月の標準利率の引き下げに続いて、2018年4月には、標準死亡率が11年ぶりに引き下げられた。これらは直接には、責任準備金の充分な積立を意図した制度であるが、実際には保険料水準も間接的に影響を受ける。
標準利率の引き下げの際には、多くの会社が保険料を値上げしたので、特に貯蓄性商品は魅力ないものになった。あるいはそれでもなお保険会社の資産運用が追いつかないために、一時的に売り止め、という対応も目立った。このことが、2017年度決算においては新契約・保険料収入の大幅減少、となって現れている。
標準死亡率の引き下げに対しては、これまでの改定時と同様に、既に2018年4月前後の新契約から保険料を値下げした会社もある。その他に、大手を含むいくつかの会社は、今後、健康増進型商品(健康診断の結果や運動などの健康への取り組み状況を、新契約時や契約途中で反映した保険料や還元を行う商品)の発売時にあわせて、死亡率を引き下げるようである。
2017年4月の標準利率の引き下げに続いて、2018年4月には、標準死亡率が11年ぶりに引き下げられた。これらは直接には、責任準備金の充分な積立を意図した制度であるが、実際には保険料水準も間接的に影響を受ける。
標準利率の引き下げの際には、多くの会社が保険料を値上げしたので、特に貯蓄性商品は魅力ないものになった。あるいはそれでもなお保険会社の資産運用が追いつかないために、一時的に売り止め、という対応も目立った。このことが、2017年度決算においては新契約・保険料収入の大幅減少、となって現れている。
標準死亡率の引き下げに対しては、これまでの改定時と同様に、既に2018年4月前後の新契約から保険料を値下げした会社もある。その他に、大手を含むいくつかの会社は、今後、健康増進型商品(健康診断の結果や運動などの健康への取り組み状況を、新契約時や契約途中で反映した保険料や還元を行う商品)の発売時にあわせて、死亡率を引き下げるようである。
2|外債投資、外貨建保険へのシフト
引き続き各社の外債投資は増加する方向にある。収益性も重視して国内株式投資も増加の兆しがあり、これらは運用リスクを高めることになる。
しかし、リスク管理については、顧客・経営層の関心も高まり、手法も高度化してきた。また先に見たように、各種準備金など実質的な自己資本が以前よりも充実しているので、多少のリスクが顕在化しても、ある程度しっかりした対応が可能となっているものと思われる。
販売面では、引き続き外貨建保険の好調が期待されるが、例えば以前の変額保険の例もあるように、今度は為替変動リスクを顧客が負っていることが、悪い形で顕在化しなければいいのだが、と心配されるところでもある。
引き続き各社の外債投資は増加する方向にある。収益性も重視して国内株式投資も増加の兆しがあり、これらは運用リスクを高めることになる。
しかし、リスク管理については、顧客・経営層の関心も高まり、手法も高度化してきた。また先に見たように、各種準備金など実質的な自己資本が以前よりも充実しているので、多少のリスクが顕在化しても、ある程度しっかりした対応が可能となっているものと思われる。
販売面では、引き続き外貨建保険の好調が期待されるが、例えば以前の変額保険の例もあるように、今度は為替変動リスクを顧客が負っていることが、悪い形で顕在化しなければいいのだが、と心配されるところでもある。
(2018年09月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1833
経歴
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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