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2017年01月11日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(2)-EIOPAの報告書の概要報告-
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1―はじめに
前回のレポートでは、EIOPA(欧州保険年金監督局)が2016年12月16日に公表した「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2016(Report on long-term guarantees measures and measures on equity risk 2016)」1及び2016年12月15日に公表した「2016 EIOPA保険ストレステスト報告書(2016 EIOPA Insurance Stress Test Report)」2に基づいて、EU(欧州連合)のソルベンシーIIにおける長期保証(Long-Term Guarantees:LTG)措置及び株式リスク措置についての保険会社の適用状況やその財政状態に及ぼす影響について、全体的な状況の概要を報告した。
今回のレポートは、EIOPAの前者の報告書の2番目のセクションに記載されている措置毎の国別の適用状況やその財政状態への影響等の分析結果について報告する3。
1 EIOPAのプレス・リリース資料 https://eiopa.europa.eu/Publications/Press%20Releases/2016-12-16%20LTG%20Report_final.pdf
2 EIOPAのプレス・リリース資料 https://eiopa.europa.eu/Publications/Press%20Releases/2016-12-15%20Insurance%20Stress%20Test%20ResultsFinalFinal.pdf
3 前回のレポートで述べたように、以下の図表及び図表の数値は、特に断りが無い限り、EIOPAの「長期保証措置と株式リスクに対する措置に関する報告書2016」からの抜粋によるものであり、必要に応じて、筆者による分析数値を加えたり、表の項目の順番を変更する等の修正を行っている。
今回のレポートは、EIOPAの前者の報告書の2番目のセクションに記載されている措置毎の国別の適用状況やその財政状態への影響等の分析結果について報告する3。
1 EIOPAのプレス・リリース資料 https://eiopa.europa.eu/Publications/Press%20Releases/2016-12-16%20LTG%20Report_final.pdf
2 EIOPAのプレス・リリース資料 https://eiopa.europa.eu/Publications/Press%20Releases/2016-12-15%20Insurance%20Stress%20Test%20ResultsFinalFinal.pdf
3 前回のレポートで述べたように、以下の図表及び図表の数値は、特に断りが無い限り、EIOPAの「長期保証措置と株式リスクに対する措置に関する報告書2016」からの抜粋によるものであり、必要に応じて、筆者による分析数値を加えたり、表の項目の順番を変更する等の修正を行っている。
2―措置毎の国別の適用状況(適用会社及びSCR比率への影響等)-その1-
この章では、UFR(Ultimate Forward Rate:終局フォワードレート)の使用、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)の適用状況について、その国別の適用会社数やSCR(Solvency Capital Requirement:ソルベンシー資本要件)比率への影響を報告する。
1|リスクフリー金利の補外(UFRの使用)
リスクフリー金利の補外としてのUFRの使用については、オプションではなく、技術的準備金を算出するために、全ての保険会社に強制される。従って、EIOPAの報告書では、この措置の適用状況ではなく、リスクフリー金利を決定する要因であるUFRの水準やLLP(Last Liquid Point:最終流動性点)及びUFRへのCP(Convergence Period:収束期間)等の前提を変更した場合の感応度について報告している。これは、2016年の保険ストレステストの参加会社に対して要求されたものである。
ただし、感応度のシナリオや参照日(2015年12月31日又は2016年1月1日が最も多い)等は、各社毎に異なっているため、集計結果も、必ずしも市場全体を代表しているものではない、としている。
具体的には、ユーロ圏の国からの会社について、以下の図表の通りとなっているが、これらの影響分析は極めて限定された技術的準備金しかカバーしておらず、いかなるシナリオも0.01%を超える市場シェアの技術的準備金をカバーしていない、としている。
これによると、数値にかなりのばらつきがあり、シナリオが各社の判断によっていることもあることから、市場全体の状況を適切に示しているとはいえないように思われる。
1|リスクフリー金利の補外(UFRの使用)
リスクフリー金利の補外としてのUFRの使用については、オプションではなく、技術的準備金を算出するために、全ての保険会社に強制される。従って、EIOPAの報告書では、この措置の適用状況ではなく、リスクフリー金利を決定する要因であるUFRの水準やLLP(Last Liquid Point:最終流動性点)及びUFRへのCP(Convergence Period:収束期間)等の前提を変更した場合の感応度について報告している。これは、2016年の保険ストレステストの参加会社に対して要求されたものである。
ただし、感応度のシナリオや参照日(2015年12月31日又は2016年1月1日が最も多い)等は、各社毎に異なっているため、集計結果も、必ずしも市場全体を代表しているものではない、としている。
具体的には、ユーロ圏の国からの会社について、以下の図表の通りとなっているが、これらの影響分析は極めて限定された技術的準備金しかカバーしておらず、いかなるシナリオも0.01%を超える市場シェアの技術的準備金をカバーしていない、としている。
これによると、数値にかなりのばらつきがあり、シナリオが各社の判断によっていることもあることから、市場全体の状況を適切に示しているとはいえないように思われる。
(2017年01月11日「保険・年金フォーカス」)
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