2017年06月23日

中国経済:景気指標の総点検(2017年夏季号)~党大会までは大丈夫と囁かれる中、景気悪化のサインが点灯!

三尾 幸吉郎

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3|その他の重要な4指標
 
【電力消費量】
その他の指標では電力消費量が注目される。1-5月期の伸びは前年同期比6.4%増と16年通期の同5.0%増を1.4ポイント上回った。特に、第2次産業では3.4ポイントの大幅改善となった。但し、3月の同9.1%増をピークに4月、5月と伸びが鈍化、やや陰りが見られる(図表-11)。

【貨物輸送量】
道路貨物輸送量も経済活動の動きを読む上で重要な景気指標となる。1-5月期の伸びは前年同期比9.3%増と16年通期の同6.8%増を上回る伸びを示した。足元ではやや振れが大きくなっているものの、電子商取引(EC)の拡大を受けて趨勢的には高い伸びが続くと見られる(図表-12)。

【工業生産者出荷価格】
景気の体温と言われる物価も重要な景気指標である。5月の工業生産者出荷価格は前年同月比5.5%上昇と2月の同7.8%上昇をピークに上昇率が鈍化してきた。原油など資源エネルギー価格の下落が背景にあり、上昇率の鈍化傾向は当面続くと見られる(図表-13)。

【通貨供給量(M2)】
景気を金融面から見る代表指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。ここもとの動きを見ると、図表-14に示したように伸びが鈍化、特に5月は前年同月比9.6%増と4月の同10.5%増を0.9ポイント下回った。中国人民銀行が金融を引き締め方向にコントロールしたことが背景にある。なお、銀行貸出残高(中長期)は前年同月比20.5%増と高い伸びを維持している。
(図表-11)電力消費の推移/(図表-12)鉄道貨物と道路貨物の推移/(図表-13)工業生産者出荷価格(PPI)/(図表-14)通貨供給量(M2)の推移

3.総合指標の点検

3.総合指標の点検

(図表-15)景気評価点の推移 1|景気評価点、景気悪化のサインが点灯!
まず、「景気評価点2」を確認してみよう。これは第2章で概観した景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○=1点”、下向きであれば“×=0点”として集計した指標である(分岐点は5点)。5月の景気評価点は2点に低下、景気悪化のサインが点灯した(図表-15)。前回2点に低下した昨年6月は、民間投資が前年割れに落ち込み、景気が失速の危機に直面していた時期だった。しかし、前回は中国政府がインフラ投資を加速させたことで景気失速を免れた。今回はどの様な展開になるか要注目である。
 
2 景気評価点に関しては「景気の動向を簡単に把握できないか?」年金ストラテジー (Vol.219) September 2014を参照。
(図表-16)李克強指数(修正後)の推移 2|李克強指数(修正後)、高水準で横ばい
次に、電力消費量(工業)、道路貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを用いた「李克強指数(修正後)3」を確認して見よう。前述のとおり電力消費量(工業)の伸びは鈍化したものの、道路貨物輸送量と銀行貸出残高(中長期)は高水準の伸びを保っており、李克強指数(修正後)は高水準で横ばい推移となっている(図表-16)。
 
3 李克強指数は、李克強首相が遼寧省党委員会書記だった2007年、景気実態を表す統計として、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを重視したことに由来する。しかし、中国経済の構造的変化を勘案して、ここでは鉄道貨物を道路貨物に入れ替えた李克強指数(修正後)を掲載している。なお、3指標の加重割合は均等として計算した。
(図表-17)GDP推計値(月次) 3|経済成長率に換算すれば6.9%!
最後に、中国GDPに与える影響の大きい景気指標を用いて成長率を推計して見よう。ここでは工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数としてニッセイ基礎研究所で開発した回帰モデルで推計している。その推計結果を見ると、16年2月の前年同月比6.3%増をボトムに中国の景気は持ち直してきている。そして、5月は前年同月比6.9%増となった(図表-17)。

 
 
 

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三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2017年06月23日「Weekly エコノミスト・レター」)

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