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- 中国経済の現状と今後の注目点~米中貿易摩擦は中国の債務問題を深刻化させる恐れ!
2.今後の注目点
米国と中国の貿易摩擦が深刻化してきた。まず、米国が安全保障上の脅威を理由に通商拡大法232条に基づく追加関税(鉄鋼25%、アルミ10%)を3月23日に発動、中国はそれに対抗して追加関税(ナッツ類やワインなど15%、豚肉など25%)を4月2日に発動した。さらに、米国は中国による知的財産権の侵害に対する制裁措置として通商法301条に基づく追加関税(1300品目、500億ドル、税率25%)を4月3日に発表、中国はそれに対抗しての追加関税(106品目、500億ドル、税率25%)を4月4日に発表した。そして4月5日、トランプ米大統領が通商法301条に基づく1000億ドルの積み増しの是非を米通商代表部(USTR)に指示したと発表、米国が追加関税商品リストを発表すれば中国も対抗措置をとる構えを見せた。しかし、4月10日に中国の習近平国家主席が博鰲(ボアオ)で対外開放に関する4つの重大措置((1)外資参入規制を緩和、(2)外資投資環境を改善、(3)知的財産権の保護を強化、(4)輸入を主体的に拡大)を発表すると、トランプ米大統領は「習氏の温かい言葉に感謝する」と応じ、米中の関税引き上げ合戦は収束に向かうかと見られた。ところが4月16日、米商務省産業安全保障局(BIS)は中国通信機器メーカー大手の中興通訊(ZTE)が米国の制裁処置に違反してイランや北朝鮮に通信機器を輸出していた問題に関して虚偽の説明をしていたとしてZTEに対し米国製品の購入権を7年間禁じる命令を下した。これを受けて、中国商務省の報道官は「我々はあくまでの戦う」と表明、米国と中国の貿易摩擦は情報技術(IT)を巡る覇権争いの様相も帯びてきた。
このまま米中貿易摩擦がエスカレートしていくと、中国にとっては対米輸出で不利な立場になるだけでなく、後述の「過剰債務問題」にも悪影響が及ぶ恐れがあり、さらにITで出遅れれば製造強国を目指す「中国製造2025」の障害ともなりかねないだけに、今後の成り行きが注目される。
中国では、BAT(百度、阿里巴巴、騰訊)を代表とするプラットフォーム企業が中国経済を牽引し始めている。中国ではネット販売が急増、小売売上高に占めるネット販売の比率は10年前の数%からいまや20%前後に達した。ネット販売とともにスマホ決済が普及したことで利便性が高まり、新たな消費需要を喚起している。こうした動きがビジネスチャンスを生み出したことで17年の起業は1割近く増加した。また、ネット販売の急増に伴って、物流網の整備が進み、前述の過剰生産設備の削減で余った雇用の受け皿ともなった。さらに、中国政府が15年に打ち出した「インターネット+」がこれを後押ししており、都市部だけでなく農村部にもネット販売が波及して農村部で消費ブームを起こすとともに、農村部の食料品や手工芸品を、インターネットを通じて都市部へ提供するビジネスも盛んになり、農村部の活性化にも一役買っている。このように「インターネット+」は消費需要を喚起しただけでなく、新たな投資や起業を促すことにも結び付いて、債務と生産設備の同時調整に追われる中国経済に新たな風を吹きこんでいる。そして、それを牽引した中国プラットフォーム企業の株価は急上昇、15年夏に急落する前の高値を大きく超えている(図表-15)。中国プラットフォーム企業の隆盛がもたらした好循環は今後も続くのか要注目である。
17年5月、中国は「一帯一路」国際協力サミットフォーラムを開催、100ヵ国以上の約1500人が参加、イタリア、ロシア、インドネシアなど29ヵ国の元首が集まった。「一帯一路」は長期的視野に立った構想であり、中国からその沿線国への輸出や投資はまだそれほど大きくない。しかし、「一帯一路」沿線国との貿易は全体を上回る伸びを示しており、中国と沿線国とを結ぶ鉄道・道路・パイプライン・海路・空路・宇宙のいわゆる「六路」の整備が進むに連れてさらに増えるだろう。また、電力や上下水道などインフラの整備が進んでいけば、製造拠点を「一帯一路」沿線国の海外経済貿易協力区(工業団地など)へ移すことが可能となり、生産設備の輸出や中国人労働者の雇用も増える。さらに、中国プラットフォーム企業にとっても「一帯一路」は活動範囲を広げる上で大きなチャンスとなる。中国プラットフォーム企業は“内弁慶”と言われるように中国国内の売上では市場を支配したものの、海外展開はまだ始まったばかりだ。「一帯一路」構想が今後どんな展開を見せるのか注目しておきたい。
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三尾 幸吉郎
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(2018年04月27日「Weekly エコノミスト・レター」)
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