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- ブラジル経済の見通し-1-3月期GDPは前期比プラス成長も、停滞感が見られる内容
1-3月期の政府消費は前期比0.4%減となった。年金改革法案の採決は次期政権に先送りされることになった結果、今後、政府はさらなる歳出削減を余儀なくされており、景気に水を差すだろう。
政府は2014年の財政悪化に伴い、緊縮的な財政政策によって歳出を抑制してきたが、政府消費のGDPに占める割合が2割にも満たないことに加えて、ここ数年の政府消費は横ばいもしくは微減で推移してきたことから、GDPの押し下げ幅は限定的であった。しかし、2018年中の年金改革法案の採決が先送りされたため、政府は2018年からさらなる歳出削減を余儀なくされることになった。社会保障院を含めた中央政府の2018年の財政赤字目標を達成するためには、1000億レアル近い財源確保が必要と見られており、これは2017年の名目政府消費の約6~7%にも相当する。政府は、歳入の増加に向けて国営企業の民営化やコンセッション方式の入札により臨時歳入を拡大しており、必ずしもこの規模の歳出削減が必要となるわけではないが、これまで以上の歳出削減が必要となるのは間違いないだろう。
1-3月期の総固定資本形成8は前期比0.6%増と前期の同2.1%増から減速したが、これは前期と前々期(同2.0%増)の伸び率が高かったことによる反動であり、依然として回復基調は継続している。今後は、金融緩和の打ち止めによって、貸出金利が下げ止まることが予想されるため、民間部門の投資に水を差すことも考えられる。しかし、コンセッション方式のインフラ投資プログラムの効果が徐々に顕在化すると考えられ、総固定資本形成全体としては堅調に推移するだろう。ただし、前述のストの影響で4-6月期の総固定資本形成は一時的に大きく落ち込むことが予想される。
中央銀行が政策金利の引下げを継続してきた結果、銀行の貸出金利は、17年初から低下傾向が続いていたが、足元では家計向けを中心に下げ止まりの兆しが見られる(図表9)。住宅市場では、景気後退による住宅価格の下落と、貸出金利の低下によって、住宅需要が堅調に推移してきたが(図表10)、貸出金利の下げ止まりによって、需要が縮小することも考えられる。
8 総固定資本形成の内訳は公表されていない。
純輸出の寄与度は前期比▲0.2%ポイントと3四半期連続のマイナスとなった。今後はトランプ政権による保護主義的な貿易政策が懸念材料となるが、それ以外は大きなプラス要因もマイナス要因もないため、純輸出の寄与度は0.0%ポイント前後で推移すると見られる。
通関ベースで見ると、18年1-4月の輸出総額は完成品を中心に前年を上回った(図表12)。地域別ではEUや中南米向けが好調であった(図表13)。また、同期間の輸入総額は資本財や消費財が牽引役となり、前年を上回った。貿易収支は、統計開始以来最大の黒字水準に達した2017年の同時期を下回っているが、黒字幅は依然として大きい。
3――物価・金融政策等の動向
為替は14年半ばから15年にかけて財政赤字の拡大や国営石油公社ペトロブラスを巡る汚職発覚等の内部要因と米国の利上げ観測の高まりや資源価格の下落といった外部要因によって、大きくレアル安が進行した。16年にはテメル新政権への期待や、米国の利上げ観測の後退と資源価格の上昇によってレアル高に転じ、17年には3.1レアル/米ドルから3.3レアル/米ドル周辺で安定的に推移した。しかし、米国の金利上昇に伴い、大幅なレアル安が進行しており、18年5月の平均為替レートは3.6レアル/米ドルと18年年初から15%近くも下落した (図表14)。これに対して、中央銀行は通貨スワップの規模を拡大し、為替介入を行った結果、レアルは反発している。
しかし、今後は、米国の利上げが続く9と予想されることに加えて、大統領選挙の情勢において改革路線後退の見通しが強まることも考えられ、レアル安はさらに進行するだろう。18年平均は3.6レアル/米ドルと予想する。
9 当研究所では、18年は年4回ペースの追加利上げを予想している。
インフレ率(IPCA)は、15年にレアル安による輸入物価の上昇や天候不良による食料品の価格高騰、公共料金の値上げ等によって大きく上昇したが、16年以降はこれらの要因が徐々に解消されたため、大きく鈍化した。特に、17年7月から足元の18年4月にかけて、インフレ率は、目標下限である3.0%を下回っている。
中央銀行は、インフレ率の鈍化を背景に16年10月から18年3月にかけて12会合連続の利下げを行い、政策金利(Selic)は14.25%から過去最低の6.5%となった。しかし、5月のCopom(金融政策決定会合)では、市場の予想に反して利下げを見送り、政策金利を据え置いた。これは、先述の米国金利の上昇に伴うレアル安の進行を警戒しての判断と見られる。新興国の中には、隣国のアルゼンチンやトルコなど通貨防衛のために利上げを実施する国が見られることや、2014年半ばからのレアル安に伴うインフレ率の急上昇が15年・16年の景気後退を招いたこともあって、中央銀行は据え置きを選択せざるを得なかったと見られる。
今後は、米国の利上げ観測を踏まえると、追加緩和には踏み切れず、当面は金利を据え置くことが予想される。そして、先の為替レートと物価次第では今年中に利上げへと転換することも考えられる。18年末の政策金利は6.75%と1段階の利上げを予想する。
なお、利上げとなった場合は、景気に水を指すことが予想されるが、14年当時と比較すると、足元のインフレ圧力が弱いことや利上げの余地が残されていることから、15年・16年のような景気後退にまで陥る可能性は低いだろう。
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(2018年05月31日「基礎研レター」)
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