2017年05月02日

年金改革ウォッチ 2017年5月号~ポイント解説:資金運用部会の本来の課題

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任   中嶋 邦夫

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1 ―― 先月までの動き

先月は、年金積立金の管理運用について審議を行う専門の部会として、社会保障審議会に「資金運用部会」が設置されました。当面は、昨年12月に成立した年金改革法に基づく年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革の施行(本年10月)に向けて、必要な事項を順次審議していく予定です。
 
 
○社会保障審議会 企業年金部会 確定拠出年金の運用に関する専門委員会
4月18日(第5回)  運用商品提供数の上限・指定運用方法の基準等、その他
 URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000162175.html  (配布資料)
 
○社会保障審議会 資金運用部会
4月21日(第1回)  部会長・部会長代理の選出、今後の審議スケジュール など
 URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000162885.html  (配布資料)
 

2 ―― ポイント解説:資金運用部会の本来の課題

2 ―― ポイント解説:資金運用部会の本来の課題

新設された資金運用部会にとって、当面の役割はGPIF改革の実施準備ですが、本来の定常的な役割は年金積立金の運用目標の立案や運用状況の確認です。本稿では、本来の役割の課題を確認します。

1|運用目標立案の課題:資産配分決定過程の透明化と、財政見通しの前提策定との連携

運用目標の立案は、年金積立金の運用成果を大きく左右します。年金積立金の運用成果には、日々の運用をどのように行うかよりも、どのような資産配分(基本ポートフォリオ)で運用するかが大きく影響するためです。資産配分はGPIFで決定されますが、その前提となる目標利回りや許容リスクは厚労大臣が決定します。今回のGPIF改革の一環で、大臣は社会保障審議会(資金運用部会)に諮問して、目標利回りや許容リスクを決めることになりました。
図表1 公的年金の積立金運用の意思決定構造 2014年10月31日の中期目標変更の際には、大臣は独立行政法人評価委員会年金部会の意見を聞いた上で変更したとされていますが*1、この部会では変更当日しか議論されず、かつGPIFの運用委員会には事前に案が提出される*2など、変更を決定する過程が不透明でした。新たな部会では、透明性を持って十分に検討されることが期待されます。

しかし、懸念もあります。初回会合で示された新部会の役割の中に、年金財政の将来見通しで使う運用利回りの策定が入っていませんでした。将来見通しの運用利回りは中期目標の前提となるもので、長期金利の見通しに資産運用の効果(分散投資効果)を加味して策定されます。長期金利の見通しは経済モデルを使って客観的に作られますが、分散投資効果の設定には「どの程度の運用リスクを許容するか」という主観的な判断が影響します。つまり、この部分が新部会と無関係に決まると、新部会における中期目標の議論が形式的になります。

次の将来見通しは、2019年までに作成される予定です。先日公表された将来推計人口は、以前の将来見通しに比べて少子化が抑えられる内容になっていました。次の将来見通しでは、このような人口前提の下で積立金運用のリスクをどこまでとるのか(許容するのか)が、論点となるでしょう。この議論に新部会がどの程度関与できるのかが、注目されます。
2|運用状況確認の課題:評価基準の明確化
図表2 運用利回りの実績と将来見通しの前提の比較 運用状況を確認する際は、事前に立てた中期目標や年金財政の将来見通しにおける前提が、実績を評価する基準となります。これまで公表されてきた運用状況に関する報告書では、将来見通しのうち短期の前提と実績との比較に力点が置かれ、資産構成を決定する基礎となった中長期の前提との比較はあまり意識されていませんでした。

確かに、年金財政が将来見通しどおりに推移しているかという観点からは、短期の各年度の前提が比較の対象となります。しかし、短期の前提は、実質的な運用利回りがマイナスになる年度もあるなど、足下の経済状況を反映した経済見通しに基づいています。他方、運用成果を左右する資産構成は、中長期の前提に基づいて策定されています。運用状況が中期目標に沿っているかの確認は、これまで将来シミュレーションによって行われてきましたが、今後は実績と中長期の前提との比較も注視されるべきでしょう。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

(2017年05月02日「保険・年金フォーカス」)

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