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- 最近の人民元と今後の展開(2018年1月号)~2017年を振り返った上で今後の動きを展望する
1――2017年の人民元の動き
一方、世界の外為市場の動きを見ると米ドルがほぼ全面安の展開となった。主要通貨ではユーロが前年末比13.8%上昇、日本円も同3.5%上昇した。新興国通貨ではブラジル(レアル)が同1.9%下落したものの、韓国(ウォン)は同12.8%上昇、マレーシア(リンギット)は同10.8%上昇、タイ(バーツ)は同9.9%上昇するなど米ドルに対して大きく上昇した通貨が目立った(図表-2)。
2――今後の展開
今回の予想期間内を考えると、米国では、1月に大統領一般教書演説や連邦公開市場委員会(FOMC)、2月にはFRB議長交代・議会証言や予算教書、3月にはFOMCが予定される。他方、中国では、1月には国家機構の人事が見えてくる第19期2中全会、2月には春節(旧正月)連休、3月には18年の成長率目標などが公表される全国人民代表大会(国会に相当)が開催される見込みだ。
ここもとの米中の経済金融の動きを見ると、米国では景気拡大が持続しており、今後も段階的な追加利上げが見込まれることから、米国国債(10年)金利はじわじわと上昇してきている。他方、中国では政府(含む中国人民銀行)が16年秋以降、住宅価格上昇の抑制に乗り出したため、景気指標の一部には陰りが見え始めた。しかし、17年1-9月期の実質成長率が17年目標(6.5%前後)を大幅に上回るなど景気の勢いは想定以上に強く、住宅価格上昇が地方都市にも波及し始めた(図表-3)。また、中国政府は党大会後、金融リスク抑制に本腰を入れ始めており、2月の消費者物価(3月9日公表)は前年の反動もあって3%前後まで上昇する可能性が高いため、中国の長期金利は高止まりすると見ている(図表-4)。従って、その前提を覆すような大きな波乱が起きない限り、米中の長期金利差は縮小しづらく、米ドルに対する人民元レートはボックス圏で横ばいが続くと予想している。
中国人民銀行は16年2月以降、15年8月の“人民元ショック”で市場が混乱したことを教訓として、人民元レートをバスケット通貨を参照して調整するようになった。そして、その後は米ドルに次いで比重の高いユーロとの連動性を高め、過去1年で計測した人民元とユーロの対ドルレートの相関係数は0.9前後まで上昇した。しかし、その連動率は3分の1程度に留まったため、ユーロが急上昇した局面ではユーロと人民元に大きな乖離が発生、ユーロに対する人民元の基準値は1ユーロ=8元近辺まで急落した。その後ユーロ元はやや調整したものの引き続き高水準にある。また、ここもと韓国ウォンなどアジア通貨が米ドルに対して上昇している点も気になる。「最近の人民元と今後の展開(2017年8月号)」で指摘したとおり、現在の人民元を取り巻く環境は“人民元ショック”が起きた時と、人民元が割高か割安かの水準感は逆ではあるものの1、構造的には似た面がある。ユーロに加えて韓国ウォンも高値トライする展開となれば、さらに15年8月の外為環境と似てくる2(図表-6)。当面はユーロドルに加えて韓国ウォンなどアジア通貨の動きも注視する必要がありだろう。
1 2015年8月の“人民元ショック”時には人民元が他通貨と比べて割高だったため、下落圧力が溜まっておりいつ人民元が下落してもおかしくない状況だったが、今回は逆に人民元が割安な状態にあるため、人民元の上昇圧力が溜まっている。
2 「最近の人民元と今後の展開(2015年9月号)~人民元の下落は収束したのか?」経済・金融フラッシュ2015-09-02
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三尾 幸吉郎
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(2018年01月05日「基礎研レター」)
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