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中国経済:2016年の概況と2017年の注目点~住宅バブル、自動車販売、トランプシフトの行方に注目!
三尾 幸吉郎
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3.消費は堅調、投資は減速後横ばい、輸出には底打ちの兆し
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを見ると、1-3月期は前年同期比10.7%増、4-6月期は同7.3%増(推定)、7-9月期は同6.6%増(推定)、10-12月期は同7.8%増(推定)と、2015年通期の前年比10.0%増から1桁台後半へ減速したあと横ばいで推移した。図表-9に示した業種別を見ると、全体の3分の1を占める製造業は4-6月期の同0.2%増(推定)をボトムに2四半期連続で伸びを高め、不動産開発投資も10-12月期には同10.2%増(推定)と2桁台を回復した。一方、好調だったインフラ投資は4-6月期の同22.2%増(推定)をピークに10-12月期には同11.4%増(推定)へ鈍化、息切れ感がある。
4.金融政策は景気重視からバブル退治へ
2016年の金融政策の動きを振り返ると、年明けに株価が急落し、人民元が資金流出懸念から売られる中で、中国人民銀行は3月1日に市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を0.5%引き下げた(図表-11)。過剰設備・過剰債務の調整を進める上で、その痛みを和らげるための措置とされた。また、ドル売り元買い介入が増える中で、金融市場に人民元建て資金を供給する必要があったことも背景と見られる。また、中国人民銀行は貸出・預金の基準金利の引き下げを見送った(図表-11)。年明けの中国では景気が大きく下振れしたため、市場では利下げ期待が浮上していた。しかし、原油価格が底打ちしたことや春節(旧正月)に食品価格が急騰したため、消費者物価は上昇率を高めていた。また、住宅バブル懸念が強まったことも利下げを見送った背景のひとつと見られる。住宅価格の動きを見ると、今年7月には前回高値(2014年4月)を越えて最高値を更新中である2。また、12月の住宅価格を見ると、70都市平均では前回高値を小幅に(5.8%)上回ったに過ぎないものの、深圳市では前回高値から78.1%上昇、上海市では同46.5%上昇、北京市では同34.4%上昇するなど巨大都市では住宅バブル懸念が強まってきた。すなわち、2016年9月までは、景気を重視するスタンスで臨み、住宅バブルの膨張に関しては本格的な対策を講じなかったと言えるだろう。
2016年1-9月期の実質成長率が前年同期比6.7%増となり、目標としていた“6.5-7%”の下限を上回るのが確実となった9月末頃に、金融政策の重点は“景気重視”から“住宅バブル退治”へ移行したと見られる。10月の国慶節連休前後には深圳市や上海市など多くの地方政府が住宅購入規制を強化する方向に動き出した。また、中国人民銀行は10月12日に、商業銀行17行の幹部および融資担当者などを招集して住宅ローンの管理強化を要請した。中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も、不動産融資を巡るリスク管理を強化する方針を明らかにした。中国の中央政府と地方政府が一斉にバブル退治に向けて動き出した。住宅ローンが前年比35%増と急拡大した中で、住宅価格が急落した時のダメージを最小限に抑えるためと考えられる。2 住宅価格は、中国国家統計局が毎月公表する「70大中都市住宅販売価格変動状況」の中で、新築分譲住宅価格(除く保障性住宅)を用いている。また、2016年1月以降の2010年基準指数及び70都市平均を定期公表されてないためニッセイ基礎研究所で推定している。
(2017年01月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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