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米国財務省が金融規制のための政府のコア原則に関する報告書を公表-保険業に関する勧告内容について-
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IAISにおけるFIOのミッションを再定義しており、「その中核的なミッションの推進を手助けし、米国の経済的利益を促進するために、財務省は、FIOがIAIS執行委員会に恒久的な投票権を持つべきである」としている。
勧告
財務省は、米国の利益を促進するためのIAISなどの国際的なSSBs(基準設定機関)への米国の継続的な参加を強く支持している。財務省は、IAISにおけるFIOのミッションを再定義しており、とりわけ、(1)米国の州ベースの保険規制制度、米国の消費者、米国の保険部門及びより広範な米国経済における成長を主張する、(2)チームU.S.A.の意見を調整する、(3)国際基準設定フォーラムにおける透明性とステークホルダーの関与を促進する。その中核的なミッションの推進を手助けし、米国の経済的利益を促進するために、財務省は、FIOがIAIS執行委員会に恒久的な投票権を持つべきであると考えている。
「IAISの米国代表者は、米国の保険業界、米国の消費者、米国の州ベースの保険規制制度、米国経済の利益を代表する政策立案を進めるべきである。」として、この目標を達成するために「国際的なプルデンシャルな保険問題に関するより強力でより効率的な調整を確実にするために、IAISの米国メンバー間の強化された省庁間でのプロセスを確立する」ことを勧告している。
具体的には「IAISで発生した問題についてステークホルダーがチームU.S.A.のメンバーと交渉するための四半期の調整会議を行い」、「諮問委員会や正式な情報要求の発行のようなその他のメカニズムを設立することを検討し、チームU.S.A.のメンバーへのステークホルダーからのインプット向上を提供する」ことを財務長官がFIOに指示する、としている。
勧告
IAISの米国代表者は、米国の保険業界、米国の消費者、米国の州ベースの保険規制制度、米国経済の利益を代表する政策立案を進めるべきである。財務省は、チームU.S.A.の各メンバーが異なる任務を持っていることを認識している。それにも関わらず、米国財務省は、チームU.S.A.がIAISにおいて、努力を調整し、政策ポジションを調和させれば、IAISの米国メンバーは米国の利益を進める上で最善の立場に置かれることになると考えている。
この目標を推進するために、財務省は、国際的なプルデンシャルな保険問題に関するより強力でより効率的な調整を確実にするために、IAISの米国メンバー間の強化された省庁間でのプロセスを確立することを勧告する。財務省は、チームU.S.A.が省庁間の共同作業を実施し維持するためのベストプラクティスを策定するという2015年のGAO(Government Accountability Office)報告書の勧告を支持し、長官がFIOに、この強化された協調プロセスを正式に定義し実施するために、IAISの他の米国メンバーと調整を行うことを指示する。
透明性を高めるために、財務長官は、FIOに対し、IAISで発生した問題についてステークホルダーがチームU.S.A.のメンバーと交渉するための四半期の調整会議を行うよう指示する。さらに、長官は、FIOに、諮問委員会や正式な情報要求の発行のようなその他のメカニズムを設立することを検討し、チームU.S.A.のメンバーへのステークホルダーからのインプット向上を提供するように指示する。
(2-1)米国の保険会社による外国市場へのアクセス
米国の保険会社による外国市場へのアクセスについては、「保険業界の国際市場アクセスに関する問題についての多国間及び二国間の対話を強化する」こととし、「保険業界に影響を及ぼす市場アクセス問題に関する多国間及び二国間の対話に従事する他の連邦政府機関及び団体と調整を行う」としている。さらに、「チームU.S.A.のメンバーが、IAISに、再保険リスクの強制的な国内留保や外国直接投資などの特定の市場アクセス制限がIAIS保険基本原則の目標と一致しているかどうかを分析するよう奨励する」と勧告している。
勧告
長官は、FIOと国際問題担当次官に対し、保険業界の国際市場アクセスに関する問題についての多国間及び二国間の対話を強化するよう指示する。これらの対話は、他の国の市場アクセス制限を防止するとともに、グローバル市場における米国企業の競争力を保護するために採用される可能性のある措置を評価するためにも有効である。このような対話は、市場浸透度の低い管轄地域の保険商品及びサービスへのアクセスを促進するものでなければならない。財務省は、保険業界に影響を及ぼす市場アクセス問題に関する多国間及び二国間の対話に従事する他の連邦政府機関及び団体と調整を行う。さらに、財務省は、チームU.S.A.のメンバーが、IAISに、再保険リスクの強制的な国内留保や外国直接投資などの特定の市場アクセス制限がIAIS保険基本原則の目標と一致しているかどうかを分析するよう奨励する、ことを勧告する。
米国とEU(欧州連合)のカバードアグリーメントの適切な実施には、「適切な透明性とステークホルダーとの定期的かつ実質的な関与が必要である」として、FIOに対し、「州保険監督当局、NAIC及びその他のステークホルダーとの調整を引き続き改善」するよう指示している。さらに、「他の外国管轄区域とのカバードアグリーメント交渉に入るにあたっては、米国通商代表部、議会、州保険コミッショナー及びその他の業界関係者と調整し、協議する。」としている。
勧告
財務省は、米国とEUのカバードアグリーメントの適切な実施には、適切な透明性とステークホルダーとの定期的かつ実質的な関与が必要であると考えている。したがって、長官は、FIOに対し、州保険監督当局、NAIC及びその他のステークホルダーとの調整を引き続き改善するよう、指示する。財務省はまた、他の外国管轄区域とのカバードアグリーメント交渉に入るにあたっては、米国通商代表部、議会、州保険コミッショナー及びその他の業界関係者と調整し、協議する。
4―今回の報告書に対する保険関係団体からの反応
1|ACLI(American Council of Life Insurers:米国生命保険協会)
ACLIは、以下の内容のプレスリリース5を公表している。
Dirk Kempthorne 会長兼CEOは、「ACLIは報告書全体をレビューしているが、効率的な規制と政府プロセスに重点を置くことで元気付けられている。」と述べ、報告書が以下の項目を「正当に認識した。」としている。
(1)より厳しい連邦規則のために個々の保険会社を指定することは、リスク軽減のための最善の方法ではない。
(2)連邦保険局は引き続き保険問題に関する専門委員を務め、州の保険監督当局と緊密に調整しながら国際フォーラムで米国保険制度を促進するために重要な役割を果たすべきである。
(3)州は生命保険業界の主たる規制当局である。
2017年10月27日
財務省報告書に関するACLI
米国生命保険協会(ACLI)のDirk Kempthorne 会長兼CEOは、米国財務省の資産運用管理及び保険業に関する報告書に次のような声明を発表した。
ワシントンD.C.(2017年10月27日)「ACLI(米国生命保険協会)は、資産運用管理及び保険業界に関する報告書に対して、Steven Mnuchin 財務長官と財務省を賞賛する。」
「ACLIは報告書全体をレビューしているが、効率的な規制と政府プロセスに重点を置くことで元気付けられている。報告書は以下の点を正当に認識した。」: ・より厳しい連邦規則のために個々の保険会社を指定することは、リスク軽減のための最善の方法ではない。
・受託者規則(フィデューシャリー・ルール)の全面的な実施は、関連する問題が評価され、退職投資者に最もよく奉仕するために対処されるまで延期されるべきであり、連邦機関は、商品ライン間で一貫した行動基準を達成するために州規制当局と連携すべきである。
・連邦保険局は引き続き保険問題に関する専門委員を務め、州の保険監督当局と緊密に調整しながら国際フォーラムで米国保険制度を促進するために重要な役割を果たすべきである。
・生命保険業界とその商品は、何百万人もの米国民にとって安全な退職を提供する上で重要な役割を果たしている。
・州は生命保険業界の主たる規制当局である。
・2015年登録エージェント・ブローカー全国協会改革法が実施されるべきであり、これにより州を越えた保険のライセンス供与が促進される。
「生命保険業界は、政府のプログラムへの圧力を緩和しつつ、米国民が財政的な将来に備えることを支援している。私たちは、民間部門のセーフティネットとしての業界の役割を支えるイニシアチブについて、Mnuchin財務長官及び他の政策立案者と協力することを楽しみにしている。」
AIAは、以下の内容のプレスリリース6を公表している。
Stef Zielezienski氏(CEO代理兼法律顧問)は、「多くの主要な公共政策問題に対する改革と関与を強化するための堅実な基盤を構築するために、この報告書を使用する財務省の取り組みに感謝する。」と述べた。
さらに、「AIAは、報告書が過去数ヶ月にわたって我々が強く求めてきた多くの公共政策の優先事項を反映していることを嬉しく思った。」と述べて、その具体的な項目として、
(1)システミックリスク評価のためのエンティティベースのアプローチから活動ベースのフレームワークへの転換の推進
(2)グループ資本イニシアチブを含む、国際的な問題に関する統一された米国の声への再コミットメント
(3)連邦保険局の適切な国際的及び国内的機能の明確なビジョン
等を挙げた。
2017年10月27日
財務省の資産運用管理と保険規制報告書に関するAIAの声明
ワシントンD.C.2017年10月27日- 米国財務省は、資産運用管理及び保険の規制環境に焦点を当て、規制枠組みが大統領の2017年2月エグゼクティブ・オーダー(13772)に概要を示されている米国金融制度規制のコア原則と一致していることを確実にするための勧告を行う報告書を発表した。AIAのStef Zielezienski氏(CEO代理兼法律顧問)は、次のような声明を発表した。
「多くの主要な公共政策問題に対する改革と関与を強化するための堅実な基盤を構築するために、この報告書を使用する財務省の取組みに感謝する。具体的には、AIAは、報告書が過去数ヶ月にわたって我々が強く求めてきた多くの公共政策の優先事項を反映していることを嬉しく思った。」
(1)保険会社の国内及びグローバルなシステミックリスク評価のためのエンティティベースのアプローチから活動ベースのフレームワークへの転換の推進
(2)国際業務を行う米国の保険グループのための実行可能なグループ資本イニシアチブを含む、国際的な問題に関する統一された米国の声への再コミットメント
(3)単一のテロリスク保険データコールに関する州規制当局とNAICとの調整の約束
(4)保険数理的に健全な原則及び州の保険法及びマッカラン・ファ―ガソン法と矛盾している、住宅保険に対する差別的効果ルールの適用を再考するHUD(住宅都市開発省)への要請
(5)商業保険及び募集人の任命に関する州に基づく規制改革の支援
(6)連邦保険局の適切な国際的及び国内的機能の明確なビジョン(及び支援)
「我々は、報告書で特定されたこれらの分野及び他の分野で前進することができて興奮しており、財務省は透明な議論と改革志向の行動のためのお膳立てをしていると確信している。」
(2017年11月27日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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