2017年05月31日

鉱工業生産17年4月~生産の好調が続くが、在庫の積み上がりに注意

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.生産指数は消費増税前のピークを上回る

経済産業省が5月31日に公表した鉱工業指数によると、17年4月の鉱工業生産指数は前月比4.0%(3月:▲1.9%)と2ヵ月ぶりに上昇した。ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比4.5%、当社予想は同4.4%)通りの結果となった。出荷指数は前月比2.7%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比1.5%と5ヵ月連続の上昇となった。鉱工業生産指数は103.8(15年=100)となり、消費税率引き上げ前のピーク(14年1月の103.2)を上回った。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 4月の生産を業種別に見ると、米国、中国向けの輸出が弱含んでいるものの、新型車効果などから国内販売が好調を続ける輸送機械が前月比10.8%の大幅増産となったほか、世界的なITサイクルの改善、設備投資の回復を受けて電子部品・デバイス(前月比5.2%)、はん用・生産用・業務用機械(同9.2%)も高い伸びとなった。

速報段階で公表される15業種中11業種が前月比で上昇、4業種が低下した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は17年1-3月期の前期比▲2.4%の後、4月は前月比7.1%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は17年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4月は前月比2.9%となった。
財別の出荷動向 17年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比0.2%と小幅ながら2四半期連続の増加を確保した。16年前半に大幅に落ち込んだ企業収益は、円高の一巡や海外経済の回復に伴い16年後半にはすでに増加に転じている。企業収益の回復に伴う潤沢なキャッシュフローを背景として、17年度入り後の設備投資は持ち直しの動きがより明確になる可能性が高い。

消費財出荷指数は17年1-3月期の前期比▲0.9%の後、4月は前月比5.1%となった。耐久消費財が7.6%(1-3月期:前期比▲2.8%)、非耐久消費財が前月比2.5%(1-3月期:前期比1.8%)といずれ高い伸びとなった。1-3月期のGDP統計の民間消費は前期比0.4%と高めの伸びとなった。昨日までに公表された4月の家計調査、商業動態統計、業界統計などの消費関連指標の結果と合わせて考えると、17年度入り後も個人消費の持ち直しは継続していると判断される。

2.4-6月期は増産ペースが加速する公算、在庫は積み増し局面へ

製造工業生産予測指数は、17年5月が前月比▲2.5%、6月が同1.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲1.8%、▲0.6%であった。

予測指数を業種別にみると、5月は4月の高い伸びの反動で多くの業種が減産計画となっている。特に、4月に前月比で二桁の伸びを記録した輸送機械は5月に前月比▲15.6%の大幅減産計画となっているが、6月には同7.5%と持ち直す計画になっている。輸送機械は、新型車の投入とその反動から月々の振れが非常に大きくなっていると考えられる。現時点では、生産が悪化する際の特徴である生産計画の下方修正は発生していない(4月の実現率、5月の予測修正率はいずれもプラス)ため、先行きについてあまり心配する必要はないだろう。
 
17年4月の生産指数を5、6月の予測指数で先延ばしすると、17年4-6月期は前期比2.7%となる。生産計画が下方修正される傾向があることを考慮しても、4-6月期の生産の伸びが1-3月期の前期比0.2%を大きく上回ることは確実とみられる。IT関連を中心とした世界的な製造業サイクルの好転を受けて輸出が好調を維持していることに加え、ここにきて国内需要が持ち直していることも生産の押し上げに寄与している。
在庫循環図(鉱工業全体) ただし、ここにきて在庫指数の上昇ペースが高まっていることには注意を要する。在庫循環図を確認すると、16年7-9月期に「在庫調整局面」から「意図せざる在庫減少局面」に移行した後、17年1-3月期まで3四半期連続で同じ局面に位置したが、17年4月単月では「在庫積み増し局面」に移行した。4月は輸送機械の在庫指数が前月比15.8%の急上昇となったが、これは輸出向けの船待ち在庫の可能性があるため、5月以降の動きを見る必要があるが、その他の業種でも在庫が増加傾向となっている。

在庫指数の上昇は企業行動の積極化を反映したものと捉えることも可能だが、その一方で、循環的には景気回復局面の後半に入ったという見方も出来る。最終需要が企業の想定を下回った場合には、これまでよりも在庫が積み上がりやすくなっていることには留意が必要だろう。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2017年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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