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- 景気ウォッチャー調査(17年10月)~景況感は好調を維持し、台風の影響は限定的~
2017年11月10日
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1.景気の現状判断DI(季節調整値):度重なる台風上陸も、影響は限定的
11月9日に内閣府から公表された2017年10月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は52.2と前月から0.9ポイント改善し、2ヵ月連続で改善した。家計動向関連が悪化したものの、企業動向関連、雇用関連は大幅に改善し、DIは消費税率引き上げ前の2014年3月の53.8以来3年7ヵ月ぶりの高水準となった。なお、内閣府は、基調判断を「着実に持ち直しが続いている」と4ヵ月ぶりに上方修正した前月から据え置いた。
今回の調査では、家計動向関連は、度重なる台風の影響で来客数が減少したが、消費者の購買意欲の高まりもみられ、景況感の押し下げは限定的だった。また、企業動向関連では、引き続き受注が好調に推移しており、雇用関連では、人材の定着や確保を進めるため待遇の改善が進んでいる。
今回の調査では、家計動向関連は、度重なる台風の影響で来客数が減少したが、消費者の購買意欲の高まりもみられ、景況感の押し下げは限定的だった。また、企業動向関連では、引き続き受注が好調に推移しており、雇用関連では、人材の定着や確保を進めるため待遇の改善が進んでいる。
2.企業動向・雇用関連が大幅に改善

住宅関連では、「秋に入り客からの問い合わせや来場者が増えており、商談から契約に至る件数が増えてきている」(中国・住宅販売会社)など住宅の購入に前向きな消費者が増えているようだ。とりわけ、「新築分譲マンションでは、都心などの高額物件の販売が堅調に推移している。特に、富裕層を中心として、投資目的の購入も含めた活発な動きがみられる」(近畿・その他住宅)というコメントもみられ、富裕層はより購入に積極的なようだ。
企業動向関連では、製造業(前月差+3.5ポイント)、非製造業(同+4.3ポイント)とも大幅に改善した。コメントをみると、「人手不足の影響により省力化を進めようという動きが強まっており、生産効率改善のための設備需要などが増えてきている」(北海道・その他非製造業[鋼材卸売])や「主要客の新製品販売が好調で、客の完成品生産拠点は1工場生産から2工場生産体制となっている」(中国・輸送用機械器具製造業)など、設備投資や受注は引き続き活発のようだ。一方、「過去数か月は製品出荷が好調で、取引先からは、今後も生産は好調を維持できるとの連絡を受けている。ただし、化学品の原料価格上昇により、利益はあまり増加しない」(近畿・化学工業)など、受注の増加が利益に結び付かないといったコメントもみられる。ただし、「原材料の値上がり分の製品価格への転嫁も徐々に進み、販売量も多少増加しており、景気はやや良くなっている」(東海・パルプ・紙・紙加工品製造業)や、「一部の受注に関して、大手からの価格提示に対して価格交渉ができるようになった」(九州・電気機械器具製造業)など価格転嫁に向けた動きもみられる。また、「好調な受注が続いており、なかには断る案件もある。人手不足により製造できないことが原因の1つであることから、動向を注意深くみていく必要がある」(東北・金属製品製造業)や「仕事の受注は順調であるが、警備員不足により、思うように受注できない。単価を上げることで業況は改善している」(南関東・その他サービス業[警備])など人員が足りず、旺盛な受注に対応できないケースもあるようだ。
雇用関連では、「求人件数が増加しているが、求職者は少ない上、職種のミスマッチによって採用は増えない」(北関東・職業安定所)など求職者が少なく求人の職種にも偏りがあり、ミスマッチが起きていると指摘するコメントが目立った。一方、「人手不足だが人材が集まらないため、求人を諦める事業所が増えている。一方で、正社員化や制度、待遇の見直しなど、現在いる従業員を定着させるための動きが出てきている」(北海道・求人情報誌製作会社)や、「派遣している非正規社員の中で、正社員としての就職が決まったといって契約途中で辞める者が数人いた。派遣社員の中にも、正社員を目指したいという理由で契約を更新しないスタッフが徐々に出てきている。正社員の求人が増えている」(九州・人材派遣会社)など、人手不足が深刻化する中、企業側は従業員の処遇改善に取り組み、労働者側もより良い条件を求めて転職活動を行っているようだ。
(2017年11月10日「経済・金融フラッシュ」)
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