- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 年金 >
- 年金資産運用 >
- 株主の立場からみた年金資産運用
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
リスク・シフティング仮説とリスク・マネジメント仮説
株主の立場から年金運用を検討する代表的な仮説として、リスク・シフティング仮説と、リスク・マネジメント仮説がある。前者は、株主価値最大化のために、年金運用では株式を上限まで保有するというものであり、後者は、企業の存続を意識して、安定運用を目指すものである。
これに対して、現実の年金運用では株式100%などの極端な資産配分が観察されない。また、PBGC による企業破たん時の年金基金の引継ぎ方法も修正され、破たん企業の一部の資産に対して、PBGC は租税債権者と同等な強い立場を持っている。グループ会社に対しても一定の権利を保有しており、以前よりは、積立不足の基金のPBGC への引継ぎは見られなくなっている。
Rauh(2006)では、リスク・シフティング仮説に代わるリスク・マネジメント仮説を提唱した(図表5)。これは、仮に母体企業が破たんする可能性が高まった際に、株主がリスク・シフティング仮説に基づき、年金運用でリスク資産を増やして運用し、株主価値を高めようとしたとする。この時、市場全体の株価が低下し、年金資産は大幅減少し、企業価値(株主価値)が低下したが、母体企業の破たんは免れたとする。
この場合、企業には財政状態が非常に悪化した年金基金が残ることになる。(1)株主は企業に残る少ない資金で、(2)年金不足額が解消するまで、追加的な掛金を優先して支払わなければならず、この間、(3)新規の投資や配当の支払いが制限され、財務的なフレキシビリティーが著しく低下する。そのため、株価がさらに低下することや、(4)場合によっては、事業に十分な資金が回らず、破綻する可能性がさらに高まることもある。
(2017年07月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
このレポートの関連カテゴリ
北村 智紀
北村 智紀のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2017/12/29 | 公的年金改革があると考える人はNISAやiDeCoに加入するか?-自助努力を進める可能性に関する実証分析 | 北村 智紀 | 基礎研レポート |
2017/11/30 | 公的年金の支給開始年齢が引き上げられると考える人は、自分で老後の準備を進めているか? | 北村 智紀 | 研究員の眼 |
2017/09/29 | ねんきん定期便はライフプラン設計を改善するか?-インターネット調査を利用した検証 | 北村 智紀 | 基礎研レター |
2017/07/31 | やりくりに余裕がない家計は変動金利を選択する傾向がある~家計の住宅ローン金利の決定要因分析~ | 北村 智紀 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年07月04日
金融安定性に関するレポート(欧州)-EIOPAの定期報告書の公表 -
2025年07月04日
「持ち家か、賃貸か」。法的視点から「住まい」を考える(1)~持ち家を購入することは、「所有権」を得ること -
2025年07月04日
米雇用統計(25年6月)-非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったほか、失業率が上昇予想に反して低下 -
2025年07月03日
ユーロ圏失業率(2025年5月)-失業率はやや上昇したが、依然低位安定 -
2025年07月03日
IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(14)-19の国・地域からの60社全てのIAIGsのグループ名が公開された-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【株主の立場からみた年金資産運用】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
株主の立場からみた年金資産運用のレポート Topへ