2018年07月12日

人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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3――物流コスト削減の取組みが物流拠点施策に与える影響

1物流コスト削減の取組み ~物流拠点再編が進む
前章に示した通り、今後も物流コストへの上昇圧力は継続すると見込まれる。一方、企業の物流部門は、常にコスト削減圧力に晒されていることから、有効なコスト削減策を講じる必要がある。

日本ロジスティクスシステム協会が実施した「物流コスト実態調査(2016年版)」によれば、「過去1年間に実施した物流コスト削減策の内、効果が大きかった削減策」(図表-17・左グラフ)、「今後1年間に実施予定の削減策」(図表-17・右グラフ)ともに、「物流拠点の見直し(廃止・統合・新設)」との回答が最も多かった。数あるコスト削減策の中で、配送効率の向上や人件費・保管料の削減等が期待できる「物流拠点の見直し(再編)」は、最も効果が大きいと考えられている。
図表-17 物流コスト削減策の効果(回答数が多かった上位5項目)
既に、物流拠点の集約・統合等を実施した企業も見られる(図表-18)。大手家具販売の大塚家具は、首都圏で2ヶ所運営していた物流拠点(「横浜サービスセンター」と「青梅サービスセンター」)を「横浜サービスセンター」に統合し、物流施設のオペレーションに必要な人員と輸送費を削減した。また、学校教材等を取り扱う出版社の教育同人社は、配送業務と商品管理の効率を高めることを目指し、埼玉県で2ヶ所運営していた物流拠点(「東松山流通センター」と「嵐山流通センター」)を大手物流施設開発事業者のプロロジスが運営する大規模賃貸施設「プロロジスパーク吉見」(埼玉県比企郡吉見町)に統合した。大手IT機器販売の大塚商会は、関西圏の各地に点在していた物流拠点を「西日本物流センター」(大阪市西淀川区)に集約した。その際には、省人化や入出荷スピード向上を図るため、大規模な商品搬送設備(全長3,600m)や自動梱包機、等を導入した。

今後も物流コストの削減への圧力が続く中で、物流拠点の再編を行う企業は増加すると見込まれる。
図表-18 物流拠点再編の事例
2物流拠点再編の方向性
以下では、今後、進展が見込まれる物流拠点再編の方向性について、(1)拠点再編の可能性が高い業種、(2)拠点再編の可能性が高いエリア、(3)(同一エリア内での)立地選好の変化、の3つの観点で考察する。

(1) 拠点再編の可能性が高い業種は、「卸売業」
コスト削減を意図した物流拠点再編の可能性が高い業種の1つに「卸売業」を挙げることができる。

日本ロジスティクスシステム協会が2017年12月に公表した「物流コスト実態調査(2017年速報版)」によれば、「卸売業」の売上高物流コスト比率(連続回答企業に限定)は5.22%となり、前回調査(4.96%)から大きく上昇した(図表-19)。また、日通総合研究所が発表している「物流コストの動向指数」においても、「卸売業」の指数は、製造業と比べて高い水準で推移しており、コスト上昇圧力が強い状況にある(図表-20)。
図表-19 売上高物流コスト費の現状/図表-20 物流コストの動向指数(業種別)
「卸売業」の物流拠点は、メーカー(製造業)から仕入れた大量の商品を小売業からの要請に応じて仕分けし、小売業の配送拠点もしくは販売店舗に直接配送する役割を担っている(図表-21)。そのため、トラックの往来が頻繁で、かつ施設内で仕分け作業等に携わる人が多いことから、配送コストおよび荷役コスト上昇の影響を強く受ける。

また、前章で示した人手不足の解消に向けた物流施設の自動化・機械化等の取組みも物流拠点再編を後押しすると思われる。例えば、規模の小さい物流拠点では、「卸売業」が担うことが多い仕分けやピッキング等の作業に、自動仕訳機の導入やピッキング作業をサポートするロボット等を導入することは難しい。そのため、物流施設の自動化・機械化を機に、複数の物流拠点を大規模物流拠点に統合することも考えられる。物流コストが下がりにくい状況も相まって、「卸売業」では今後、物流拠点再編が進む可能性は高い。
図表-21 「卸売業」の物流拠点の役割
(2) 拠点再編の可能性が高いエリアは、「東京区部内陸」と「横浜市」
それでは、「卸売業」の物流拠点再編は、どのエリアで進むだろうか。以下では、「卸売業」の物流拠点が集積しているエリア(注)について、確認したい。

図表-22は、東京都市圏交通計画協議会「第5回東京都市圏物資流動調査」のデータに基づき、東京都市圏における物流拠点数を示したものである。業種別拠点数(図表-22・左グラフ)にみると、「卸売業」の物流拠点数(6,587拠点)は、運送業(7,474拠点)に次いで多い。また、「卸売業」に関してエリア別にみると(図表-22・右グラフ)、「東京区部内陸」(935拠点)が最も多く、「埼玉南部」(847拠点)、「東京区部臨海」(604拠点)、「千葉西北部」(547拠点)、「群馬南部」(507拠点)、「横浜市」(456拠点)にも多くの物流拠点が立地している。

また、物流業務の高度化が進む中で、(築年数が経過した)旧仕様の物流拠点も見直しの対象になりやすいと考えられる。
図表-22  東京都市圏における物流拠点数 
図表-23は、東京都市圏交通計画協議会が実施した「第5回東京都市圏物資流動調査」の「物資流動データ」に基づき、1979年以前に開設した拠点の占める割合を示したものである。1979年以前に開設した施設の占める割合は、東京都市圏全体で26%となっている。(図表-23・左グラフ)。業種別割合にみると、「卸売業」の割合は、32%と最も高い。「卸売業」は他業種と比較して、築年数の経過した物流拠点を多く保有していることが分かる。
更に、「卸売業」(エリア別)にみると(図表-23・右グラフ)、「東京区部内陸」、「横浜市」、「千葉市」、「茨城中部」では、1979年以前に開設した物流拠点が占める割合は40%以上を占めている。

上記で示したエリア別物流拠点数と合わせて考えると、「東京区部内陸」と「横浜市」には、「卸売業」が保有する築年数が経過した多くの物流拠点が現存していると推察される。これらのエリアでは、今後、物流拠点再編が進む可能性が特に高いと思われる。
図表-23 1979年以前に開設した物流拠点の占める割合
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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