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外国人就労の現状と課題-将来の経済基盤を考える

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
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1――外国人就労の拡大を検討中
1 2018年4月11日(日本経済新聞社)
2――外国人就労の実態
外国人労働者の現状は、厚生労働省のデータから確認できる。2017年10月末時点における外国人労働者数は127.9万人(前年比+18.0%)と過去最高を記録している(図表1)。在留資格別には、資格外活動、技能実習、特定活動で就労者数の伸びが大きい。外国人労働者に占める割合については中国が全体の29.1%を占めて最大である。一方、増加率で見るとベトナムが前年比+39.7%と最大だ(図表2)。産業別には製造業の就労者数が全体の30.2%を占めて最大である(図表3)。近年の傾向としては、建設業、運輸業、宿泊業などで就労者数の拡大が続いている(図表4)。また、外国人労働者を雇用している事業所数も過去最高の19.5万事業所を記録した。前年比+29.4%の伸び率を記録した建設業をはじめ卸売業および小売業でも同+13.6%と増加している。規模別には30人未満の事業所が11.2万事業所と最も多く、事業所数の増加率も同+14.2%と最大であった。

日本銀行(日銀)の全国企業短期経済観測調査によると各産業の雇用環境は、建設、運輸・郵便、宿泊・飲食サービスなどのサービス産業において人手不足感が強まっているようである(図表5)。これら人手不足感の強い産業と外国人就労が拡大している産業を比較すると、両者はぴったりと一致するように見える。実際、これらの産業には、近年増加の著しいベトナム人労働者やネパール人労働者が流入している。厚生労働省の統計データによると、各産業におけるベトナム人労働者の外国人労働者に占める割合は、建設業で42.5%、宿泊業・飲食サービス業で23.5%、各産業で主要な労働力となっている。また、ネパール人労働者については、外国人労働者に占める割合は5.4%に過ぎないものの、その半分近くが卸売業・小売業または宿泊業・飲食サービス業で就労している。両国の労働者が保有する就労資格のほとんどは、技能実習または資格外活動だ。その割合はベトナム人労働者で86.1%、ネパール人労働者で81.6%とそれぞれ8割強に達している。
外国人労働者が日本で働くためには、一定の条件を満たす必要がある。在留資格別の就労規制を図表6にまとめた。日本には在留資格が28種類あるが、そのうち就労目的で取得される資格(いわゆる就労ビザ)に該当するものは18種類ある。この就労ビザによる就労範囲は在留資格ごとに定められているため、それ以外の仕事に就くことはできない。就労制限の無い在留資格は、永住者や日本人の配偶者などの身分に基づく在留資格だけである。法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動(外交官等の家事使用人やワーキングホリデー等)にだけ許可を与える特定活動という在留資格も存在する。留学や家族滞在など5種類の在留資格には、原則就労が認められていない。ただし、資格外活動の許可を受けることにより、アルバイトやパートとして就労することは可能である。なお、この資格外活動や技能実習の資格は、単純労働の実質的な受け皿になっているとも言われており、ベトナム人労働者やネパール人労働者の流入する人手不足産業において、両国の労働者が単純労働に従事している実態があることを示唆するものとなっている。
(2018年05月21日「基礎研レター」)

03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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