2017年08月31日

子ども・高齢者ともに骨折は増加

保険研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   村松 容子

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図表8 介護が必要となった主な原因 3| 高齢者の骨折
高齢者の骨折は介護が必要となる状態の原因の1つとして注目されている。図表8は、厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」による「介護が必要となった主な原因」の構成割合である。

これによると、「骨折・転倒」によって介護が必要となった人は、男女あわせて、「認知症」「脳血管疾患」「高齢による衰弱」に次いで4番目に高い。特に女性で15%と高くなっている。

このことから、高齢期における骨折予防や、望ましい骨折後のリハビリテーションのあり方について議論が続いている。
 
(1)高齢期特有の「肋骨,胸骨及び胸椎」「腰椎及び骨盤」「大腿骨」は減少傾向?
高齢期として65~74歳における骨折率と受診動向をみる。65~74歳は、図表3で示したとおり、女性の骨折率が非常に高い上、男女とも65~69歳で骨折率が上昇している年代である。
図表9 65~74歳 骨折部位の推移 図表9は、65~74歳における骨折部位の推移である。この年代の骨折に多い部位は、順に「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「前腕の骨折(S52)」「下腿の骨折,足首を含む(S82)」「足の骨折,足首を除く(S92)」だった。骨折部位は子ども時代より多岐にわたっており、上位3部位で約半数、上位5部位で約7割にとどまった。また、「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」に加えて「大腿骨骨折(S72)」が相対的に多い。

時系列でみると、「前腕の骨折(S52)」がやや増加傾向、現在主要な骨折部位である「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「大腿骨骨折(S72)」はいずれもやや減少傾向にあった。
(2)受診終了までの期間
 1) 受診を終了までの期間は6~10か月と子ども時代より長い
図表10は、高齢期に特徴な骨折部位について、受診開始からの月数別に、該当部位の骨折による受診を終了した患者の割合を累計で示したものである。

いずれの部位も、それぞれ半数程度の患者が1か月で受診を終了していた。2か月目には「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」の患者の累計75%近くが、「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「大腿骨骨折(S72)」「下腿の骨折,足首を含む(S82)」の患者の累計70%程度が、「前腕の骨折(S52)」「足の骨折,足首を除く(S92)」の患者の累計60%程度が、受診を終了していた。

「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」は、2か月で75%の患者が受診を終了しており、患者の95%が受診を終了するまでにかかった期間は8か月と比較的短かった。「足の骨折,足首を除く(S92)」は、1か月で受診を終了する患者は半数以下で少なかったものの、4か月目には9割が受診を終了しており、患者の95%が受診を終了するまでにかかった期間は7か月と短かった。「前腕の骨折(S52)」は、2か月目では60%弱しか受診を終えておらず、患者の95%が受診を終了するまでに9か月かかっていた。「大腿骨骨折(S72)」は比較的受診終了までの期間が短い患者が多かったが、患者の95%が受診を終了するまでにかかった期間は10か月と長く、患者による差が大きかった。「下腿の骨折,足首を含む(S82)」は8か月、「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」は10か月だった。

部位別の入院率と手術率、および受診終了までの期間(図表11)を見比べると、高齢期の場合も入院率が高い「大腿骨骨折(S72)」で受診終了までの期間が長く、入院率が相対的に低い「足の骨折,足首を除く(S92)」で短い傾向があった。

「前腕の骨折(S52)」「下腿の骨折,足首を含む(S82)」「足の骨折,足首を除く(S92)」について、子ども時代と比較すると、手術率は高齢期の方が低かったが、入院率は高齢期の方が高く、受診終了までの期間は高齢期の方が3~5か月間長かった。
図表10 受診開始からの月数別受診終了患者の割合/図表11 骨折部位別入院率・手術率・受診終了までの期間
 2) 受診終了までの期間は短縮
高齢期に特有の「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「大腿骨骨折(S72)」について、受診を終了するまでの時系列で比較したものが図表12である。

子ども時代の受診終了までの期間は、分析期間を通じてほとんど変化がなかったが(図表7)、高齢期の骨折の場合、いずれの部位も、2016年度にかけて、受診終了までの期間が短くなっていることがわかる。特に、受診終了までの期間が長くなる傾向があった「大腿骨骨折(S72)」は、1か月で受診を終了した人が大幅に増加しているほか、複数月にわたる患者の受診終了までの期間が短縮していた。「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」や「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」も2010~2016年度にかけて短縮していた。骨折後の回復が改善した可能性と、特に「大腿骨骨折(S72)」で短縮していることから、医科的治療を終え、早々に介護保険によるリハビリテーション等に移行している可能性が考えられる。
図表12 骨折部位別受診開始からの月数別受診終了患者の割合の推移

4――結果のまとめと考察

4――結果のまとめと考察

以上見てきたとおり、健康保険組合のデータを中心とするデータを使って分析した結果、骨折率、骨折部位、受診期間は性別・年齢によって異なっていた。

骨折が多いのは、男性では10~14歳、女性では高齢期だった。男性も高齢期の骨折は多いが、女性の骨折率が50歳代から急に高まっているのに対し、男性は70~74歳で急に高くなっていた。時系列でみると、子ども時代と高齢期ともに、骨折率は増加傾向にあった。

骨折部位についてみると、子ども時代では「肩及び上腕の骨折(S42)」「前腕の骨折(S52)」、高齢期では「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「大腿骨骨折(S72)」等の部位がそれぞれ相対的に多いのが特徴的だった。

子ども時代として10~14歳の骨折について詳細をみると、骨折が多い順に5つの部位で全骨折の9割を占めており、時系列でみても大きな変化はなかった。

受診期間は部位によって差はあるもののおおむね4~6か月で全骨折者の95%が受診を終えていた。この長さは時系列でみても、大きな変化はなかった。

高齢期の骨折として、65~74歳の「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「大腿骨骨折(S72)」の骨折について詳細をみると、「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」の骨折率はやや減少傾向にあった。

全骨折者の95%が受診を終了するまでにかかる期間は、「大腿骨骨折(S72)」と「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」で、他の部位より長く10か月だった。子ども時代と比較可能な「前腕の骨折(S52)」「下腿の骨折,足首を含む(S82)」「足の骨折,足首を除く(S92)」についてみると、手術率は高齢期の方が低かったが、入院率は高齢期の方が高く、受診終了までの期間は高齢期の方が3~5か月間長かった。受診期間を時系列でみると、子ども時代と異なり、いずれの部位も短縮していた。
 
子ども時代の骨折の増加については、食生活の変化によって骨の成長に必要な栄養素を摂取できていない可能性や、筋力の低下、日照不足により骨が弱くなったこと、運動不足により自分自身の身体をコントロールできずに転倒することが増加していること等が指摘されることが多い。一方で、10歳代では、クラブ活動中に骨折することが多いことが知られており、体格が良くなったことによって運動等の場面でより高度な技術を使うようになったことも一因として考えられている6

骨折増加の原因を特定し、子ども時代にも骨量を把握することや、体格にあった運動を行うなど、骨折率増加を食い止める必要があるだろう。仮に、子ども時代の骨折の増加が、骨が弱くなったことによるものだとすると、現在の子ども世代が高齢期になった時、現在以上に骨折が増える懸念がある。骨量は、20歳代で最大値となると言われており、高齢期の骨折や骨折の重症化を予防するためには、若い頃に十分に骨量を増やしておくことが有効とされている7

高齢期の骨折については、近年、以前ほどは腰が曲がった高齢者を見かけなくなったこと等から、骨や筋肉の状態は、従前と比べると改善しているように思われる。しかし、今回のデータで60歳代は男女とも骨折率が増加した理由として、元気な高齢者が増えたことで活動の幅が広がっている可能性が考えられる。医療機関を受診する期間は短くなっていたことから、骨折後の回復が改善した可能性と、特に「大腿骨骨折(S72)」で短縮していることから、医科的治療を終え、早々に介護保険によるリハビリテーション等に移行している可能性が考えられる。

高齢期の骨折予防としては、転倒防止のために筋力を増強すること、視力を管理すること、自宅を一部改造すること等が言われている。今回のデータでは女性は50歳代から急増するため、早めに対策を行うことが重要だろう。
 
6 日本スポーツ振興センター学校安全WEB『学校管理下における児童生徒のケガの特徴について』より。
7 「健康日本21」のサイト『骨粗鬆症財団の取り組みについて』等。
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保険研究部   准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

(2017年08月31日「基礎研レポート」)

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