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- 中国経済:景気指標の総点検(2017年冬季号)~党大会の前後でどう変化したか?
2017年12月22日
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3|その他の重要な4指標
【電力消費量】
電力消費の動きにも注意が必要だ。15年にゼロ成長に落ち込んだ電力消費は16年に入ると伸びが上向き、16年後半には伸びを高め、17年も高水準の伸びが続いていた。しかし、11月には前年同月比4.6%増へ伸びが鈍化、大気汚染対策の強化や例年より高気温だったことが影響した可能性が高いものの、電力需要の伸びがピークを過ぎた可能性も排除しきれない(図表-11)。
【貨物輸送量】
貨物輸送の動きにも注意したい。景気が良くなると物流も増えるからだ。鉄道貨物は16年後半に底打ちした後、17年も高い伸びを維持してきたが、ここもと急減速して11月は前年同月比0.9%増へ落ち込んだ(図表-12)。但し、道路貨物の伸びは比較的高く輸送全体に大きな落ち込みはない。
【工業生産者出荷価格】
工業品の値動きにも注意したい。景気が良いと工業品も値上がりするからだ。11月の工業生産者出荷価格は前年同月比5.8%上昇と高い上昇率を示した。しかし、原材料高は続いているが、消費財の上昇は小幅に留まる(図表-13)。今のところデフレ懸念もインフレ懸念も小さいと見ている。
【通貨供給量(M2)】
金融面からの点検も重要だ。通貨供給量(M2)は伸びの鈍化が継続、11月は前年同月比9.1%増と17年の目標値「12%前後」を大きく下回った(図表-14)。但し、預貸率は徐々に上昇、銀行貸出残高は11月も前年同月比13.3%増と高い伸びを維持、景気への悪影響は今のところ限定的だ。
【電力消費量】
電力消費の動きにも注意が必要だ。15年にゼロ成長に落ち込んだ電力消費は16年に入ると伸びが上向き、16年後半には伸びを高め、17年も高水準の伸びが続いていた。しかし、11月には前年同月比4.6%増へ伸びが鈍化、大気汚染対策の強化や例年より高気温だったことが影響した可能性が高いものの、電力需要の伸びがピークを過ぎた可能性も排除しきれない(図表-11)。
【貨物輸送量】
貨物輸送の動きにも注意したい。景気が良くなると物流も増えるからだ。鉄道貨物は16年後半に底打ちした後、17年も高い伸びを維持してきたが、ここもと急減速して11月は前年同月比0.9%増へ落ち込んだ(図表-12)。但し、道路貨物の伸びは比較的高く輸送全体に大きな落ち込みはない。
【工業生産者出荷価格】
工業品の値動きにも注意したい。景気が良いと工業品も値上がりするからだ。11月の工業生産者出荷価格は前年同月比5.8%上昇と高い上昇率を示した。しかし、原材料高は続いているが、消費財の上昇は小幅に留まる(図表-13)。今のところデフレ懸念もインフレ懸念も小さいと見ている。
【通貨供給量(M2)】
金融面からの点検も重要だ。通貨供給量(M2)は伸びの鈍化が継続、11月は前年同月比9.1%増と17年の目標値「12%前後」を大きく下回った(図表-14)。但し、預貸率は徐々に上昇、銀行貸出残高は11月も前年同月比13.3%増と高い伸びを維持、景気への悪影響は今のところ限定的だ。
3.総合指標の点検
以上のように党大会後11月までの景気指標を総点検すると、党大会の少し前から鉄道貨物輸送量が落ち込み、電力消費量の伸びが鈍化するなど一部の景気指標には陰りが見え始めた。しかし、製造業PMIと非製造業PMIはともに横ばい圏で推移、同予想指数も高水準を維持しており、工業生産の伸び鈍化も小幅に留まっている。需要面から見ても、小売売上高は小幅に伸びが鈍化したものの2桁増を継続、固定資産投資には底打ちの兆しがでてきており、輸出はむしろ伸びを高めた。従って、景気指標の一部には陰りが見え始めたものの、景気は依然として堅調だと言えるだろう。
また、国内総生産(GDP)に与える影響が大きい景気指標を用いて、18年1月に公表予定の17年10-12月期の成長率を推計して見た。ここでは工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数としたニッセイ基礎研究所で開発した回帰モデルを用いて計算した。その結果を見ると、17年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比6.7%増と、7-9月期の同6.8%増を小幅に下回るという推計結果となった(図表-15)。従って、17年の成長率は16年の前年比6.7%増をやや上回る同6.8%増前後になると見込んでいる。
但し、18年の成長率は減速を予想する2。党大会後12月に開催された18年の経済運営方針を決める中央経済工作会議では、「高速成長段階から高質発展段階へ転換した」として、持続可能で健全な発展を目指す方向を打ち出すとともに、金融面など重大リスクの防止・解消、脱貧困、汚染対策の3つに取り組む姿勢を示した。これまでの金融緩和で緩んだ規律を引き締め理財商品やネット金融に対する監視を強化するとともに、環境・採算面を重視してインフラ投資の担い手となっている官民連携(PPP)に対する監視を強化し、「6.5%前後」の安定成長を目指すことになるだろう。
また、国内総生産(GDP)に与える影響が大きい景気指標を用いて、18年1月に公表予定の17年10-12月期の成長率を推計して見た。ここでは工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数としたニッセイ基礎研究所で開発した回帰モデルを用いて計算した。その結果を見ると、17年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比6.7%増と、7-9月期の同6.8%増を小幅に下回るという推計結果となった(図表-15)。従って、17年の成長率は16年の前年比6.7%増をやや上回る同6.8%増前後になると見込んでいる。
但し、18年の成長率は減速を予想する2。党大会後12月に開催された18年の経済運営方針を決める中央経済工作会議では、「高速成長段階から高質発展段階へ転換した」として、持続可能で健全な発展を目指す方向を打ち出すとともに、金融面など重大リスクの防止・解消、脱貧困、汚染対策の3つに取り組む姿勢を示した。これまでの金融緩和で緩んだ規律を引き締め理財商品やネット金融に対する監視を強化するとともに、環境・採算面を重視してインフラ投資の担い手となっている官民連携(PPP)に対する監視を強化し、「6.5%前後」の安定成長を目指すことになるだろう。
2 今後の中国経済の見通しに関しては、「中国経済見通し~成長率は18年6.5%、19年6.2%と鈍化するものの心配は御無用!」Weeklyエコノミスト・レター 2017-11-24を参照ください。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年12月22日「Weekly エコノミスト・レター」)
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