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中国経済見通し~景気は党大会後も大丈夫なのか?

三尾 幸吉郎
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足元の輸出は回復している。17年1-7月期の輸出額(ドルベース)は前年比8.3%増と、16年の同7.7%減からプラスに転じた(図表-10)。景気回復が続いている米国、欧州EU、日本など先進国向けの輸出が好調だったほか、その恩恵を受けるASEAN向けも好調だった。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注(中国国家統計局)や貿易輸出先行指数(中国税関総署)が好調なことから、当面は高い伸びを維持すると見られる(図表-11)。
17年下期以降の輸出は1桁台前半の伸びに留まると予想している。(1)世界経済の持続的回復、(2)「一帯一路」の沿線地域への影響力拡大が引き続きプラス要因となるものの、国内生産の製造コストが上昇した中で、製造拠点を後発新興国へ移転する動きが外資系企業ばかりか国内企業にも及んできているため、輸出を抑制するマイナス要因として働くと考えている。
3.金融政策は引き締め気味

今後の金融政策の行方を探る上では、これまでの経緯を理解しておく必要がある。そこで2014年以降の動きを概観すると、14年4月には住宅価格が下落、バブル崩壊の懸念が高まった(図表-12の赤矢印)。住宅価格が下落すると不動産開発投資も減速、それまで前年比2割前後の高い伸びを示していた不動産開発投資は10%台前半まで減速した。そこで、中国人民銀行は14年11月に約2年半ぶりとなる基準金利の引き下げを実施、景気テコ入れに動いた(図表-13)。不動産規制強化で行き場を失っていた投機マネーは、この基準金利引き下げを契機に住宅市場から株式市場へと流入、株価は空前の急騰を演じた。
16年に入ると年明け早々に再び株価が急落、この時期には不動産開発投資が上向きつつあったものの、過剰生産設備を抱えた製造業の投資が1桁台前半まで減速、依然として景気下ぶれ懸念が高かったため、中国人民銀行は金融緩和環境を維持した。これを追い風に住宅価格は上昇の勢いを増し16年7月には前回高値を超えた(図表-12の点線)。そして、景気の持ち直し傾向が鮮明となった16年秋には深圳市や上海市など多くの地方政府が住宅購入規制を強化、中国人民銀行は商業銀行17行の幹部および融資担当者などを招集して住宅ローンの管理強化を要請、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も不動産融資を巡るリスク管理を強化した。16年12月に開催された中央経済工作会議では「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」として不動産市場の平穏で健全な発展を促進する方針を打ち出した。
以上の経緯に加えて、17年上期の成長率が目標(6.5%前後)を大幅に上回ったことを勘案すると、今後の金融政策は、「穏健・中立」の方針を維持しつつも、さらに引き締め方向へ調整する可能性が高いと思われる。中国国家統計局の毛盛勇報道官は7月14日の記者会見で「たとえ下期にGDP成長率が0.1-0.2ポイント低下したとしても、それは合理的で正常なことだ」と述べている。
2 住宅バブルに関しては「図表でみる中国経済(住宅市場編)~住宅バブルの現状と注目点」基礎研レター 2016-11-1を参照
(2017年08月22日「Weekly エコノミスト・レター」)
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