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中期経済見通し(2017~2027年度)

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メインシナリオの財政収支見通しでは、予測期間末の2027年度までに基礎的財政収支の黒字化は達成されないとしている。楽観シナリオでは、名目GDP成長率が今後10年間の平均で2.5%とメインシナリオよりも0.7%高いため、2020年度の赤字幅は▲0.7%(GDP比)まで縮小し、消費税率が12%に引き上げられる2024年度には基礎的財政収支の黒字化が実現する。ただし、利払い(ネット)を含む財政収支は予測期間末でも赤字で、メインシナリオに比べて金利の上昇スピードが速いため、基礎的財政収支と財政収支の差はメインシナリオよりも大きくなる。国・地方の債務残高のGDP比を低下させるためには、基礎的財政収支の黒字幅をさらに拡大させることが必要となる。
悲観シナリオでは名目成長率の低迷に伴う税収の伸び悩みが続くことに加え、消費税率が10%で据え置かれることから基礎的財政収支の赤字は拡大傾向が続く。この場合には財政破綻のリスクが高くなるだろう。
(シナリオ別の金融市場見通し)
楽観シナリオでは、米国をはじめとする各国景気が順調に回復するため、メインシナリオと比べて、米国の利上げペースは加速し、ユーロ圏の利上げ開始も2018年に前倒しとなる。日本も物価上昇率の2%達成がメインシナリオよりも大幅に早まるため、量的緩和の停止、マイナス金利政策の終了・無担保コールレート誘導目標の復活は2020年度に前倒しされ、長期金利誘導目標もその時点で廃止となる。その後、2021年度からは段階的な利上げが実施されることになる。
日本の長期金利は、日銀の誘導目標下にある2019年度までは低位で推移するが、2020年度以降は出口戦略の進展や利上げの段階的な実施、投資家のリスク選好、海外金利の大幅な上昇を受けて、メインシナリオよりも早期かつ大幅に上昇していくことになる。
ドル円レートについては、米国経済の回復加速と急ピッチの利上げに伴う日米金利差拡大が大幅なドル高に繋がり、2019年度には1ドル127円まで円安ドル高が進む。その後はメインシナリオ同様、日銀の出口戦略を受けて円高ドル安基調に転じるが、期間を通じたリスク選好地合いや日本の期待インフレ率が高水準に保たれることなどから、予測期間終盤にかけてメインシナリオよりも円安ドル高水準での推移となる。
ユーロドルについては、ユーロの金融政策正常化が急ピッチで進むうえ、ユーロの信認が高まることから、メインシナリオよりも若干ユーロ高となり、予測期間末には1ユーロ1.30ドルまで水準を切り上げる。既述の通り、ドル円ではメインシナリオよりも円安ドル高となるため、ユーロ円でも大幅な円安ユーロ高となる。
悲観シナリオでは、世界的に景気が低迷を続けるため、米国の利上げは今後長期にわたって見送られ、再開してもすぐに打ち止めになる。ユーロ圏も出口戦略が大きく遅れ、その後の利上げも小幅に留まる。日本では物価の低迷が続くため、予測期間を通じて現行の金融緩和が継続される(正常化の動きは生じない)。
日本の長期金利は、日銀が円高進行と自然利子率低下への対応として、予測期間序盤に長期金利誘導目標を引き下げることで低下し、中盤にかけて過去最低レベルとなる▲0.3%で推移する。予測期間終盤には、海外金利の持ち直しと、長期金利をマイナス圏に据え置くことによる副作用への配慮から誘導目標がやや引き上げられ、0%程度での推移となる。
ドル円レートについては、米景気の低迷によって利上げが見送られること、世界的に市場がリスク回避的になることから、予測期間前半に急速な円高ドル安が進行、2019年度にかけて92円まで円高が進む。以降は米金利がやや持ち直すことでドルが底入れするが、予測期間末にかけて1ドル95円を割り込んだ水準での推移が続く。
ユーロドルレートに関しては、景気低迷に伴う出口戦略の後ずれや政治リスクの上昇からユーロ安圧力が強まり、予測期間序盤に1.02ドルまで低下する。その後、ECBの利上げに伴って小幅に上昇するが、1.05ドル付近での低迷が続く。既述の通り、ドル円ではメインシナリオよりも円高ドル安が進むため、ユーロ円では1ユーロ100円を割り込む大幅な円高ユーロ安となり、主要先進国通貨では円が独歩高の様相になる。

(2017年10月13日「Weekly エコノミスト・レター」)
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