2017年08月31日

子ども・高齢者ともに骨折は増加

保険研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   村松 容子

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1――骨折は子ども時代と高齢期に多い

骨折は、子ども時代と高齢期に多い。特に、男性は子ども時代に、女性は高齢期に多い。

子どもの頃の骨折と、高齢期の骨折はそれぞれ異なる理由で注目されている。子どもについては、食習慣の変化や体力や運動量の低下による骨折増加が懸念されている。一方、高齢期については、骨折が要介護状態になる原因の1つであることから、高齢期のQOL(生活の質)向上のための予防やリハビリテーションのあり方が注目されている。

いずれも従来から注目されているが、骨折率や受診状況は変化しているのだろうか。以下では、健康保険組合によるレセプトデータを使って、子どもと高齢者のそれぞれについて、最近の骨折率の推移や骨折部位の特徴をみた後、受診期間の特徴をみていく。
 

2――使用したデータ

2――使用したデータ

分析には、(株)日本医療データセンター(以下「JMDC」と記載する。)によるデータベースを使用した。このデータベースは、JMDCが了承を得ているいくつかの健康保険組合のレセプトデータより作成されている1。個人を特定しうる情報を完全に削除した上で市販されており、各種研究で活用されている。

健康保険組合のデータであるため、60歳以上のデータが少ないほか、後期高齢者医療保険制度に移行する75歳以上のデータは含まない。また、健康保険組合の組合員本人は就労していることから、日本の全体と比べると、比較的健康状態がよい人が多い等の特性がある2

本稿では、このデータベースで2010~2016年度のデータが継続的に取得できる人を対象に分析を行った。対象となる加入者数は毎年度60~65万人程度、男性が56~57%で、2010~2016年度を通じて性・年齢構成に大きな差はなかった。
 
1 本稿の発行にあたっては、(株)日本医療データセンターにて内容の確認を行っている。本稿は、(株)日本医療データセンターの提供したデータに依存しており、筆者はその質についてチェックしていない。
2 国民一人当たりの年間の医療費を加入制度別に比較すると、健康保険組合加入者の医療費は、国民健康保険(市町村国保)や協会けんぽ加入者と比べて医療費が低い傾向がある。
 

3――分析結果

3――分析結果

1骨折率の概要
(1)骨折が多いのは子ども時代と高齢期。部位は性・年齢によって特徴がある。
図表1は、2016年度における性・年齢別の部位別骨折率3をすべての部位について積み上げたものである。冒頭で紹介したとおり、骨折は、男女とも、子ども時代と高齢期に多い。男性では、特に10~14歳に多く、女性では、特に高齢期に多い。男性の10~14歳、女性の70~74歳の1年間の骨折率は、いずれもおよそ10%だった。男女とも骨折率がもっとも低いのは0~4歳、次いで20~24歳だった。20歳以降は男女とも年齢とともに上昇するが、女性は50歳から急上昇するのに対し、男性が急上昇するのは70歳以降だった。

骨折部位にも、性別や年齢による特徴があった。図表2は、図表1を各部位の占有率で示しなおしたものである。子ども時代では「肩及び上腕の骨折(S424)」「前腕の骨折(S52)」、高齢期では「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」「大腿骨骨折(S72)」等の部位がそれぞれ相対的に多かった。

骨折部位を男女で比較すると、10~14歳では、男性で「前腕の骨折(S52)」が、女性で「手首及び手の骨折(S62)」がそれぞれ多い。70~74歳では、男性で「肋骨,胸骨及び胸椎骨折(S22)」、女性で「腰椎及び骨盤の骨折(S32)」がそれぞれ多い。
図表1 性・年齢別部位別骨折率/図表2 性・年齢別 骨折部位占有率
 
3 部位別骨折率は、1年間の各部位の骨折者数を加入者数で割ったものとした。同じ人が複数部位を骨折した場合、重複カウントしている。また、同じ人が同一年度に同じ部位を複数回骨折していても1回分としてカウントした。部位の分類にはICD10(国際疾病分類第10版)を使用した。
4 ICD10(国際疾病分類第10版)による分類。以下同じ。
(2) 子ども・高齢者ともに骨折は増加傾向
性・年齢別の骨折率の2010~2016年度における推移を図表3に示す。

男性では、10~14歳の骨折率が高く、次いで5~9歳、70~74歳が高い。時系列でみると、もっとも骨折率が高い10~14歳で上昇していたほか、60歳代でも上昇傾向にあった。女性では、70~74歳の骨折率が高く、次いで65~69歳、10~14歳、60~64歳と続いていた。時系列でみると、ほとんどの年齢で上昇傾向にあった。中でも5~14歳と60歳代で、上昇幅が大きかった。男女とも70~74歳はデータ数が少なく、年度によるばらつきがあるが、おおむね横ばいだった。
図表3 年齢別骨折率の推移
以下では、子ども時代と高齢期それぞれについて、骨折率と受診期間の傾向をみる。
図表4 10~14歳 骨折部位の推移 2| 子ども時代の骨折
(1)骨折部位に大きな変化はない
子ども時代として10~14歳を取り上げる。10~14歳というのは、図表3で示したとおり、男性では骨折率がもっとも高く、男女とも骨折率が上昇している年代である。

図表4は、10~14歳における男女合算の骨折部位の推移である。この年代の骨折に多い部位は、順に「手首及び手の骨折(S62)」「前腕の骨折(S52)」「足の骨折,足首を除く(S92)」「下腿の骨折,足首を含む(S82)」「肩及び上腕の骨折(S42)」だった。部位別の占有率を時系列でみると、分析対象期間内で大きな変化はなく、2010~2016年度のいずれも、上位3部位で全骨折のおよそ7割、上位5部位で全骨折のおよそ9割を占めていた。
(2)受診終了までの期間
 1) 4~6か月で患者の95%が受診を終了
図表5は、主な部位について、受診開始からの月数別に、該当部位の骨折による受診を終了した患者の割合を累計で示したものである5

いずれの部位も、それぞれ25~35%の患者が1か月で受診を終了していた。2か月目には「足の骨折,足首を除く(S92)」と「手首及び手の骨折(S62)」の患者の累計75%程度が、「前腕の骨折(S52)」と「下腿の骨折,足首を含む(S82)」の患者の累計60%程度が、「肩及び上腕の骨折(S42)」の患者の累計50%程度が、受診を終了していた。

「手首及び手の骨折(S62)」と「足の骨折,足首を除く(S92)」は比較的受診終了までの期間が短い患者が多く、患者の95%が受診を終了するまでにかかった期間は4か月だった。「前腕の骨折(S52)」は、これらより少し時間がかかっているものの、同じく4か月だった。「下腿の骨折,足首を含む(S82)」「肩及び上腕の骨折(S42)」は、さらに時間がかかっており、患者の95%が受診を終了するまでにかかった期間は、「下腿の骨折,足首を含む(S82)」で5か月、「肩及び上腕の骨折(S42)」で6か月だった。

部位別の入院率と手術率、および受診終了までの期間(図表6)を見比べると、入院率が相対的に高い「肩及び上腕の骨折(S42)」で受診終了までの期間が長く、入院率が低い「前腕の骨折(S52)」「手首及び手の骨折(S62)」で受診終了までの期間が短かった。手術はどの部位も2~4割程度受けているが、入院率や受診終了までの期間との関係はみられなかった。
図表5 受診開始からの月数別受診終了患者の割合/図表6 骨折部位別入院率・手術率・受診終了までの期間
 
5 本稿では、連続して同一の骨折部位がレセプトに記載されている年月を、1件の骨折による受診期間と定義し、その骨折部位が初めて記載されなかった月で受診が終了すると考え、受診が終了するまでの期間を定義した。
 2) 受診終了までの期間に変化はない
特に骨折が多い3つの部位「手首及び手の骨折(S62)」「前腕の骨折(S52)」「足の骨折,足首を除く(S92)」について、受診を終了するまでの期間を時系列で比較したものが図表7である。年度によって若干の差はあるものの、受診終了までの期間に大きな変化はなかった。
図表7 骨折部位別受診開始からの月数別受診終了患者の割合の推移
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保険研究部   准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療

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