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「勘違い」と「わからない」の違い-金融と生命保険に関するリテラシーの多様性を考慮した分析

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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他のクラスも同様に見ると、クラス2(金融が不明)はクラス1とは逆に、「かなり詳しい」~「どちらともいえない」の各比率は有意に少なく、「まったく詳しくない」は有意に多い。また、クラス5(生命保険も金融も不明)では、「まったく詳しくない」が約半数を占める。またクラス3と4は、全体と有意な違いが見られなかった。
この結果から、客観的なリテラシーを計測する設問で金融について不明と答える人(クラス2と5)は、主観的にも金融や生命保険について詳しくないと自覚している傾向が読み取れる。一方で、誤解している人(クラス3)はもちろん、金融については何らかの知識があるものの生命保険について不明と答える人(クラス4)も、生命保険に対するリテラシーの低さをそれほど自覚していない(全体と変わらない)傾向が見られる。
12 主観的なリテラシーを投入する場合は、どのような潜在変数を仮定するかやどのような形で投入するかなどを検討する必要があるため、今回の分析では投入を見送った。今後の課題としたい。

金融・保険リテラシーは、年齢を重ねると経験を積む、学歴が高いと理解力がある、収入が高かったり子どもがいると資産形成や死亡保障を考えがち、という理由で高まる可能性がある。そこで、分類結果と客観的な属性との関係を見るために、各属性における各クラスの構成比と全体(最右列)の構成比とを見比べる。
図表11を全体的に眺めると、数字が灰色の箇所、つまり全体(最右列)の構成比と有意な差がない箇所が多いことが読み取れる。このことから、分類結果と客観的な属性とには、あまり強い関係が見られないことがうかがえる。
有意に差がある箇所を取り上げると、クラス5(生命保険も金融も不明)は、65~69歳の人や、最終学歴が高校の人、本人の年収を答えなかった人、未婚の人、が全体と比べて多い傾向が見られた13。クラス2(金融が不明)は、女性や65~69歳の人が全体と比べて多く、最終学歴が高校の人や本人の年収が100万円未満の人もやや多い傾向が見られた。一方、クラス1(全般的に正答)は、最終学歴が大学の人や本人の年収が700~1000万円の人が多い傾向が見られた。
この結果を見ると、金融・保険リテラシーが高い人では大学卒業者や年収が高い人が全体と比べて多い傾向や、不明が多い人では最終学歴が高校の人や未婚の人が全体と比べて多いという傾向は、事前の想定どおりだった。一方、想定に反して、年齢には強い傾向がなく、むしろ不明が多い人には65~69歳が多い傾向が見られた。
13 18~19歳が多いなどの傾向も見られるが、全体での比率が少なめなので、割愛した。以下同じ。

金融・保険リテラシーが高いと、住宅購入や子どもの教育などのライフイベントや死亡などの経済的不安に対して準備できる可能性がある。また逆に、ライフイベントや不安に向けて準備する際に、リテラシーを獲得することも考えられる。
クラス1(全般的に正答)は、将来の具体的な生活設計を立てたり、ライフイベントや不安への経済的準備をある程度できている割合が、全体より多い。具体的行動としても、個人年金へ加入したりや有価証券で経済的リスクに備えている傾向が見られる。
一方、クラス5(生命保険も金融も不明)は、具体的な生活設計に「わからない」、ライフイベントに「考えていることはない」、不安に「特に不安はない」と回答する割合が、全体より多い。具体的行動としても、生命保険への加入や預金での経済的リスクへの備えを行っていない割合が、全体より大幅に多い。
他のクラスでは、明確な関係はほとんど見られなかった。
以上の結果から、事前の想定どおり、金融・保険リテラシーの高さと経済的準備には関連があると言えよう。また、生命保険も金融も不明なことと経済的準備の意識や行動が不十分なこととの関連も見られる。他方、誤答している人(クラス3)や、金融か生命保険の一方にだけ不明と答える人(クラス2と4)は、全体との違いが見られなかった。
(2018年03月28日「基礎研レポート」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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