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リスク・シフティング仮説とリスク・マネジメント仮説
株主の立場から年金運用を検討する代表的な仮説として、リスク・シフティング仮説と、リスク・マネジメント仮説がある。前者は、株主価値最大化のために、年金運用では株式を上限まで保有するというものであり、後者は、企業の存続を意識して、安定運用を目指すものである。
これに対して、現実の年金運用では株式100%などの極端な資産配分が観察されない。また、PBGC による企業破たん時の年金基金の引継ぎ方法も修正され、破たん企業の一部の資産に対して、PBGC は租税債権者と同等な強い立場を持っている。グループ会社に対しても一定の権利を保有しており、以前よりは、積立不足の基金のPBGC への引継ぎは見られなくなっている。
Rauh(2006)では、リスク・シフティング仮説に代わるリスク・マネジメント仮説を提唱した(図表5)。これは、仮に母体企業が破たんする可能性が高まった際に、株主がリスク・シフティング仮説に基づき、年金運用でリスク資産を増やして運用し、株主価値を高めようとしたとする。この時、市場全体の株価が低下し、年金資産は大幅減少し、企業価値(株主価値)が低下したが、母体企業の破たんは免れたとする。
この場合、企業には財政状態が非常に悪化した年金基金が残ることになる。(1)株主は企業に残る少ない資金で、(2)年金不足額が解消するまで、追加的な掛金を優先して支払わなければならず、この間、(3)新規の投資や配当の支払いが制限され、財務的なフレキシビリティーが著しく低下する。そのため、株価がさらに低下することや、(4)場合によっては、事業に十分な資金が回らず、破綻する可能性がさらに高まることもある。
(2017年07月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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