2018年01月09日

EIOPAが2016年SFCR(ソルベンシー財務状況報告書)に関する分析結果を公表

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1―はじめに

ソルベンシーII制度の下で2016年に初めて作成・公表されたSFCR(Solvency and Financial Condition Report:ソルベンシー財務状況報告書)については、EIOPA(欧州保険年金監督局)が分析を行っていたが、EIOPAは、2017年12月18日に、(再)保険会社及びグループによるSFCRについての最初の監督上の経験に関する分析結果である「EIOPAの監督声明:ソルベンシーII:ソルベンシー財務状況報告書」1を公表した。

今回のレポートでは、この監督声明の内容について報告する。  

2―今回の監督声明の概要

2―今回の監督声明の概要

この章では、EIOPAのプレスリリース資料2及び監督声明の中のエグゼクティブサマリー等に基づいて、今回の監督声明の概要を報告する。
1|今回の監督声明の位置付け
EIOPAは、(再)保険会社及びグループのSFCRの分析に基づいて監督声明を発表している。

この声明は、(再)保険会社及びグループによるSFCRのソルベンシーII規則の適用に関する最初の監督上の経験の分析の結果を概説している。

この声明の目的は、公開された2016年のSFCRのEIOPAの評価とEEA(欧州経済地域)におけるNSAs(国家監督当局)によって収集された2016年のグループと単体のSFCRに関する観察に基づいた発見や改善すべき領域を提示することで、SFCRの将来の開示を改善することである。
2|SFCRについて
2017年に、(再)保険会社及びグループは、2016年の結果に基づいてSFCRを初めて公表しなければならなかった。これらは、多くのステークホルダーから期待され、開示主体によって注意深く処理された。

SFCRは毎年発行されなければならず、欧州議会及び理事会の指令2009/138/EC(「ソルベンシーII指令」)の第51条、第53条、第54条及び第256条の下で規制されている。さらに、委員会委任規則(EU)2015/352(「委任規則」)第290条から第298条及び第359条及び第365条は、さらなるSFCR関連規則、特にその構成について規定している。
3|今回の調査分析に対するEIOPAの考え方
今回のEIOPAの評価は、EEAの(再)保険会社及びグループによって公開された2016 SFCRのサンプルの分析及びEEAにおけるNSAsによって収集された2016年のグループと単体のSFCRに関する観測からの観察に基づいている。

分析とこの声明は、SFCRに関して特定された全ての問題を捉えたり、SFCRの内容に完全に対処するつもりはない、としている。この声明は、来年度のSFCRの内容の開発において、ステークホルダーをサポートする第一歩として重要とみなされる主要分野のみに焦点を当て、市場規律を達成することを可能にする、ことを目的としている。

ソルベンシーII指令及び委任規則の下で(再)保険会社及びグループによって公開されたSFCRの重要性を考慮して、EIOPAはそれらの精査を行った。ソルベンシーIIの枠組みは、3つの主要な柱の上に構築されているが、その中で、監督当局及び市場への透明性の高さが求められている。ソルベンシーII制度はもはや会計上の認識に基づいていないため、財務諸表は会社のソルベンシー及び財務状況を評価するのに適しておらず、時にはSFCRはこれまでのエンベデッドバリューに関する開示を置き換えている。

法的に規定されたSFCRの適用範囲は包括的であり、広範囲のソルベンシーII分野をカバーしている。 EIOPAは、SFCRが目的適合的な情報に重点を置くべきであるとの意見を述べている。SFCRの完全性は、その量によって評価されるべきではなく、会社のソルベンシー及び財務状況を証拠化するために含まれる情報の妥当性、明瞭性及び有用性によって評価されるべきである、としている。

発行されたSFCRを分析する際、EIOPAは、各EU加盟国及び各EEA EFTA国3におけるNSAsとの活発な対話を維持し、様々な利害関係者の視点も考慮した。

EIOPAは、市場規律は時間とともにのみ達成できることを認識し、(再)保険会社及びグループが、公開されたSFCR間の相違点を分析し、2017年SFCRの改善領域を分析することを期待している。この目的のために、EIOPAは、2017年SFCRの開示を計画する際に、SFCRの内容に関する監督上の期待を市場に指導することが重要である、と考えている。
 
3 アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー
4|今回の監督声明で示された重要な調査結果及び改善領域の概要
EIOPAの分析によれば、大半の報告書は時間通りに公表され、一般的にソルベンシーIIの要件に準拠している。殆どの報告書は、企業のウェブサイト上で簡単に入手できた、としている。

しかし、EIOPAは、将来の報告内容の質に関して、さらなる改善が必要な領域として、以下の項目を特定している。

・目的に適合したより多くの要約
・リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)に関する会社/グループ固有の情報
・様々なシナリオやストレスに対するリスク感応度に関するより構造化されたより包括的な情報
・資産、負債及び技術的準備金の評価及び評価に関する不確実性への対処に使用される基礎、方法及び主な前提に関するさらなる関連情報
・適格自己資本に関するさらなる包括的な情報

EIOPAは、将来の報告書の作成において、(再)保険会社及びグループに対し、比例原則を考慮した監督声明に記載された勧告を考慮することを奨励している。

また、来年(2018年)の報告書においては、比較情報の提供を初めて要求することになるため、強制的な分野に対する期待とこの情報を報告書にどのように提示すべきかを概説している。

 (参考)EIOPAのプレスリリース資料

EIOPAは、最初のソルベンシー及び財務状況報告書を分析し、改善すべき分野を特定している

今日、欧州保険年金監督局(EIOPA)は、(再)保険会社及びグループのソルベンシー及び財務状況報告書(SFCR)の分析に基づいて監督声明を発表した。この声明の目的は、これらの報告書の将来の開示を改善することである。

この分析は、欧州経済地域の(再)保険会社及びグループによって公開された2016 SFCRのサンプルに基づいている。

EIOPAの分析によれば、大半の報告書は時間通りに公表され、一般的にソルベンシーIIの要件に準拠している。殆どの報告書は、企業のウェブサイト上で簡単に入手できた。

しかし、EIOPAは、将来の報告内容の質に関するさらなる改善が必要な分野を特定した。

・目的に適合したより多くの要約
・リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)に関する会社/グループ固有の情報
・様々なシナリオやストレスに対するリスク感応度に関するより構造化されたより包括的な情報
・資産、負債及び技術的準備金の評価及び評価に関する不確実性への対処に使用される基礎、方法及び主な前提に関するさらなる関連情報
・適格自己資本に関するさらなる包括的な情報

EIOPAは、将来の報告書の作成において、(再)保険会社及びグループに対し、比例原則を検討しつつ、監督声明に記載された勧告を考慮することを奨励する。

来年(2018年)の報告書は、比較情報の提供を初めて要求する。したがって、EIOPAは、強制的な分野に対する期待と、この情報を報告書にどのように提示すべきかを概説した。
監督声明は、EIOPAのウェブサイトで入手できる。

背景
ソルベンシーII指令の第51条、第53条、第54条及び第256条によれば、(再)保険会社及びグループは、ソルベンシー及び財務状況報告書を作成し公表することが義務付けられている。今年(2017年)、これらの報告書は(再)保険会社及びグループによって初めて公表された。

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中村 亮一

研究・専門分野

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