- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 景気ウォッチャー調査(17年6月)~節目となる50まで改善~
1.景気の現状判断DI(季節調整値):3ヵ月連続で改善し、節目となる50に達する
今回の調査では、家計関連は、引き続き好調なインバウンド需要に加え、コンビニエンスストアなど小売店を中心に、空梅雨のため客数が伸びたことが景況感を押し上げた。企業関連は、金属製品や鉄鋼業などから原材料価格の上昇を懸念する声も聞かれたが、受注は既存のものだけでなく、新規も増えている企業が多くみられた。なお、今回の調査は6月25日から月末に実施されているため、7月4日の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験や、九州北部地方での記録的な豪雨による影響は織り込まれていない。
2.引き続き好調なインバウンドに、空梅雨が景況感を押し上げ
企業動向関連では、製造業(前月差+1.1ポイント)、非製造業(同+1.1ポイント)ともに改善した。コメントをみると、「鋼材価格の値上がり分を転嫁できていない。自動車関連では転嫁が進んでいるが、それ以外では大手ユーザーの抵抗が強い」(近畿・金属製品製造業)などのように、原材料費の値上がりを懸念するコメントも金属製品や鉄鋼業などでみられたが、「新たな取引先からの引き合いが確実に増えており、新規受注に至る確度も高くなっている。既存取引先からの受注も底堅く推移してきている」(北関東・一般機械器具製造業)など、前月に引き続き受注の増加に言及するコメントが目立った。
雇用関連では、「求人全体から見た正社員求人の割合が、上昇傾向にある」(南関東・職業安定所)や、「転職サイトやアルバイトサイトを利用する企業で一定期間後に正社員雇用すると記載するところが増えている。また、これまでの派遣社員雇用から正社員雇用に切替える企業も多い」(中国・求人情報誌製作会社)など、労働需給が逼迫していく中で、待遇の良い募集内容も増えているようだ。
3.景気の先行き判断DI(季節調整値):3ヵ月連続で改善し、節目となる50を上回る。
企業動向関連では、「新規案件が続々と立ち上がり、現在金型を製作中である。数か月後の量産に期待している」(南関東・プラスチック製品製造業)など、今後も受注の増加が見込まれているとするコメントが目立った。一方で、「供給能力以上の受注にはリスクがあるため、今後は受注条件を見極めて受注する必要がある」(東北・通信業)や「現状の景気が続くとみているが、受注は小口工事が多く、技術者の不足もあり、納期やコスト面を心配している」(東北・建設業)など、供給能力に制約がある中、納期やコスト面など受注の内容を吟味する必要があるとするコメントもみられた。
雇用関連では、「製造業を中心に回復傾向となっている。ただし、新規採用者が入社した後の採用のため、派遣での対応が目立っている」(東北・民間職業紹介機関)など、製造業の求人数が増えているというコメントが目立った。一方で、「求人側の採用意欲は依然として高いが、ミスマッチによる人手不足が続いている状態である」(東北・職業安定所)など、求職者と求人の条件が合わず、ミスマッチが起きているというコメントもみられた。
なお、6月については、北朝鮮は短距離のミサイル数発を日本海に発射した上旬以降、発射実験を行わなかったため、北朝鮮情勢を懸念するコメントは少なかった。但し、弾道ミサイルの発射実験を毎週のように行っていた4,5月については、「北朝鮮情勢の不透明感、欧州での相次ぐテロ事件で、海外旅行の需要の低迷が懸念される」(九州・旅行代理店/5月)や「北朝鮮の動きが定まらず、海外渡航の客は慎重にならざるを得ない。国内旅行も動きは低調なままである」(東海・旅行代理店/4月)など旅行代理店を中心に景気の先行きの判断理由として、北朝鮮情勢を挙げるコメントが多かった。7月に入り、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行っており、今後、先行きの景況感の重しになる可能性がある。
景況感は2017年度に入り、持ち直しの動きがみられる。先行きについても、人手不足が企業活動の制約になる懸念があるが、受注は引き続き好調であり、賃金の緩やかな上昇を背景に消費も緩やかに回復してきており、景況感が改善に向かうことが見込まれる。しかし、記録的な豪雨により、土砂災害や道路の損壊が起きた九州地方での景況感の悪化や、北朝鮮情勢といった地政学リスクが燻り、改善のペースは鈍化するだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
このレポートの関連カテゴリ
白波瀨 康雄
研究・専門分野
(2017年07月11日「経済・金融フラッシュ」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月29日
人的資本経営の実践に資するオフィス戦略の在り方-メインオフィスは人的資本経営実践のためのプラットフォームに -
2024年03月29日
晩年に関する不安~老後とその先の不安には「近居」が“程よい距離感” -
2024年03月29日
急速に導入が進むインドの再生可能エネルギー~2030年の国際公約達成を狙える位置に -
2024年03月29日
身体活動基準2023~座位行動時間、筋トレに関する指針が追加 -
2024年03月29日
鉱工業生産24年2月-不正問題の影響で自動車生産が一段と落ち込む
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【景気ウォッチャー調査(17年6月)~節目となる50まで改善~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
景気ウォッチャー調査(17年6月)~節目となる50まで改善~のレポート Topへ