2017年07月31日

鉱工業生産17年6月~生産の回復基調が鮮明に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.4-6月期の生産は前期比1.9%の高い伸び

経済産業省が7月31日に公表した鉱工業指数によると、17年6月の鉱工業生産指数は前月比1.6%(5月:同▲3.6%)と2ヵ月ぶりに上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.7%、当社予想は同1.3%)通りの結果となった。出荷指数は前月比2.3%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲2.2%と7ヵ月ぶりの低下となった。生産指数は17年1月以降、大幅低下と大幅上昇を繰り返しているが、均してみれば堅調な推移が続いていると判断される。

6月の生産を業種別に見ると、電子部品・デバイスは前月比▲2.6%と2ヵ月連続で低下したが、輸送機械(前月比4.2%)、化学工業(除く医薬品)(同3.4%)、電気機械(同5.0%)が高い伸びとなるなど、速報段階で公表される15業種中、12業種が前月比で上昇、3業種が前月比で低下した。

17年4-6月期の生産は前期比1.9%と5四半期連続で上昇し、1-3月期の同0.2%から伸びが大きく加速した。業種別には、世界的なITサイクルの改善を反映し、電子部品・デバイスが前期比1.3%と4四半期連続で上昇、国内外の設備投資の回復を背景にはん用・生産用・業務用機械が前期比4.7%の高い伸びとなったほか、国内販売の好調が続く輸送機械が前期比3.3%と2四半期ぶりに上昇した。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は17年1-3月期の前期比▲2.4%の後、4-6月期は同4.8%の高い伸びとなった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は17年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4-6月期は同0.8%となった。17年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比0.6%と2四半期連続の増加となった。16年前半に大幅に落ち込んだ企業収益は、円高の一巡や海外経済の回復に伴い16年後半以降は急回復している。17年4-6月期のGDP統計の設備投資は1-3月期の前期比0.6%から伸びを高める可能性が高いだろう。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は17年1-3月期の前期比▲0.9%の後、4-6月期は同4.2%の高い伸びとなった。耐久消費財(1-3月期:前期比▲2.8%→4-6月期:同4.6%)、非耐久消費財(1-3月期:前期比1.8%→4-6月期:同3.3%)ともに好調だった。先週末までに公表された家計調査、商業動態統計、業界統計などの消費関連指標の結果と合わせて考えると、足もとの個人消費は底堅さを増していると考えられる。GDP統計の民間消費は17年1-3月期の前期比0.3%から伸びを高めることが予想される。

2.生産は裾野の拡がりを伴った回復に

最近の実現率、予測修正率の推移 製造工業生産予測指数は、17年7月が前月比0.8%、8月が同3.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲0.3%、0.6%であった。

17年6月の生産指数を7、8月の予測指数で先延ばし(9月は横ばいと仮定)すると、17年7-9月期は前期比3.0%の高い伸びとなる。IT関連を中心とした世界的な製造業サイクルの好転を受けて輸出が堅調を維持していることに加え、ここにきて、個人消費、設備投資を中心とした国内需要が底堅さを増していることも生産の押し上げに寄与している。
IT関連が牽引する鉱工業生産 また、これまで生産の牽引役となってきたIT関連財は16年7-9月期の前期比4.3%から10-12月期が同3.0%、17年1-3月期が同2.0%と徐々に伸び率が低下し、4-6月期には同1.7%と生産全体の伸び(前期比1.9%)を若干下回った。このことはIT関連の回復ペースが若干鈍化していると同時に、生産の回復が裾野の拡がりを伴ったものとなっていることを意味する。

生産計画が下方修正される傾向があることには留意が必要だが、内外需要の増加を背景に鉱工業生産は7-9月期も堅調に推移する可能性が高いだろう。
在庫循環図を確認すると、16年7-9月期から17年1-3月期まで3四半期連続で「意図せざる在庫減少局面」に位置した後、4-6月期には「在庫積み増し局面」に移行した。ただし、4-6月期(末)の在庫指数が前期比▲0.7%、前年比▲3.1%となるなど、在庫水準は引き続き抑制された状態にある。内外需要の底堅さを踏まえれば、現時点では在庫が積み上がってしまうリスクはそれほど高くないだろう。
在庫循環図(鉱工業全体)
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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