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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(5)
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1―はじめに
基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(1)」(2018.3.26)では、全体概要とEIOPAによる助言のうちの保険引受けリスクに関係する項目について報告した。また、2回目と3回目の基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(2)」(2018.3.28)及び「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(3)」(2018.4.2)では、この第2の助言セットについて、そのEIOPAによる助言のうちの資産運用に関係する項目について報告した。さらに、4回目の基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(4)」(2018.4.5)では、保険引受けリスク及び資産運用関係以外の項目について報告した。
今回のレポートでは、今回の助言内容のベースとなった影響評価の内容の一部を報告するとともに、今回の助言を受けての保険業界団体の反応や今後の動向等について報告することとする。
1 プレスリリース:https://eiopa.europa.eu/Publications/Press%20Releases/EIOPA%20recommends%20further%20simplifications%20to%20the%20calculation%20of%20insurers%27%20capital%20requirements.pdf
報告書:https://eiopa.europa.eu/Publications/Consultations/EIOPA-18-075-EIOPA_Second_set_of_Advice_on_SII_DR_Review.pdf
2―今回の助言による影響評価
金利リスクについては、オプション1(変更無し)とオプション2(低及びマイナスの金利を反映するように方法を変更する)の2つのオプションについて、コストベネフィット分析を行い、オプション2が「手法、前提及びパラメータが適切なままであることを保証するという目的に適合している」ことから、優先されるオプションであるとしている。
なお、オプション2のベネフィットとコストに関しては、以下のように記述されている。
2442.ベネフィットの面では、以下の効果を検出することが可能
・保険契約者 - 低利回り環境における金利リスクに対するよりリスク感応度が高い方法論により、リスク管理が促進され、保険契約者にとって有益となる。
・業界 - リスク管理の観点から、調整された方法論は、低利回り環境でよりリスク感応度が高い結果を提供し、その結果、会社のリスクプロファイルをよりよく把握する。複雑さの観点からは、この方法論は比較的単純で透明なままであるため、変更された方法論は複雑さに関して会社に余分な負担を生じさせない。
・監督者 - 金利リスクのSCRは、低及び中位の利回り環境で過小評価されないことがより確実である。
2443.コストの面では、以下の効果を検出することが可能
・保険契約者 - なし
・業界 - 主なコストは、会社が金利リスクのために保有する必要がある資本要件の増加の可能性が高いこと
・監督者 - なし。金利リスクモジュールの理解、特に監督はより複雑にはならない。
2 これらのアプローチの具体的内容については、基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(2)」(2018.3.28)を参照していただきたい。
第1ステップ
EIOPAは、年次QRT(定量的報告テンプレート)データを使用して影響評価を行うが、いくつかの制限がある。実際、負債のキャッシュフローは提供されているが、負債のキャッシュフローが金利に依存する場合の影響を評価することはできず、資産のキャッシュフローは提供されていない。資産側では、デュレーションを使用して近似を行うことができる(委任規則第103条参照)。この影響評価は、負債のキャッシュフローが金利に依存しない場合の会社に関連している。範囲は損害保険会社に限定されている。
第2ステップ
EIOPAは、負債のキャッシュフローが金利に依存する(すなわち、有配当事業)会社に関する情報要求を行った。
ここでは、第2ステップの定量的な影響評価の概要を報告する。
(1) 参加会社とその代表性
275の会社、これらの会社のキャッシュフローは金利感応的であり、そうした会社の標準式適用会社の最良推定値のうちの少なくとも50%を代表している。
なお、国によって代表性は異なり、最良推定値ベースで、13カ国ではサンプルが2/3を超えており、9カ国では80%を超え、全ての生命保険会社が参加している1カ国がある。
(2) 評価手法等
シフトアプローチについては、線形近似を使用している。
最終的な影響については、10年満期のデュレーションに基づいて、推定評価している。
低利回り環境の国と高利回り環境の国(ポーランド・ズロチ、ハンガリー・フォント、ルーマニア・レウ)を区別している。
(3) 各種アプローチによるSCR比率への影響
結果は、下記の図表の通りである。
低利回り環境の国では、提案Aによる影響が33%ポイントで最も大きく、次が提案Bで22%ポイント、シフトアプローチでは14%ポイントとなっている。高利回り環境の国では、どのアプローチでも影響は7%ポイントとなっている。
SCR比率違反(SCR比率が100%未満)については、
・提案Aでは、15の会社(サンプルの5%)
・提案Bでは、8社(サンプルの3%)
・シフトアプローチでは、4社(サンプルの 2%)で、これらの会社の標準式による平均SCR比率は109%が94%に低下する。これらの会社がSCR比率の100%を維持するためには、75百万ユーロが必要となる。
なお、サンプル会社のSCR比率への影響の分布は、下記の図表の通りとなる。左の図表が絶対的な水準変化(%ポイント)、右の図表が相対的な水準変化(%)を示している。
ここに、黒点はメディアン(中央値)、青いボックスは25パーセンタイルから75パーセンタイルを示し、黒い線が10パーセンタイルから90パーセンタイルを表している。
(2018年04月09日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
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