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- 【インドGDP】4-6月期は前年同期比5.7%増~GST導入前の消費の減速で3年ぶりの低成長
2017年09月01日
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2017年4-6月期の実質GDP成長率1は前年同期比5.7%増と、前期(同6.1%増)から低下したほか、市場予想2の同6.5%増を下回った。
需要項目別に見ると、民間消費の減速と純輸出の悪化が成長率低下に繋がった(図表1)。
政府消費が同17.2%増(前期:同31.9%増)と高水準となったものの、民間消費が前年同期比6.7%増(前期:同7.3%増)と低下したほか、総固定資本形成が同1.6%増(前期:同2.1%減)と伸び悩んだ。
純輸出については、輸出が同1.2%増(前期:同10.3%増)と低下した一方、輸入が同13.4%増(前期:同11.9%増)と上昇した。その結果、純輸出の成長率への寄与度は▲2.6%ポイントと、前期の▲0.3%ポイントからマイナス幅が拡大した。
実質GVA成長率は前年同期比5.6%増(前期:同5.6%増)と横ばいとなり、市場予想(同6.2%増)を下回る結果となった(図表2)。
第三次産業は同8.7%増(前期:同7.2%増)と上昇した。内訳を見ると、行政・国防が同9.5%増(前期:同17.0%増)と低下したものの、卸売・小売、ホテル、運輸・通信業が同11.1%増(前期:同6.5%増)、金融・不動産・専門サービス業が同6.4%増(前期:同2.2%増)とそれぞれ上昇した。
第二次産業は同1.6%増(前期:同3.1%増)と低下した。内訳を見ると、電気・ガス業が同7.0%増(前期:同6.1%増)と上昇したものの、製造業が同1.2%増(前期:同5.3%増)、鉱業が同0.7%減(前期:同6.4%増)と低下したほか、建設業が同2.0%増(前期:同3.7%減)と伸び悩んだ。
第一次産業は同2.3%増と、好調だった前期の同5.2%増から低下した。
第三次産業は同8.7%増(前期:同7.2%増)と上昇した。内訳を見ると、行政・国防が同9.5%増(前期:同17.0%増)と低下したものの、卸売・小売、ホテル、運輸・通信業が同11.1%増(前期:同6.5%増)、金融・不動産・専門サービス業が同6.4%増(前期:同2.2%増)とそれぞれ上昇した。
第二次産業は同1.6%増(前期:同3.1%増)と低下した。内訳を見ると、電気・ガス業が同7.0%増(前期:同6.1%増)と上昇したものの、製造業が同1.2%増(前期:同5.3%増)、鉱業が同0.7%減(前期:同6.4%増)と低下したほか、建設業が同2.0%増(前期:同3.7%減)と伸び悩んだ。
第一次産業は同2.3%増と、好調だった前期の同5.2%増から低下した。
1 8月31日、インド中央統計機構(CSO)が2017年4-6月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。
2 Bloomberg調査
4-6月期GDPの評価と先行きのポイント
4-6月期の成長率は過去3年間で最も低い水準まで低下した。景気は昨年11月の高額紙幣廃止による現金不足のショックを引き摺り軟調ながらも持ち直しに向かっているかに思われた。しかし、7月の物品・サービス税(GST)導入を控えて、消費者が自動車など値下がりの見込まれる商品を買い控えたことや企業が5~6月に節税目的3で在庫削減を進めて一部で商品不足に陥ったことにより、GDPの約6割を占める民間消費が減速して4-6月期の成長率低下に繋がった。
経済の先行きはどうだろうか。インドのGDPは統計上の技術的要因(インフォーマル・セクターの捕捉)と政策要因(高額紙幣廃止とGST導入)が重なって過去2四半期の成長率が市場予想を大きく下回るなど実体経済の弱さが際立ち、成長見通しには陰りが出ているが、景気の基調は回復に向かうと見込まれる。
7-9月期はまずGSTを控えて生産を抑制していた鉱工業部門が加速するほか(図表3)、高額紙幣廃止の影響で落ち込んだ建設業や金融・不動産業が8月の中銀の利下げも後押しとなって持ち直しが続くだろう。またインド気象局によると、今年6-9月のモンスーンの雨量は8月末時点で97%と、平年並みで推移している。生産拡大によって農業所得が増加すると共に食品価格の安定によって都市部の需要が拡大することから、民間消費は堅調な伸びが見込まれる。
さらに政府支出も足元の高水準を維持しそうだ。GST導入によって7月の税収が目標を上回ったほか、今後GSTシステムへの対応が遅れていた企業の納税が増えるなかで、歳入の増加が期待できる。政府は17/18年度予算でインフラ整備の促進や地方経済の支援を中心に支出を拡大させると示しており、公共部門は景気をサポートするだろう。
不良債権問題は景気減速も重なり悪化しているが、政府は昨年の倒産法に続いて今年5月に銀行規制法を改正した。同法は中央銀行に対してデフォルトに陥っている企業の破産手続きを市中銀行に指示する権限を与えるものであり、足元で不良債権処理が進み始めている。中銀が追加利下げで実質金利(図表4)を引き下げることができれば資金需要が改善し、倒産処理でバランスシートが悪化した銀行の支援にもなるだろう。金融システムの健全化なくしてインドが目指す投資主導の成長は難しいだけに、中銀の金融政策決定会合は引き続き注目度の高いイベントだ。
経済の先行きはどうだろうか。インドのGDPは統計上の技術的要因(インフォーマル・セクターの捕捉)と政策要因(高額紙幣廃止とGST導入)が重なって過去2四半期の成長率が市場予想を大きく下回るなど実体経済の弱さが際立ち、成長見通しには陰りが出ているが、景気の基調は回復に向かうと見込まれる。
7-9月期はまずGSTを控えて生産を抑制していた鉱工業部門が加速するほか(図表3)、高額紙幣廃止の影響で落ち込んだ建設業や金融・不動産業が8月の中銀の利下げも後押しとなって持ち直しが続くだろう。またインド気象局によると、今年6-9月のモンスーンの雨量は8月末時点で97%と、平年並みで推移している。生産拡大によって農業所得が増加すると共に食品価格の安定によって都市部の需要が拡大することから、民間消費は堅調な伸びが見込まれる。
さらに政府支出も足元の高水準を維持しそうだ。GST導入によって7月の税収が目標を上回ったほか、今後GSTシステムへの対応が遅れていた企業の納税が増えるなかで、歳入の増加が期待できる。政府は17/18年度予算でインフラ整備の促進や地方経済の支援を中心に支出を拡大させると示しており、公共部門は景気をサポートするだろう。
不良債権問題は景気減速も重なり悪化しているが、政府は昨年の倒産法に続いて今年5月に銀行規制法を改正した。同法は中央銀行に対してデフォルトに陥っている企業の破産手続きを市中銀行に指示する権限を与えるものであり、足元で不良債権処理が進み始めている。中銀が追加利下げで実質金利(図表4)を引き下げることができれば資金需要が改善し、倒産処理でバランスシートが悪化した銀行の支援にもなるだろう。金融システムの健全化なくしてインドが目指す投資主導の成長は難しいだけに、中銀の金融政策決定会合は引き続き注目度の高いイベントだ。
3 企業の節税目的の在庫調整については2017年7月31日公表の基礎研レポート「10年越しのGST導入 インド経済どう変わる?」を参照。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年09月01日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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