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2017年03月31日
3――日本の財政収支の恒常的な赤字の原因は、拡大する社会保障給付に対して、財源となる社会保障負担や税収が十分に増加していないことが主因
以下では、基礎的財政収支を要因分解して、1993年以降の基礎的財政収支の赤字の主因が何なのか明らかにしたい。それに先立って、基礎的財政収支を構成する項目について、国民経済計算(2008SNA基準)の一般政府の所得支出勘定における項目を組み替えて集計し、図表8の通り、便宜的に分類した。
ただし、この図表では各項目の変化と赤字額の変化との関係がわかりにくいため、基礎的財政収支が均衡に近い1992年を基準年とし、上記主要5項目の変化が1993年以降どれだけ基礎的財政収支の赤字の変化に寄与したかについて表したものが図表10である。
具体的には、基礎的財政収支を構成する主要5項目について、各年の水準から1992年水準を差し引いて、積み上げたものである(単年ベース)。グラフのプラス側は基礎的財政収支の赤字拡大要因を意味しており、1992年と比較して歳入サイドが減少したこともしくは歳出サイドが増加したことを表している。マイナス側は赤字縮小要因を意味しており、歳入サイドが増加したこともしくは歳出サイドが減少したことを表している。
各項目別の傾向を見ると、歳出サイドでは、税収が2014年と2015年を除いて1992年の水準を下回っている一方で、社会保障負担はどの年も1992年の水準を上回っている。歳出サイドでは、社会保障給付がどの年も1992年の水準を上回っている。政府最終消費支出は徐々に増加し、高止まりしている。公共投資は1990年代では1992年の水準を上回っているが、2000年以降は減少しており、期間を通しては減少傾向にある。したがって、税収、社会保障給付、政府最終消費支出は赤字拡大要因、社会保障負担、公共投資は赤字縮小要因である。
具体的には、基礎的財政収支を構成する主要5項目について、各年の水準から1992年水準を差し引いて、積み上げたものである(単年ベース)。グラフのプラス側は基礎的財政収支の赤字拡大要因を意味しており、1992年と比較して歳入サイドが減少したこともしくは歳出サイドが増加したことを表している。マイナス側は赤字縮小要因を意味しており、歳入サイドが増加したこともしくは歳出サイドが減少したことを表している。
各項目別の傾向を見ると、歳出サイドでは、税収が2014年と2015年を除いて1992年の水準を下回っている一方で、社会保障負担はどの年も1992年の水準を上回っている。歳出サイドでは、社会保障給付がどの年も1992年の水準を上回っている。政府最終消費支出は徐々に増加し、高止まりしている。公共投資は1990年代では1992年の水準を上回っているが、2000年以降は減少しており、期間を通しては減少傾向にある。したがって、税収、社会保障給付、政府最終消費支出は赤字拡大要因、社会保障負担、公共投資は赤字縮小要因である。
また、図表11は図表10における単年の増減を1993年から2015年まで累計したものである(累計ベース)。基礎的財政収支は、1992年の水準が2015年まで継続した場合に比べて、602.1兆円(2015年名目GDP比:113.1%)も累積赤字が拡大している。この累積赤字がネットの政府純債務残高の増加をもたらしている。
内訳を見ると、社会保障給付は大きく増加した結果、746.7兆円(同140.3%)と最大の赤字拡大要因となっている。それに対して、社会保障給付の財源となるべき社会保障負担と税収については、社会保障負担は増加し、286.9兆円(同53.9%)の累積赤字縮小要因となっているが、社会保障給付の増加には到底追いついていない。税収にいたっては減少しており、170.7兆円(同32.1%)の累積赤字拡大要因となっている。この3項目の合計では630.5兆円(同118.5%)の累積赤字拡大要因と、基礎的財政収支の602.1兆円を上回っており、大きく増加している社会保障給付に対して、社会保障負担と税収の増加が不十分であることが恒常的な基礎的財政収支の赤字の原因であると言える。また、政府最終消費支出と公共投資の合計でも100兆円あまり累積赤字が拡大しているが、主因とは言い難い。
内訳を見ると、社会保障給付は大きく増加した結果、746.7兆円(同140.3%)と最大の赤字拡大要因となっている。それに対して、社会保障給付の財源となるべき社会保障負担と税収については、社会保障負担は増加し、286.9兆円(同53.9%)の累積赤字縮小要因となっているが、社会保障給付の増加には到底追いついていない。税収にいたっては減少しており、170.7兆円(同32.1%)の累積赤字拡大要因となっている。この3項目の合計では630.5兆円(同118.5%)の累積赤字拡大要因と、基礎的財政収支の602.1兆円を上回っており、大きく増加している社会保障給付に対して、社会保障負担と税収の増加が不十分であることが恒常的な基礎的財政収支の赤字の原因であると言える。また、政府最終消費支出と公共投資の合計でも100兆円あまり累積赤字が拡大しているが、主因とは言い難い。
(2017年03月31日「基礎研レポート」)
神戸 雄堂
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