2016年12月02日

2017年はどんな年? 金融市場のテーマと展望~金融市場の動き(12月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.金融市場(11月)の動きと当面の予想

(10年国債利回り)
11月の動き 月初▲0.0%台半ばからスタートし、月末は0.0%台前半に。 
月初、米大統領選への不透明感から国債が買われ、▲0.0%台後半へと低下。9日の大統領選開票でトランプ氏の優勢が伝わるとリスク回避姿勢が強まり、マイナス幅を広げた。しかし、トランプ氏勝利を受けて米金利が上昇したことを受けて、翌10日には▲0.0%台前半に上昇。その後も米金利の上昇は止まらず、引きずられる形で15日にはプラス圏に上昇。17日には金利上昇を止めるべく日銀が初の指し値オペを実施したが、18日には0.0%台半ばまで上昇した。下旬には、OPEC総会への警戒などから米金利上昇が一服し、月末にかけて0.0%台前半での推移となった。

当面の予想
今月に入っても0.0%台前半での推移が続いている。米金利上昇の波及には引き続き注意が必要だが、0.0%台半ばでは、再度日銀の指し値オペ実施が予想されるため、金利の上昇余地は限定的に。むしろ、しばらくの後はトランプ新政権への過度の期待が一旦剥落することで米金利がやや低下し、それに伴って日本の長期金利も小幅に低下すると予想している。
日米独長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化
日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(11月)
(ドル円レート)
11月の動き 月初104円台後半からスタートし、月末は112円台半ばに。
月初、米大統領選でのトランプ氏支持率上昇を受けた米経済への警戒感からドルが売られ、4日には103円台前半に。一旦104円台に戻した後、9日には大統領選開票でトランプ氏優勢が伝えられ、リスク回避で101円台まで下落した。しかし、その後はトランプ氏の掲げる巨額のインフラ投資等による米景気加速・インフレ期待からドルが急速に買われる展開に。イエレン議長による早期利上げ示唆を受けた18日には110円を突破し、25日には113円台後半に到達。月末はOPEC総会への警戒などから利益確定が入り、112円台半ばで終了した。

当面の予想
11月末のOPEC総会での大幅減産合意を受けた米金利上昇とリスク選好の円売りにより、足元では114円付近までドル高が進行。目先は本日の米雇用統計と4日のイタリア国民投票の結果次第だが、基本的に最近の米経済指標は底堅いことから、14日FOMCでの利上げまではドルの高止まりが継続しそう。115円を一旦突破する可能性も十分ある。ただし、利上げ実施後は、再利上げは当分先になるとの認識が広がるとともに、トランプ氏への期待も徐々に修正されることで、円高ドル安方向への調整が入る可能性が高いと見ている。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
11月の動き 月初1.10ドル台前半からスタートし、月末は1.06ドル台前半に。
月初、1.10ドル~1.11ドルでユーロが底堅く推移した後、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けた米金利上昇・ドル高圧力の高まりを受けて、10日に1.09ドル台へ、14日には1.07ドル台へ下落。さらに、イエレン議長の早期利上げ示唆を受けた18日には1.06ドル台、24日には1.05ドル台へと急ピッチで下落した。その後はドル高圧力の一服、ポジション調整的なユーロ買いを受けてやや持ち直し、月末は1.06ドル台前半で終了。

当面の予想
足元は若干ドルが調整し、1.06ドル台後半にて推移。ユーロ側の材料が乏しい中で、主に米国側の材料によってユーロドルが動く状況が続いている。目先は本日の米雇用統計と4日のイタリア総選挙が材料となるが、ともにドル高ユーロ安要因になる可能性が高いと見ている。また、8日のECB理事会では量的緩和の延長が見込まれるため、一旦ユーロ安方向に進みそうだ。その後、14日に米国が利上げした後は、ドル円同様、調整的なドル売りが予想され、ユーロドルは持ち直すと予想している。
金利・為替予測表(2016年12月2日現在)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2016年12月02日「Weekly エコノミスト・レター」)

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