2017年01月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~13年1月以来の二桁増を記録

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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16年11月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比11.4%増と、前月の同1.4%減から大きく上昇した(図表1)。輸出は16年初から海外需要の底入れの動きに資源価格の上昇が加わって緩やかに増加している。輸出の伸び率は振れ幅が大きく、11月は2013年1月以来の二桁増まで上昇したものの、基調としては緩やかな伸びに落ち着くものと予想される。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN6ヵ国輸出の伸び率(3ヵ月移動平均)
タイの16年11月の輸出額は前年同月比10.2%増(前月:同4.2%減)と上昇し、2ヵ月ぶりのプラスとなった。16年以降、輸出の伸びは上下に大きく振れているものの、金額ベースでは緩やかな増加傾向が続いている。一方、輸入額は前年同月比3.0%増と、前月の同6.5%増から低下した。結果、貿易収支は15.4億ドルの黒字(前月から12.9億ドル増加)と、19ヵ月連続の黒字となった(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同9.8%増(前月:同2.7%減)と2ヵ月ぶりのプラスとなった(図表4)。機械・装置(同25.2%増)や電子製品・部品(同5.6%増)、家電製品(同5.8%増)、自動車・部品(同5.9%増)など幅広い品目が増加した。また鉱業・燃料は同9.4%増(前月:同22.1%減)と、石油製品を中心に大きく上昇し、2年2ヵ月ぶりのプラスとなった。さらに、農産品・加工品は同12.2%増(前月:同6.5%減)と、中国の農産物需要の増加を受けてコメ(同25.9%増)やゴム(同15.6%増)を中心に上昇し、2ヵ月ぶりのプラスとなった。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの16年11月の輸出額は前年同月比7.5%増(前月:同6.9%減)と上昇した。輸出の伸び率は16年初に資源価格が上昇に転じてから緩やかに持ち直しており、足元では底打ちの動きがみられる。一方、輸入額は前年同月比10.6%増と、前月の同4.8%減から上昇した。結果、貿易収支は20.9億ドルの黒字と、前月から2.5億ドル黒字が縮小した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同13.5%増(前月:同0.4%増)と主力の電気・電子製品を中心に上昇し、2014年4月以来の二桁増を記録した(図表6)。また動植物性油脂も同27.6%増(前月:同5.7%増)と、パーム油・同製品を中心に大きく上昇した。鉱物性燃料は同13.2%減となり、依然として原油・天然ガスを中心に減少傾向が続いているものの、前月の同21.5%減からマイナス幅が縮小した。また製造品も同4.0%減(前月:同28.3%減)と、アパレルやゴム手袋を中心にマイナス幅が縮小した。
(図表5)マレーシア貿易収支/(図表6)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの16年11月の輸出額は前年同月比21.3%増(前月:同5.1%増)と大きく上昇し、14年8月以来の二桁増を記録した。輸出は16年から緩やかに持ち直すなか、足元ではコモディティ価格の上昇も追い風となっていることが11月の急伸に繋がった。一方、輸入額は前年同月比9.9%増と、前月の同3.6%増から上昇した。結果、貿易収支は8.4億ドルの黒字と、前月から4.0億ドル黒字が縮小した(図表8)。

輸出を品目別に見ると、それぞれ全体の1割強を占める石油ガスが同26.3%減(前月:同23.5%減)と引き続き全体の重石となる一方、製造品が同26.0%増(前月:同5.8%増)とパーム油を中心に上昇した(図表7)。また鉱業製品は同50.1%増と、高水準だった前月(同29.8%増)から一段と上昇した。さらに農産品も同25.1%増と、前月(同15.9%増)から一段と上昇し、2ヵ月連続の二桁増を記録した。
(図表7)インドネシアの貿易収支/(図表8)インドネシア輸出の伸び率(品目別)

(2017年01月10日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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