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- 地方交付税の不交付団体増加が意味することとは~「平成28年度普通交付税の算定結果等」について~
2016年08月05日
■要旨
先般、総務省が公表した「平成28年度普通交付税の算定結果等」によると、地方交付税の不交付団体は、H22年度以降増加傾向にあり、特にH27年度からH28年度にかけては60団体から77団体へと大きく増加している。では、このことは日本の地方財政が着実に改善していることを示しているのだろうか。本稿では、不交付団体の増減要因、交付団体・不交付団体それぞれの特色を踏まえたうえで、不交付団体の増加が意味することについて解説する。
1 全地方公共団体数は1,765団体
■目次
1――地方交付税の不交付団体は増加傾向。その主因は地方税収の増加
2――交付団体は人口規模と地方交付税への依存度が逆相関。
不交付団体は人口規模に拠らない。
3――不交付団体増加の意味することとは
先般、総務省が公表した「平成28年度普通交付税の算定結果等」によると、地方交付税の不交付団体は、H22年度以降増加傾向にあり、特にH27年度からH28年度にかけては60団体から77団体へと大きく増加している。では、このことは日本の地方財政が着実に改善していることを示しているのだろうか。本稿では、不交付団体の増減要因、交付団体・不交付団体それぞれの特色を踏まえたうえで、不交付団体の増加が意味することについて解説する。
1 全地方公共団体数は1,765団体
■目次
1――地方交付税の不交付団体は増加傾向。その主因は地方税収の増加
2――交付団体は人口規模と地方交付税への依存度が逆相関。
不交付団体は人口規模に拠らない。
3――不交付団体増加の意味することとは
1――地方交付税の不交付団体は増加傾向。その主因は地方税収の増加
地方交付税の不交付団体とは、国から地方交付税の交付を受けずに、財政運営を行っている地方公共団体(都道府県や市町村)で、H21年度以降、都道府県は東京都のみ、残りは全て市町村となっている。リーマンショック後の景気後退によって、H19・20年度をピークに不交付団体数及び全地方公共団体に対する割合も減少したが、H22年度以降は増加傾向にある。この要因について考察する。
地方交付税の94%を占める普通交付税の額は、簡略化すると、財政運営に必要とされる「基準財政需要額」に対して、地方税等収入に基づき算定される「基準財政収入額」が下回った際に、不足分を解消するように決定される。したがって、基準財政需要額が安定的だと考えれば、不交付団体の増加(減少)の主因として、地方税収の増加(減少)が考えられる。
実際に、H15年度以降は、不交付団体の割合と地方税収の間には高い相関関係が見られる。H22年度以降の不交付団体の増加については、リーマンショックや東日本大震災後の緩やかな景気回復が原因と考えられる。また、H26年度から27年度にかけての増加は、H26年度に実施された消費税率引き上げによる地方消費税収効果がH27年度から本格的に現れたことも原因と考えられる。
地方交付税の94%を占める普通交付税の額は、簡略化すると、財政運営に必要とされる「基準財政需要額」に対して、地方税等収入に基づき算定される「基準財政収入額」が下回った際に、不足分を解消するように決定される。したがって、基準財政需要額が安定的だと考えれば、不交付団体の増加(減少)の主因として、地方税収の増加(減少)が考えられる。
実際に、H15年度以降は、不交付団体の割合と地方税収の間には高い相関関係が見られる。H22年度以降の不交付団体の増加については、リーマンショックや東日本大震災後の緩やかな景気回復が原因と考えられる。また、H26年度から27年度にかけての増加は、H26年度に実施された消費税率引き上げによる地方消費税収効果がH27年度から本格的に現れたことも原因と考えられる。
2――交付団体は人口規模と地方交付税への依存度が逆相関。不交付団体は人口規模に拠らない。
地方税収は、企業数が多く、また人口規模が大きく、勤労世代の割合の高い都心部で多くなる傾向がある。逆に言えば、人口規模が小さい団体ほど、交付団体となりやすく、また地方交付税への依存度が高いと推測される。
そこで、全地方公共団体の95%以上を占める交付団体を対象に「人口規模」と「歳入に対する地方交付税の割合(地方交付税への依存度)」との関係について見ると、推測通り逆相関が見られる(相関係数▲0.52)。
一方で、不交付団体を見ると、都道府県は東京都のみ、市町村においてはH28年度に不交付団体から交付団体となった団体はなく、不交付団体は17団体の純増(60団体→77団体)となった。個別市町村に着目すると、都心部の団体が多いが、川崎市を除いて人口は50万人未満であり、不交付団体が必ずしも人口規模が大きいとは言えない。大半は巨額の固定資産税収が期待できる発電所所在地や法人住民税収に恵まれる企業城下町、観光資源を生かした観光地等に分類される。このように不交付団体は極めて例外的な存在にとどまっている。
そこで、全地方公共団体の95%以上を占める交付団体を対象に「人口規模」と「歳入に対する地方交付税の割合(地方交付税への依存度)」との関係について見ると、推測通り逆相関が見られる(相関係数▲0.52)。
一方で、不交付団体を見ると、都道府県は東京都のみ、市町村においてはH28年度に不交付団体から交付団体となった団体はなく、不交付団体は17団体の純増(60団体→77団体)となった。個別市町村に着目すると、都心部の団体が多いが、川崎市を除いて人口は50万人未満であり、不交付団体が必ずしも人口規模が大きいとは言えない。大半は巨額の固定資産税収が期待できる発電所所在地や法人住民税収に恵まれる企業城下町、観光資源を生かした観光地等に分類される。このように不交付団体は極めて例外的な存在にとどまっている。
3――不交付団体増加の意味することとは
最近の不交付団体数の増加は、財源面で国から自立している団体の増加を意味しており、喜ばしいことであるが、H28年度でさえもH19・20年度の半数程度の水準であり、全地方公共団体の95%以上が交付団体、すなわち財源面で国に依存している。さらに、歳入に対する地方交付税の割合が50%超の団体も148団体(全地方公共団体の8.4%)存在する。不交付団体においても、発電所に係る固定資産税の減価償却による減少、法人住民税の景気等変動による減少の可能性があるなど必ずしも安定的とは言い難く、不交付団体の増加が地方財政全体の本質的な改善を示しているわけではない。
また、今後の不交付団体数についても、現行制度のままでは、財源面で国に依存する地方公共団体が大半を占める現状から大きく改善されず、むしろ少子高齢化による人口減少によって、基準財政需要額よりも基準財政収入額の減少度合いが大きくなり、地方交付税への依存度が更に高まることが予想される。しかし、国の財政事情を踏まえると、ますます各団体の自立が求められるだろう。一方で、現行の地方交付税制度には、基準財政収入額に関わらず、すべての地方公共団体が一定の行政サービスを提供するための財源保障機能があるため、各団体の自立意欲を削いでしまうという指摘もある。今後望まれるのは、各団体が能動的に、安定的な財源の確保や適切な歳出抑制に取り組むことであり、地方税制と地方交付税制度の抜本的な見直しが必要であるだろう。
また、今後の不交付団体数についても、現行制度のままでは、財源面で国に依存する地方公共団体が大半を占める現状から大きく改善されず、むしろ少子高齢化による人口減少によって、基準財政需要額よりも基準財政収入額の減少度合いが大きくなり、地方交付税への依存度が更に高まることが予想される。しかし、国の財政事情を踏まえると、ますます各団体の自立が求められるだろう。一方で、現行の地方交付税制度には、基準財政収入額に関わらず、すべての地方公共団体が一定の行政サービスを提供するための財源保障機能があるため、各団体の自立意欲を削いでしまうという指摘もある。今後望まれるのは、各団体が能動的に、安定的な財源の確保や適切な歳出抑制に取り組むことであり、地方税制と地方交付税制度の抜本的な見直しが必要であるだろう。
(2016年08月05日「基礎研レター」)
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