- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要
人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要
金融研究部 主任研究員 吉田 資
このレポートの関連カテゴリ
3――物流コスト削減の取組みが物流拠点施策に与える影響
前章に示した通り、今後も物流コストへの上昇圧力は継続すると見込まれる。一方、企業の物流部門は、常にコスト削減圧力に晒されていることから、有効なコスト削減策を講じる必要がある。
日本ロジスティクスシステム協会が実施した「物流コスト実態調査(2016年版)」によれば、「過去1年間に実施した物流コスト削減策の内、効果が大きかった削減策」(図表-17・左グラフ)、「今後1年間に実施予定の削減策」(図表-17・右グラフ)ともに、「物流拠点の見直し(廃止・統合・新設)」との回答が最も多かった。数あるコスト削減策の中で、配送効率の向上や人件費・保管料の削減等が期待できる「物流拠点の見直し(再編)」は、最も効果が大きいと考えられている。
今後も物流コストの削減への圧力が続く中で、物流拠点の再編を行う企業は増加すると見込まれる。
以下では、今後、進展が見込まれる物流拠点再編の方向性について、(1)拠点再編の可能性が高い業種、(2)拠点再編の可能性が高いエリア、(3)(同一エリア内での)立地選好の変化、の3つの観点で考察する。
(1) 拠点再編の可能性が高い業種は、「卸売業」
コスト削減を意図した物流拠点再編の可能性が高い業種の1つに「卸売業」を挙げることができる。
日本ロジスティクスシステム協会が2017年12月に公表した「物流コスト実態調査(2017年速報版)」によれば、「卸売業」の売上高物流コスト比率(連続回答企業に限定)は5.22%となり、前回調査(4.96%)から大きく上昇した(図表-19)。また、日通総合研究所が発表している「物流コストの動向指数」においても、「卸売業」の指数は、製造業と比べて高い水準で推移しており、コスト上昇圧力が強い状況にある(図表-20)。
また、前章で示した人手不足の解消に向けた物流施設の自動化・機械化等の取組みも物流拠点再編を後押しすると思われる。例えば、規模の小さい物流拠点では、「卸売業」が担うことが多い仕分けやピッキング等の作業に、自動仕訳機の導入やピッキング作業をサポートするロボット等を導入することは難しい。そのため、物流施設の自動化・機械化を機に、複数の物流拠点を大規模物流拠点に統合することも考えられる。物流コストが下がりにくい状況も相まって、「卸売業」では今後、物流拠点再編が進む可能性は高い。
それでは、「卸売業」の物流拠点再編は、どのエリアで進むだろうか。以下では、「卸売業」の物流拠点が集積しているエリア(注)について、確認したい。
図表-22は、東京都市圏交通計画協議会「第5回東京都市圏物資流動調査」のデータに基づき、東京都市圏における物流拠点数を示したものである。業種別拠点数(図表-22・左グラフ)にみると、「卸売業」の物流拠点数(6,587拠点)は、運送業(7,474拠点)に次いで多い。また、「卸売業」に関してエリア別にみると(図表-22・右グラフ)、「東京区部内陸」(935拠点)が最も多く、「埼玉南部」(847拠点)、「東京区部臨海」(604拠点)、「千葉西北部」(547拠点)、「群馬南部」(507拠点)、「横浜市」(456拠点)にも多くの物流拠点が立地している。
また、物流業務の高度化が進む中で、(築年数が経過した)旧仕様の物流拠点も見直しの対象になりやすいと考えられる。
更に、「卸売業」(エリア別)にみると(図表-23・右グラフ)、「東京区部内陸」、「横浜市」、「千葉市」、「茨城中部」では、1979年以前に開設した物流拠点が占める割合は40%以上を占めている。
上記で示したエリア別物流拠点数と合わせて考えると、「東京区部内陸」と「横浜市」には、「卸売業」が保有する築年数が経過した多くの物流拠点が現存していると推察される。これらのエリアでは、今後、物流拠点再編が進む可能性が特に高いと思われる。
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1861
ソーシャルメディア
新着記事
-
2022年05月27日
2022年4~5月の自社株買い動向~発行済株式総数に対する割合と株価の関係~ -
2022年05月27日
2022年度診療報酬改定を読み解く(下)-医療機能分化、急性期の重点化など提供体制改革を中心に -
2022年05月27日
中国経済の見通し-岐路に立つコロナ政策、22年は4.2%と予想も、下方リスクが燻ぶり、ポジティブ・サプライズもあり得て、目が離せない -
2022年05月26日
欧州大手保険Gの2021年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- -
2022年05月26日
Japan’s Economic Outlook for Fiscal 2022 and 2023 (May 2022)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2022年05月17日
News Release
-
2022年04月21日
News Release
-
2022年04月04日
News Release
【人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要のレポート Topへ