2017年04月25日

欧州大手保険グループの2016年決算状況について(1)-低金利環境下での各社の生命保険事業の地域別の業績や収益状況はどうだったのか-

文字サイズ

(2)地域別の業績-2015年との比較-
2015年との比較では、全体では、減収増益となっている。

主力の欧州が減収増益となっているのは、計画された伝統的な貯蓄商品の減少(5.7%)とよりよいリスク・リターン特質を有する商品へのリバランスを行ったことによる。ユニットリンク型商品の収入は株式市場のボラティリティの影響を受けて10.9%減少した。保障・医療商品も、ドイツにおいて2015年に医療保険が大幅に進展したことの反動で12.4%減少したことにより、全体でも2.8%減少した。以上の結果、新契約価値は1,256百万ユーロで14%増加した。
生命保険事業(Life Segment)の地域別内訳(2015年から2016年に向けての増加額と進展率)
(3)投資関係損益を巡る状況
(3-1)投資スプレッドと保証利率の状況
2016年末の平均保証利率は1.73%であり、2010年の2.30%からの6年間で0.57%ポイント低下している。これに対して、投資利回りは2016年に3.21%で、2010年の4.30%からの6年間で1.09%ポイント低下している。その結果、両者の差額としてのスプレッドは1.48%と、この6年間で0.52%ポイント低下している。
生命保険事業における投資利回りと保険負債保証利率の推移
一方で、2016年の新契約の保証利率は0.44%であるのに対して、再投資リターンは2.02%となっており、両者の差額としてのスプレッドは1.58%となった。一定水準のプラスを確保しているが、こちらの水準も毎年低下してきている。
新契約保証利率と再投資利回りの推移
(3-2) デュレーション・マッチングの状況
Generaliの2016年末の債券のデュレーションは8.4年で、固定利付資産と負債とのデュレーション・ギャップは▲0.9年(負債が長い)となり、資産のデュレーションの長期化を図ることで、着実にデュレーション・ギャップの解消を図ってきている。
資産と負債のデュレーション・ギャップ
(4)新契約の状況
(4-1)新契約の商品ポートフォリオ
Generaliは、欧州において金利低下が進む中で、イタリアやドイツを中心に、保証利率の引き下げに加えて、無保証等の低資本集約保証商品のウェイトを高めてきており、2015年においては新契約保険料の8割、保有責任準備金の6割弱を占める形になっていた。

以下の図表にはないが、2016年には、低資本集約保証商品の責任準備金のウェイトがさらに2%ポイント上昇したとしている。
低資本集約保証商品(Low capital intensity guarantee)の構成比の推移
また、新契約ポートフォリオの地域別状況については、以下の図表の通りとなっている。
2015年から2016年にかけては、ほぼ各国で、貯蓄商品の構成比が低下して、保障商品の構成比が上昇しており、グループ全体では、貯蓄商品の構成比が59%から57%に低下し、保障商品の構成比が16%から19%に上昇している。
生命保険新契約ポートフォリオの地域別状況
(4-2)新契約マージンの状況
新契約マージンとIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。
構成比は低いものの、中東欧やその他欧州の新契約マージンが高くなっている。一方で、フランスのマージンやIRRは他国に比べて低い水準となっている。
生命保険新契約マージンの地域別状況
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

(2017年04月25日「基礎研レポート」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州大手保険グループの2016年決算状況について(1)-低金利環境下での各社の生命保険事業の地域別の業績や収益状況はどうだったのか-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州大手保険グループの2016年決算状況について(1)-低金利環境下での各社の生命保険事業の地域別の業績や収益状況はどうだったのか-のレポート Topへ