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東京Aクラスビルの成約賃料が再上昇。売り時判断の増加で不動産売買は拡大。~不動産クォータリー・レビュー2017年第2四半期~

竹内 一雅
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4.地価動向
野村アーバンネットによると、首都圏の住宅地価は2014年1月から15四半期連続で上昇が続いている(図表-16)。ただし、都区部では2期連続で上昇率が0.0%となり、上昇に息切れがみえ始めた(2017年7月は都区部で前期比▲0.0%の下落、首都圏で+0.2%の上昇)。中心商業地は、住宅地に比べ上昇が顕著だが、銀座で大幅な上昇が続く一方、北青山や道玄坂ではこの半年間の上昇率が0.0%で横ばいとなっている(図表-17)。
5.不動産サブセクターの動向
オフィス市況の好調が続いている。2017年前半に東京都心部で供給された代表的な大規模ビルには、大手町パークビルディングやGINZA SIX、日比谷パークフロントなどがあり、今後は赤坂インターシティAIRや目黒駅前地区再開発オフィス棟の供給が予定されている。これらのビルでは成約や内定が進んでおり、特に今後供給される赤坂インターシティAIRは竣工前にほぼ満室を達成し、目黒駅前地区再開発ビルでもアマゾンジャパンが6千坪を賃借するなど大規模テナントの確保に成功している。このため、今年中は新規供給に伴う空室率の大幅な上昇への懸念はほぼなくなった。
新築大規模ビルの好調を反映し、三幸エステートによると、2017年第2四半期の東京都心Aクラスビル6の空室率は3.2%へと低下し、成約賃料(オフィスレント・インデックス)は前期比+4.1%(前年比+9.9%)の上昇となった7(図表-18)。
都心5区の大規模ビルの空室率は、渋谷区の0.98%をはじめ非常に低い水準にあり、新規供給に伴う上昇があってもすぐに回復するなど需要の強い状況が続いている。需要の拡大は周辺部や中小型ビルへ波及しており、中型ビルの空室率は大規模ビルと近い水準にまで低下してきた(図表-19、20)
2018年から2020年にかけて東京ではオフィスビルの大量供給が計画されている。森ビルによると、この3年間の東京都区部大規模ビルの供給量の総面積は、401万㎡で昨年の調査結果とほぼ変わらなかった。ただし、昨年調査と比べると2019年の供給量が減少し、2020年がその分、増加する見込みとなった(図表-23)。
地方主要都市のオフィス市況は、東京を上回る好調にある。特に大規模ビルの空室率の改善は著しく、札幌市では1.40%、福岡市では1.56%(東京都心5区は2.20%)と、ほぼ空室がない状況が続いている(図表-24)。2017年前半には大阪で中ノ島フェスティバルタワー・ウェスト棟が、名古屋ではJRゲートタワーとグローバルゲートウェスト棟が、札幌では札幌フコク生命越山ビルが、仙台では野村不動産仙台青葉通ビルが供給されたが、順調に空室率は低下しており、今年後半は大規模ビルの供給が予定されていないことから、地方主要都市でもさらに市況の改善が進むと考えられる。
6 Aクラスビルは、エリア(都心5区等)、延床面積(1万坪以上)、基準階面積(300坪以上)、築年数(15年以内)などを条件とするガイドラインから、三幸エステートが個別ビル単位で選定している。エリア(都心5区等)内に立地し、基準階面積200坪以上でAクラスビルに該当しないビルをBクラスビル、基準階面積100坪以上200坪未満のビルをCクラスビルとしている。
7 前年同期にあたる2016年第2四半期には熊本地震の発生などにより、Aクラスビル賃料が大きく下落したことが、前年同期比での大幅な上昇につながった。なお、2016年6月にはイギリスの欧州連合からの離脱投票(Brexit)も実施された。
8 今後もホテル開発などに伴うオフィスビルの取り壊しは発生すると考えられるが、都心部での大規模開発のための滅失は当面、ピークを超えたとの評価も聞かれる。そうであれば、滅失によるストックの減少や移転が減少し、新規供給の多くが賃貸可能面積として市場に供給されることになるため、オフィス市況の緩和圧力となる。
9 アットホーム「市場動向 首都圏の居住用賃貸物件(6月) 成約数、前年同月比16ヶ月連続減。」を参照のこと。
(2017年08月08日「不動産投資レポート」)
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